その5(2) 子供を殺そうとする気持ち
母は太陽のように明るい性格で、胸が大きかった。
細木六星占術からもわかる。モテモテの金星人プラスだ。
母の再婚相手に医者が浮上した。
母は医者と再婚する。
母との別れが近づいたと思った。
4歳の頃の僕には母親の存在がわからなかった。
祖母がいたからか? 母との思い出が少ないからか。
母は医者が僕を冷遇するなと気づき交際をやめたと言った。
信夫が登場した。
警察署長を歴任していた母の父・原峯太郎が、信夫の顔を見ただけで、
「よろしくお願いします」と頭を下げたという。
実父との結婚のときには峯太郎は猛反対だったと言う。
実父の母・マサキが実父の代りに求婚にきて、
マサキを気に入った母は結婚を決意したと言った。
戸籍簿によると、母は離婚協議を申し出て離婚が決定した。
マサキは「僕を置いて行け」と、母に懇願した。
マサキに僕は育てられたようなものだ。
母は僕を連れて家を出た。
マサキとの最後の別れとなった。
あっさりと別れてしまうフェイドアウト人生は、
実父や祖母から始まっているだろう。
松本清張の「鬼畜」で、不要な我が子を殺そうと旅に出る。
子供は理解していて忖度している。「嫌だ」とは言わない。
父は崖から突き落とそうとしたり、
知らない道に置き去りにしようとしている。
母が、僕を捨てる二度目のチャンスが訪れる。
祖母の家を出て母方の祖父の家に入った。
正式離婚となり、僕は母方の祖父の姓「原」となる。
名前も松井拓から原拓に変わった。
峯太郎が、信夫と再婚するにあたって、
僕を置いてゆけと言う。
コブ付きは不利だからだ。
娘の父として当然の愛情かもしれない。
母は峯太郎の後妻と僕が相性が悪いのを見抜いていて、
原家に僕を置いてゆかなかったかもしれない。
僕は信夫の養子になった。
小学3年生の時だった。
母が食卓にいて、母の料理を初めて食べた。