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その4 なぜ?僕は東京に行ったのだろう?
なぜ?僕は東京に行ったのだろう?
母の兄弟も東京に行ってしまった。
17歳の頃に寺山修司の「家出のすすめ」を読んで僕の迷いは吹っ切れた。
寺山は言う。精神的結びつきをバッサリ切る。
特に母一人子一人の場合は、人生を寄生されてしまう。
精神的去勢をされた男になって人生は終わってはならない。
倫理と親を捨てる。
親を捨ててからしか親との関係は始まらない。
人間は生まれてからずっと一人だ。
僕は母と賭けをした。
現役で東京の大学に受かれば上京する。
早稲田か東京の国立に受からなかったら、
上京しないで福岡の大学に行く。
高校の成績は悪かったのでまさに賭けだった。
僕の性格は3歳の頃にほぼ決定したと思う。
実父は画家だった。
父との記憶がない。
おぼろげにいたなという記憶だけだ。
幼稚園の頃には父はいなかった。
母も家にいなかった。
僕のためにデパートに勤めて、夜は酒場で働いていた。