マリリン・モンローが辞退した「ティファニーで朝食を」
「ごきげんよう! サーキーの映画の時間です。
今日は映画『ティファニーで朝食を』のお話です。
同じ脚本家のお仲間のケイコさんをお迎えしています」
「はい! ケイコさん ようこそ!」
「サーキーさんに古い映画を教えていただいています。
毎回この番組を楽しみに聴いていますよ」
「それはありがとうございます」
「今日は『ティファニーで朝食を』ですね」
「は〜い!ケイコさん!
ティファニーってレストランですか?」
「調べましたよ。ニューヨークにある世界的に有名な宝飾品および銀製品店ですね。創業が天保と江戸時代ですね。
オードリー・ヘプバーンが演じて有名になりましたね」とケイコは言った。
「映画ではオードリー・ヘプバーンがお店のショーウィンドウを見ながらクロワッサンを食べている。映画のシーンは原作にはありません。
タイトルの意味はティファニーで朝食をするみたいに、
ありえない例えでしょうね。
お店で朝食を食べるほどのご身分とも解釈されています。
原作を読みますね。ホリーが言います。
『いつの日か目覚めて、ティファニーで朝ごはんを食べるときにも、このままの自分でいたいの』
と私は言った。
「ホリーって、実在するんですか?」とケイコが尋ねた。
「村上春樹氏も言っているけど。
原作者のカポーティは、体験したことしか書けないので、
モデルは、いるはずよ。
専門家によると複数の実在する人物を混合したキャラクターだって。
カポーティが友人として交際していた数名の女性らしいけど」
「カポーティの『ティファニーで朝食を』で、ホリーはアフリカを転々したみたいですね。北アフリカのカサブランカに行ったのでしょうね」
「映画『カサブランカ』の原作『みんながリックの店にやってくる』
の主人公はホリーだと私は思っている。
原作に登場するふしだらな出戻りアメリカ女のロイス・メレディス」
「映画『カサブランカ』ではバーグマンに変わったんですね」とケイコが尋ねた。
「原作の配役は、ほとんどいなくなっているわね。
あとで原作者が訴訟を起こしている」
「ホリーって どんな女性でしょうか?」とケイコが言った。
「国吉が肖像画を描いている。
肖像画を見ると日本人の女性に思えた」
「国吉って原作ではユニヨシになっていますね」とケイコが言った。
「岡山県出身の国吉康雄はニューヨーク大学で教授にまでなった画家です。国吉はニューヨークのイーストビレッジに住んでいました。
建物の最上階に住み、下の部屋をホリーに貸していました。
アパートですね。原作者カポーティも住んでいました。
『ティファニーで朝食を』に登場するユニヨシは、国吉がモデルです。
私は思うのです。郵便受けに旅行中と札をしていたホリーはカポーティもよく知らない謎の女性だと」
「国吉が描いたホリーの肖像みたいですね」とケイコが言った。
「でも、オードリーヘップバーンとは、顔は真逆だそうね。
カポーティの自伝では『ティファニーで朝食を』は猥褻でアメリカ南部では発禁本になっていたと書いている。
ホリーが売春婦だと解釈されたのね。
実際には働かないで援助交際で生計を立てている。
カポーティは、オードリー・ヘプバーンが演じると聞いてイメージが違いすぎると激怒したらしい。
カポーティはマリリン・モンローが演じると思ったようね。
たしかにハリウッドもモンローにオファーはしたが、売春婦役なので断ったそうです。
それでオードリー・ヘプバーンという妖精みたいな女優を抜擢する。
想像もつかない大胆な抜擢です。
原作を知る人は作品がヒットするとは思わない。
結末も原作とは違う。相手役の男は原作と違う男娼だし。
しかしそれが大ヒットします。
ハリウッド・マジックといいますか。
映画の妖精オードリー・ヘプバーンが演じたからでしょう。
カポーティは女優ジョディ・フォスターを見て、
『彼女こそホリーだ!』って、言ったそうよ」
いつか映画の妖精オードリー・ヘプバーンについても
語らせてください。今日はケイコさんありがとうございます」
「こちらこそ」とケイコが言った。
「それでは みなさま ごきげんよう!」