深淵の友
十二月二六日
毎日のデパート勤務の影響だろうか。
僕は熱を出してしまった。
東京に来て三年を過ぎて初めてだった。
高熱にうなされ二回目の欠勤となった。
ベッドの深淵の友になっているアマンが看病してくれた。
京子は週一デートしている。
一度だけ、ベッドの深淵に沈んだ。
彼氏との操を守っているのかもしれない。
僕は彼のスペアーのような存在だろう。
奈美恵はフェイドアウトしていった。
京子とのデートを見られたかもしれない。
翌日は意地でも出社して、ふらついていたが頑張った。
そうそうデパートでは、なかよしができた。
僕は、コマワリ四人組と名づけた。
漫画からつけた。「死刑!」というギャグがうけた漫画だ。
さすが渋谷のデパートだ。
エレベーターガールは美人が勢揃い。
僕らは彼女らの品評会をやったり、四人でうまく連携してサボることを覚えた。
マネージャーの居場所をみんなで合図して、二人単位でデパートの隠しドアから、
秘密の廊下(社員専用通路)を通って、社員専用の喫茶店で休憩した。
デパートには秘密の廊下が多くあった。
ある日マネージャーの命令で、さらに地下奥深く潜入した。
地下にある倉庫からおもちゃの補充をした。
クリスマス・イブ前だった。
廊下に100メートルも重ねられて
並べられたクリスマスケーキが置かれてあった。
四名のひとりがエレベーターガールに惚れてしまった。
彼女の行動をみんなで調べ上げて、
告白のチャンスは夜七時の退社時だと結論づけた。
彼は社員出入り口で彼女を待った。僕らは遠くから彼をみまもった。
彼女が彼の目の前を通り過ぎたが、彼は何も言えなかった。
彼らがいたおかげで、僕は楽しいデパート勤務ができた。
契約が終わりになる頃、総務課長に呼ばれた。
「ねぇ、契約延長しない?」
「いえ。勉強に集中したいんです」と、僕は模範解答した。