ストロベリー・フィールズ・フォーエバー
十二月二十二日
デパートのおもちゃ売り場は、お祭りのように混雑していた。
再びお詫びのコンパ第二弾を、最近ダンパで知り合ったメンツで揃えて、
「赤坂ムゲン」に行く。
二枚目君以外は、なかなかうまくゆかないようだ。
僕は学友らに、これで誠意を尽くしたつもりだ。
二十四日、デパートは忙しくて、こんな時は逆に疲れない。
暇な時が気疲れてしまう。
リョウコに、イブに誘われた。
バイトが終わりシャンパンとケーキを買って、リョウコの友人宅へ出かけた。
亀戸駅に着くと駅前の花屋で赤いバラも買った。
八時半の約束に十五分くらい遅れた。
友人宅では、もう料理は並べられていた。
リョウコは指に包帯をしていた。
料理中にあやまって切ったらしい。
料理はおいしかった。
三人でささやかだが東京に来て、はじめてのクリスマス会を行う。
事前に用意されたイチゴを10個以上、ケーキに並べた。
「ストロベリーフィールズだわ」とリョウコが言った。
「あれは、イチゴ畑ではないんだよ」
「そうじゃないの?」
「『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』は、ジョンがつくった曲なんだが」
「それ、それ、イチゴ畑よね」
「あれは、イチゴ畑ではないんだよ。
モデルは、リヴァプールにある戦争孤児院の名前なんだ」
「へえ~ そうなんだ」
「その孤児院は、もうない。
幻想的な曲で。サイケデリックの最高傑作だよ。
曲の最後の方だ。 三分五五秒頃から始まる。
ギターとドラムがフェイドアウトしていくんだ。
そして曲が、終わったかと思いきや、
オルガン(メロトロン?)の 不協和音がフェードインし、
『パーンパーンパーン』とギターが、 鐘のように響き、オルガンの不協和音と共に、
再びフェイドアウトする。
あの鐘のような音は、鉄道の踏み切りの遮断機の警報音に聞こえるんだ。
オルガンは列車の通る音だと思う。
ジョン・レノンは、生まれた時から父母がいなくて孤児院にいるんだが。
その孤児院に帰っていくんだ。
最後までジョンは、俺の居場所は孤児院だと主張しているんだ」