蘇える金狼
十二月十日
渋谷のデパートで長期バイトをやると決めた。
今までは一日だけのバイトばかりだった。
出社当日に、女性の総務課長から
「ダンガンとジョガンがあるけど、君はジョガンに行って」と言われた。
ジョガンとは、女児玩具(ジョガン=女玩)売り場だった。
クリスマスプレゼント時期で玩具売り場は忙しい。
初日から接客態度で、軍曹のようなマネージャーからガミガミと注意をうけた。
だらしなかったのかもしれない。
ベルバラのオスカル、バービー、リカちゃんなどの人形がよく売れた。
ディスコを知らない学友らが踊りたいというので、
デパートの残業を切り上げて、
おなじみの新クレへ案内する。
参加メンバーはオンワードと二枚目君とその他二名。
二枚目君が四名の女性をナンパしてきた。
僕は四名のひとりの女性とチークを踊った。
女性は僕より年上で人妻に思えた。
女性が「今すぐ・・・」とささやいた。
僕は理性より欲望に負けて、他のメンバーが踊っているが、
店から二人だけで出て、信濃町の部屋に持ち帰り、約二十時間以上、ベットにいて、
まるで映画「蘇える金狼」の松田優作と風吹ジュンのようだった。
年上の女性をアマンと呼ぶ。
朝方に、学友オンワードから電話があった。
昨夜のことで怒っており、僕は嫌われてしまった。
他の女性らは新クレでずっと待っていて、泣きべそかいて、
アマンが行方不明になったと、心配していたという。
僕はデパートのバイトを無断で欠勤してしまう。