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ひき逃げされずに済んだ

十月二十六日の朝だった、

片思いの真理子から電話があった。

電話なんて一度もなかった。

僕は覚悟した。

十五時にお茶ノ水駅で待ち合わせする。


真理子とは

約半年前の5月だった。

ダンスパーティーというものがあって、女性と知りあえる。

そんなこともわからなかった。

大学のクラスメートのナンパ経験者に誘われて、

フェリス女学院大学のダンスパーティーへ行く。

帝国ホテルで行われた。

初めてのダンパで、社交ダンスは踊れなかったが、

映画の中に出てくる主演女優のような女性を見つけて、ダンスに誘った。

「当たって砕けろ」これが僕の行動指針。

「ダンスできないんですが」と言った。

主演女優も、ダンスができないらしく、周りのダンス者をマネて、

ぎこちなく踊った。

しばらくして踊りをやめて、十分ほど話した。

話はとぎれなかった。

見れば見るほど主演女優級の女性で、どの女性に似ているか考えた。

複数の美人女優が浮かんだ。

会場を出て、お茶でもと誘ったが、踊りが上手になりたいと、お茶は断られた。

社交ダンスのひとつでも、できたらリードできたのに。

残念な気持ちでいっぱいだった。

主演女優が他の男性に教わりながら、ジルバを踊っているのを見た。

壁の男となって、見るたびに、いい女だと思った。

逃がした魚は大きい。

ダンス教室にでも通いたい気持ちになった。

僕は、ダンスのうまい女性を誘って、

ダンスを教わった。

ボックス、ジルバ、チャチャ、ワルツと、ひととおり踊れるようになった。

曲が終わって休憩タイムになった。

ひとりでいる主演女優を見つけた。

あれほどジルバを楽しく踊っていた男は、いなかった。

主演女優と何曲か踊って、上達したダンスを披露した。

小休止に、映画の話をして、意気投合。

オードリー・ヘップバーンは歌が上手なのに、

映画会社はレコードも出してくれない。

映画「ティファニーで朝食を」で

ヘップバーンが映画で歌った「ムーンリバー」はレコード化されていない。

映画「マイフェアレディ」では歌わせてもらうというので、

練習するが、他の歌手でアフレコされたとか。

ヘップバーンのエピソードを披露した。

三十五分も話したかもしれない。

ダンスパーティーが終わりを迎え、二人で帝国ホテルを抜け出して、

近くの喫茶店で話をした。

電話番号を教えてくれた。

名前は「真理子」と言った。

真理子との初デートは宙に浮いた気分だった。

好きなタイプなので、意識して普通になれない、舞い上がってしまった。

これって、真理子には滑稽に見えただろう。

新宿に映画を見に行った。

高校の頃の恋愛だ、手も握れない。

真理子の綺麗さに圧倒されているだけ。

美人を連れて歩いている時の、他人に対する優越感に浸っているだけ。

でも、なんとも言えない。

女性が宝石をつけて見せびらかすようなものだ。

二回目のデートも、成約まで難航した。

おそらく真理子に占める僕の位置は、単なる友人だと思う。

クラブが忙しいという理由で、次のデートが成立しなかった。

約一ヶ月後に銀座でデートする。

夏休みはクラブの合宿と軽井沢でバイトだそうだ。

僕がはいる余地はないということだ。

電話は二週間に一度程度していた。

知り合って四ヶ月がたっていた。

なかなかデートにならないのだから、覚悟していた。

真理子から電話がある。

会ってほしいそうだ。 ピントきた。

御茶ノ水で待ち合わせした。

喫茶店に入って二人でレモンティーを飲み初めは雑談をした。

真理子に、うっとりとしてしまい、

僕は、愛犬のような顔をしていたかもしれない。

「今日は、話があってきたの。実は好きな人がいるの・・・」

と真理子から死刑宣告を受けた。

僕はわかっていた。

「わかったよ。仕方がないさ」と答えた。

お互いに「元気で」が、最後の言葉となった。


交際の辞退なら電話で済ませればいいはずだ。

真理子にとって、僕はなんでもない人だったのだろう。

ただのボーイフレンドなのだ。

だから会って引導を渡せたのだ。

恋愛のひき逃げをされずに済んだ。

僕は、なぜ真理子に失恋したのか考えた。

結論は女性を知らなさすぎる。

恋愛の数が足りないのだ。

無性に、昨日出会ったばかりのリョウコと話したいと思って、

電話したが不在だった。

今の僕の失恋を慰めてくれそうに思った。

学生寮なので、電話当番の寮生に電話頂戴の伝言を依頼した。

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