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妻は夫のものか(湾岸道路)

映画「湾岸道路」


妻は夫のものなのか・・・


傷つけないうち去っていく・・・


かっこよく結婚して、かっこよく離婚したい男の話しです。


男(健介)は言います。

「おまえのような姿のいい、ものすごい美人と、

あっというまに結婚してしまうのも格好よかった。

離婚してひとりでどこかへいってしまうのはもっと格好いいと。

俺は思いついたんだ」


健介の別れの言葉に妻芙美子もそれ以上追及しません、理由を尋ねないのです。

そんなこと今まで言われたことがない、

いつもフってばかりいる美人だからでしょうか。


彼が去っていく理由は話しの中から知るしかありません。


去る理由は嫉妬ではないかと私は思います。


彼は妻を自分だけの所有物にするべきではない、自由な存在だと思っているようです。


〇別れの発端


スポーツクラブで、ボディ・ビルのインストラクターをしている

杉本健介は、結婚して二年。

妻・芙美子は、一部上場会社の総務部庶務課に勤めている。

ある日、健介は芙美子を叱責した。

彼があこがれているハーレー・ダビッドソンのビッグ・バイクの頭金

を支払おうとした時、銀行口座の残高ゼロを知ったからだ。


健介「この野郎」 


芙美子「どうしたの」


健介「ほんとなら、ぶん殴るところだ。

 殴るのだけは、やめといてやるよ。

 いくら馬鹿でも、おまえは仮にも女房だからな。

 おやじがいつもおふくろをひっぱたくのを、

 いやというほど見てきたから」


健介は70万貯めていた。

今回が初めてのことでない。

芙美子のクレジット・カードの枚数は31枚になっている。

しかし、二人の仲は険悪になったりはしなかった。


それで芙美子は夜働きに行くようになる。

クラブ「桂」のホステスのピンチヒッターとして

店に出た芙美子は、たちまち客達の注目を集めた。

そんな芙美子に「桂」のママは、彼女に金を払う客を紹介した。

それを告げられた健介は、「愛してやれ」と言う。

箱根のホテルで一晩15万円。

健介が芙美子をホテルまで送って行く。


健介は言います。


「愛して、ただでさせてやれ。

おまえは、女房にしておくよりも、

かねで買ったほうがいい女かもしれないな」


週2日、芙美子はクラブに勤めだし、

たまに箱根のホテルへ出かけてと、

銀行の残高を気にせず好きなものを

買い求めることができるようになった。

二人の生活は今までどおりだったが

健介の心の中に、空虚なものが広がっていく。


〇妻は夫のものなのか


もし私が健介だったら、いや一般的な旦那だったら、

許せないと思う、寛容すぎる。


ジェラシーがメラメラと沸いてくるはずだ。


この嫉妬はよくないのか、嫉妬してはいけないのか、

私はまだ答えを出しかねています。


健介にとって妻とは束縛しないもの。

それは母が父からDVを受けていたトラウマかもしれない。

ある意味男のやせ我慢的な感じがします。


健介はこのままだと妻を責めて傷つけるかもしれない。

かっこいいままに別れようと決意したようだ。

せめても妻への腹いせに湾岸道路に置き去りにして、

去っていこうとした。


また突然去ることで妻を困らせてやろうと思ったかもしれない。

男はだいたいがマザコンだから。


〇別れの日


未明の4時


健介は芙美子をハーレーに乗せようとしている。


芙美子「離婚してどうするの?」


健介「ひとりで、さまようんだ」


芙美子「さまようって、なにをするの?」


健介「何度も言ったろう。なにもしない。さまようだけだ」


健介は芙美子をバイクに乗せる。


芙美子「健介さん、どこへ行くの」


健介「湾岸道路」


健介は湾岸道路の入り口に着くと道路に芙美子を下ろした。


芙美子「今日はどこまで?」


健介「わからない」


芙美子「気をつけて」


健介「別れ話が起きてから一度も泣かなかった。


芙美子、君は素敵な女だ 」


呆然と道路に立ちつくす芙美子。


健介「元気でいろよ」


あのハレー独特の爆音を響かせて悠然と走り去っていった。


芙美子は湾岸道路にひとり置き去りにされたことが悔しくてたまならい。


そしてその後まったく便りもない健介・・・


芙美子は大型バイクの免許をとるために必死に努力する。


そしてついにハーレー仲間と湾岸道路の入り口に立つ時がきた。


ハーレー仲間「さて、これからどっちへ行くのかな?」


芙美子「わからないわ。とにかく、湾岸道路を走ってみる」


ハーレー仲間「そのあとは」


芙美子「さあ」


〇原作は片岡義男の同名小説

片岡の小説はほとんどバイクの好きな男が出てきます。

話しはドロドロしてません、さらっとした恋愛がえがかれています。

ラブのハードボイルド的ですね。


彼の小説では「彼のオートバイ、彼女の島」が一番気にいってます。


映画作品なら「スローなブギにしてくれ」から入るといいでしょう。

浅野温子のデヴュー作で、

奔放な少女に振り回される男たちの弱さと優しさを描いています。

そして崇拝する藤田敏八監督の作品でもあります。



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