三無主義
ロックバンド「ナレオ」のクラブ活動はバンドボーイが仕事で、
一年生には演奏のチャンスはなかった。
僕らは団塊世代でなくて三無主義世代。下積みする苦労を嫌う。
週刊誌で読んだ。
しらけ世代を象徴する言葉が「三無主義」だそうだ。
物事に対する「無気力」「無関心」「無責任」を合わせた世代の特徴を表す言葉だ。
三無主義に「無感動」や「無作法」が加わって五無主義などとも言われた。
学生デモにも冷ややかだった。
政府に対する過激な行動をする団塊世代とは真逆すぎたのだろう。
学生運動をはじめた人たちのきっかけは、
ただ「かっこいい」と思ったからではないだろうか。
女装した織田信長の時代の「カブク!」、「ロックだぜ!」と同質。
10代の頃のふるまいは、大人への反抗の一種だろう。
一年生のクラブ仲間は九割は年上で、
一浪か二浪して早稲田大学に入学していた。
練習曲の選定で僕に主導権はなかった。
僕はビートルズのアルバム『アビーロード』の後半をやりたかった。
誰も賛同しない。クラブの仲間から孤立した。
仲間でクラブをやめて、自分らでバンドを作っていく者もいた。
深夜のバイトで、早朝のバンドボーイの仕事をサボるようになり、
「ナレオ」から遠ざかっていった。