AbbeyRoad
早稲田大学の音楽クラブの合同新入生歓迎ライブに、
大学出身のミュージシャンが集まった。
小田の和正、デーモンの小暮、小室の哲哉、大滝の詠一、
サンプラザの中野らだ。
司会タモリのが言った。
「今日は、アビーロードをテーマにして、
皆さんの諸先輩の演奏をお楽しみください」
司会者からの紹介が終って言った。
「早稲田ロックも捨てたもんじゃないな」
会場からは拍手がやまなかった。
さてアビーロードといえば、衝撃的な話があります。
17歳で自殺して『自殺への序曲』という本を残した
岡崎里美さんです。
本は里美さんの父君が出版された。
里美さんはビートルズのレコードを大音量で鳴らしながら、ガス自殺した。
お伴に選んだのは『アビーロード』だった」
司会者が自殺した里美の遺書から抜粋された一節を読み上げた。
「娼婦にもなれなかったし、猫にもなれなかった。
ただの高校生にもなれなかったし、娘にもなれなかった。
詩人にもなれなかった。絵かきにもなろうとしなかった。
全部中途半端で過ぎちゃった。
十七年間と何ヵ月かの生活に馬鹿みたいに疲れちゃった」
演奏者達のチューニング音もなくなった。
司会者はデーモンに尋ねた。
「さて! 陛下!演奏準備はできたかな?」
デーモンが答えた
「我輩は、いつでもOKだ。みんなもOKだな?」
演奏メンバーは「OK! いいとも!」と言った。
司会者が尋ねた。
「それで、演奏する曲は、なにかな?」
デーモンが言った。
「当然、『アビーロード』だとも」
「『アビーロード』の、どこから演奏すんの?」
「当然『ゴールデンスランバー』から『The end』までです」
と、小田が言った。
大瀧が尋ねた。
「『The end』のギターソロは、誰が弾いたんだっけ?」
「一説には全部ポールだと言う」と、小田が言う。
「いや! ポール、ジョージ、ジョンで回している」と、
サンプラザが言い出した。
「『The end』がビートルズ自身の最後のスタジオ録音なんだよね?」と小田が言った。
「『The end』が、ビートルズの最後の録音じゃないんですよ」とサンプラザが言った。
聞いていた司会者が「え! そうなんだ?」と言った。
「メンバー全員の最後の曲は『I WANT YOU』だよ」とサンプラザが言った。
小田が尋ねた。
「すると? 『The end』は、最後から何番目だ?」
「わからない。だから!『The end』は、全部ポールが演奏しているんですよ」
と、哲哉が言った。
「いや! あのドラムの叩きは、リンゴだ!」と、大瀧が口をはさんだ。