表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/473

青山のマリリン・モンロー

僕はキャバレーのバイトが終わり、

早朝五時頃テクテクと新宿の横断歩道を歩いていた。

タクシーが信号待ちしていて、後部座席に女性が二人、

なぜか僕はタクシーの座席の女性に目がいった。

白人のブロンドの女性で、マリリン・モンローに似ていた。

女性は僕にウィンクした。

僕がタクシーに近づくと、

「いっしょに朝食でも食べない。ねぇ 乗らない?」 と、

もう一人の女性が普通の日本語で言った。おそらく日本人だろう。

僕は仕事の黒のタキシードのいでたちだった。

喫茶店で始発の電車を待つ僕には断る理由はなかった。

女性らに乗らないと言われて、乗ったタクシーが着いた場所は青山だった。

東京暮らし六十日も満たない僕には初めての青山だった。

新宿渋谷銀座が東京だと思っていた僕は衝撃を受けた。

ここは日本なのか? フランスのパリに来ているような感じだ。

フランシス・レイの「男と女」の映画に吸い込まれたように思えた。

彼女と英語で話を始めるとフランス人で、赤坂でダンサーの仕事をしていると言う。

マリリン・モンローの真似をしてホテル「聚楽」のコマーシャルもしていた。

彼女らは僕を、ホストクラブ「青い部屋」のホストと勘違いしたらしい。

もう一名の日本人らしき女性は、何をしているか言わなかった。

同じダンサーとは思えなかった。

青山で早朝から営業しているレストランで朝食をとり、

近くにある南青山のフランス人の彼女のマンションへ歩いて行った。

マンションは1LDKで、リビングにあったソファにすわった。

彼女は英語で、

赤坂の店でどんな踊りをしているか、見せるわと言った。

衣装に着替えて、踊りのショータイムがはじまった。

頭には宝石のようなイミテイションがちりばめられたセクシーな衣装だった。

テレビで観光ホテルの宣伝があった。

「じゅらくヨ~ン」と呟く、コマーシャルだ。

マリリン・モンローのそっくりさんが色っぽい声で言う。

彼女はフランスから踊るために出稼ぎに来ていた。

しばらくして、日本人女性の方が眠いので帰ると言って帰ってしまった。

「あなたどうする?」 と、たどたどしい日本語で僕に尋ねた。

「帰りたくない」と僕は言った。

「そう」 と言って、彼女が微笑んだ。

僕は彼女のベッドの深淵に沈んだ。


「早稲田グラスオニオン」 下書き  幻冬舎「北高フェイドアウト」の前




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ