テレビTBSへのバンドボーイ
入部後はテレビTBSへのバンドボーイ(楽器運び)が仕事だった。
ピアノやアンプを運んだ。
一軍のバンマスが僕に、「キー」が欲しいと言った。
舞台の隅で待機していた僕は、スタジオの舞台にあるピアノに座った。
バンマスが言った。「ゲー(G)を頼む」
僕はGを押した。
一軍のメンバーはキーを合わせだした。
番組の空き時間だったので、僕はピアノで「ある愛の詩」を弾いた。
番組の司会者Sさんが来ていて
「おお、ラブストーリーですね。
和みますね」と言ってくれた。
有名な歌手を舞台裏から見れた。身長の低い歌手が多かった。
バンドマンはコードで数字を言い換えた。
例えばC万と言う。 1万の意味だ。
コードCから数え、Eは三だ。
演奏途中で参加する場合にコードを確認する時がある。
演奏中のギタリストが、僕に三本指を立てた。
Eだと言う意味だ。
バンドマンは隠語で話す。反対語である。
仕事をゴトシと言った。
「昨日さ、ナオンがレイキなのでカケヒして
ルテホに行ったらC万とられたよ」
レイキ=綺麗な女。 カケヒ=ひっかけて。
バンドマンは人がいる場で隠語を多用して話す。
バンド仲間が三名の女性をナンパした。
メンツが足りないと、僕は呼ばれた。
案の定、二人はレイキだが、
僕が接待しなければならない女性は予想通りだった。
レイキが三人一緒にいるケースは少ない。
僕は「最低」とバンド仲間に言おうと思った。
女性に気づかれないように、最初に「お」をつけた。
僕は「お・いていさ!」と言った。
女性らはキョトンとしていて、バンド仲間だけが笑った。