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夏目漱石 三四郎 ミネコ
夏目漱石 三四郎 ミネコ
英語教師広田の引越しの手伝いで
三四郎と女は、来ていた。
「あなたにはお目にかかりましたな」
と三四郎が顔をあげた。
「はあ。いつか病院で……」と言って女もこっちを向いた。
「まだある」
「それから池の端はたで……」と女はすぐ言った。
よく覚えている。
三四郎はそれで言う事がなくなった。
女は最後に、
「どうも失礼いたしました」と句切りをつけたので、
三四郎は、
「いいえ」と答えた。
すこぶる簡潔である。