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怪我した女子高生との出会い

作者: WAIai
掲載日:2026/08/27

水原はいつものように、トラックを運転していた。

秋の日差しはきつくなく、自分を包みこんでくれるようだった。

稲穂は黄金色の絨毯のようで、赤トンボが招かれたように、跳んでいる。

窓を開けると、やんわりと柔らかい風が流れ込んでくる。

日差しの暖かい香りに、鼻をくんと鳴らし歌を口ずさもうとしたその途端。

「…ん? あれは…」

時刻を確認すると、16時だった。

水原はとっくに荷物を運び終えたので、帰るのみなのだが、道路の端にトラックを停める。

「ーどうした?」

声をかけると、制服姿の女の子、おそらく女子高生だろう。

びっくりしたような顔で、猫みたいに瞳を丸くする。

「え、あ、あの…」

どうしたらいいのか、困っているらしかった。

それは水原も同じだが、何か異常なものを感じ、トラックから降りる。

すると女子高生はびくりと肩を揺らしたが、水原は安心させるように言う。

「ちょっと気になってな。すぐ終わるから」

そう言って、女子高生の全身を素早く見ると、膝から血が流れていた。

そういえば足を引きずっている感じだったなと思い、しゃがみ込む。

「これ、どうしたんだ? 血が出ているぞ」

「その…。転んで…」

女子高生は水原が怖いのか、それとも警戒しているのか、か細い声だった。

水原は気にせず、「そうか」と呟くと、トラックに戻る。

助手席に置いたトートバッグの中をあさると、今、必要なものを取り出す。

「ーほら、絆創膏」

「え…」

「本当は綺麗に洗って、消毒したほうがいいんだけど…。学校に戻るのも大変だろう?」

「それはそうですけど…。あの、お気になさらず」

女子高生は関わりたくないのか、俯く。

水原はそんなに怖い顔をしているか、俺と思うのだが、ここで見捨てたら、女子高生が傷みを抱えたままだと考え直し、伝える。

「家の近くまで乗せていってやる。自転車をかせ」

「え…。あ、あの!! いいです」

「いいから。とって食わねえよ。それに襲ったりなんかしねえよ。困った人がいたら助けるのが、俺のモットーだ」

そう言うと、彼女に絆創膏を渡し、自転車を奪い取る。

トラックの荷台は空なので、自転車を収納すると、女子高生はぼんやりと眺めているだった。

「おい、手当てしろって。ぼうっとするな」

「で、でもあの!! その!! 悪いです」

「何が…? よく分かんねえけど、とりあえず、しょうがねえな」

水原は舌打ちすると、女子高生から絆創膏を奪い、膝に貼りつけてやる。

赤くなっているが、骨折や捻挫はしていないだろうと判断する。

「ーほら。助手席に座って」

「あ…。ど、どうしよう」

「どうしようも何も、人の善意は受け取っておけ。早く」

手招きすると、女子高生がゆっくり近づいてくる。

自転車をとられているので、逃げられないとでも思ったのだろうか。

「す、すみません…。お世話になります」

「はい、素直てよろしい。トートバッグはよけてな」

水原がそう言うと、女子高生は遠慮しながら乗ってくる。

その際、足が痛んだのか、苦痛の表情となる。

「病院に行かなくて大丈夫か?」 

「び、病院…!? そ、それはちょっと…。大丈夫です!! まだ若いので、すぐに治ります」

「こら怪我を甘くみるな。どんな結果になるか、分からないんだから。家に着いたら、ちゃんと手当てしろよ」

少し怒った風に言うと、女子高生はしゅんとし、「ごめんなさい」と呟く、

水原はうなずくと、意識して明るく言う。

「よし、走らせるぞ」

水原はエンジンをかけると、トラックを動かし始める。女子高生はちゃんとシートベルトをしており、珍しそうにきょろきょろする。

「どうした?」

「いや、あの、車高があるので、家の車と見る高さが違うなと思って…」

「あ…。なるほど。確かにな」

水原はうなずくと、女子高生に聞く。

「家はどの辺りだ? ここから近いのか?」

「家から学校まで、自転車で30分です。だから、その、近くのコンビニで降ろしてくれるとありがたいんですが…」

「しっかり喋れるんじゃねえか」

褒めると、女子高生は頬を赤くし、膝に乗せた手を握りしめる。

「近くのコンビニな。よっしゃ、任せろ」

アクセルを踏み込むと、水原は正面を眺めていく。

県外ナンバーがおり、秋の味覚でも買い求めに来たのだろうかと妄想を膨らませる。

「あ、あの…!!」

「何だ? どうした?」

「お礼はどうすればいいでしょぅか?」

「お礼? そんなものはどうでもいい」

水原はそっけなく答える。

正直に言うと、本気でそう思っていた。

それよりもまだ若い子が痛がっている姿のほうが、見ていて辛い。

ー俺もお人好しだな。

そう思いつつ、運転していると、コンビニが見えてくる。

「あそこか?」

「は、はい!! あそこです!!」

女子高生が嬉しそうに声をあげたので、水原はコンビニに入ろうと、ウィンカーを出す。

駐車場の広いコンビニなので、トラック仲間の横につけさせてもらい、トラックから降りる、

女子高生も膝を庇いながら降り、静かにドアを閉める。

「はい、自転車」

「あ、ありがとうございます!!」

ようやく笑顔になったので、水原は自分も柔らかな表情となる。

「じゃあ、俺は行くから。ちゃんと手当てしろよ」

忠告してトラックに乗り込もうとすると、女子高生がとめてくる。

「やっぱりお礼をします…!! 飲み物でいいですか?」

「いいって。いらねえよ。それに、親の金だろう? 大事に使え」

「大丈夫です。自分のお小遣いなので。ちょっと待っててくださいね」

女子高生は自転車をそのままにし、店内へ入っていく。

水原は姿を追いかけると、女子高生が飲み物のコーナーにまっすぐ行き、レジに行くのを見届ける。

何を買ったんだろうと思っていると、女子高生が戻って来て、差し出してくる。

「ーはい。冷えたお茶ですけど、どうぞ」

「いいのか? 本当にもらって」

「いいんですよ。もらってください」

女子高生の好意に甘えることにし、水原は冷たいお茶を手にする。

ー今時、珍しい娘だな。

もっとわがままかと思ったが、両親の育て方がいいんだろう。

助けて良かったと納得すると、もらったばかりのお茶を助手席に入れる。

「ありがとうな。…何か悪いな」

「いいんですよ。それと、あの、スマホを持ってますか?」

「持っているけど…どうした?」

「LINE交換をしませんか?」

「ああ、なるほど」

水原はまた助手席を開けると、トートバッグの中から、スマホを取り出す。

「よく分からねえから、登録してくれるか?」

スマホを差し出すと、女子高生は嬉しそうにスマホを預かる。

それから慣れた手つきで操作すると、スマホを戻してくる、

「良かったら、LINEしてください」

「分かった。サンキューな」

水原は女子高生と縁ができたことに内心、喜び、スマホを大事にしまう。

「じゃあ、俺は行くから。ありがうな」

「は、はい…!! こちらこそ、ありがとうございました!!」

深く頭を下げてきたので、水原は手を上げて、運転席に行く。

シートベルトをすると、トラックのエンジンをかける。

女子高生を見れば、こちらに手を振ってきている。

ー可愛いな。まだ怖いものを知らない年齢だからな。

人生まだまだだと思いつつ、学校生活をエンジョイして欲しかった。

クラクションを軽く鳴らすと、水原は駐車場から出ようとする。

女子高生はずっと見ていてくれているようで、少し恥ずかしいというか、むずがゆい気持ちになる。

ーまた会えるといいな。

そう思い、水原はコンビニから離れたのだった。



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