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青景の頁(せいけいのページ)――産声が消えた世界で  作者: 直助


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7/10

声がしない


 今日は病院に泊まりなさい、と担任が言った。


 

 空いている簡易ベッドに、毛布が一枚。


 

 横になる。


 

 天井が白い。



 廊下を、台車の音が通り過ぎる。


 

 遠くで、機械が鳴っている。


 


 眠れなかった。


 

 目を閉じても、暗くならない。


 

 朝が来るのを、ただ待っていた。



 翌朝。


 


 車で移動した。


 


 見覚えのない道だった。


 


 低い建物の前で止まる。


 


 小さな火葬場だった。


 


 待合室には、誰もいない。


 


 椅子がいくつか並んでいるだけ。


 


 名前を呼ばれる。


 


 白い台車が、ゆっくり奥へ入っていく。


 


 扉が閉まる。


 


 短い電子音がした。


 


 それだけだった。


 


 担任も、何も言わなかった。


 


 自分も、何も言わなかった。



 しばらくして、白い箱を渡された。


 


 軽かった。


 


 両手で持つ。


 


 それで終わりだった。



 車に戻る。


 


 窓の外が流れていく。


 


 昨日と同じ道のはずなのに、順番がわからなかった。


 


 


「今日は家に帰っていい」


 


 担任が前を向いたまま言う。


 


「ただ……ひとりで生活するのは難しい」


 


「学校の施設に部屋を用意する」


 


「寮みたいなところだ」


 


「準備ができたら、引っ越そう」


 


 事務連絡みたいな声だった。


 


「……うん」


 


 それだけ答えた。



 家に入る。


 


「ただいま」


 返事はなかった。


 自分の声だけが、少し響いた。

 


 台所はそのままだった。


 


 食器も、椅子も、昨日のまま。


 


 静かだった。


 


 


 骨壺を、食卓の端に置く。


 


 白い箱だけが、そこにある。


 


 


 冷蔵庫の音。


 


 時計の針。


 


 


 それだけが、聞こえる。


 


 


 同じ家なのに、


 


 少し広くなった気がした。


 



 


 窓の外は、晴れている。


 


 雲が、ゆっくり流れていた。


 


 


 しばらく、何もせずに座っていた。


 


 


 それだけの一日だった。


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