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青景の頁(せいけいのページ)――産声が消えた世界で  作者: 直助


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4/10

いつもの食卓で

 車が止まる。


 ドアが開く。


 家の前。


「ただいま」


「おかえり」


 台所から祖母の声が返る。


 鍋の蓋が触れ合う音がした。


 手を洗って、居間に入る。


 テーブルには、もう皿が並んでいる。


 カレー。


 スープ。

 

 サラダ。


 湯気がゆっくり上がっている。


「今日、カレーか」


「昨日スーパーで安かったの」


 それだけの会話。


「サラダ、ちゃんと食べなさいよ」


 言われて、うなずく。


 スプーンの当たる音だけが続く。


 窓の外は暗い。


 どこかの家のテレビの音が、かすかに聞こえた。


「明日、ちょっと冷えるらしいよ」


「ふうん」


「上着、出しとく?」


「うん」


 鍋の火が小さく鳴っていた。



 風呂に入る。


 布団に入る。


 電気を消す。


 夜が、静かに過ぎる。


 ⸻


 朝。


 目が覚める。


 いつもは廊下から声がする。



 今日は、すぐそばで名前を呼ばれた。


「ヤマト、起きなさい」


 目を開けると、祖母が枕元に立っている。


「ご飯できてるよ」


 少しだけ近い声だった。



 午後。


 施設見学の日だった。


 車はいつもと違う道を曲がった。


 窓の外の景色が、少しずつ見慣れないものに変わる。


 低い建物。


 白い壁。


 フェンス。


 標識の少ない道。


 やがて、大きな施設の前で止まった。


 無機質な外観。


 窓は少ない。


 病院にも、工場にも見えた。


 


 中は静かだった。


 足音だけが響く。


 白い床。


 白い壁。


 白い光。


 消毒液の匂いが、わずかにする。


 


 担任が何か説明している。


 制度の話。


 管理の話。


 保存の話。


 半分も聞いていなかった。


 

 ガラス越しに、透明なカプセルが並んでいる。


 霜のついた窓。


 数字の表示。


 小さな体。


 毛布に包まれたまま、眠っている。


 赤ん坊のまま、時間が止まっているみたいだった。


 


 さらに奥。


 別の部屋。


 ベッドが並んだ部屋。


 管が何本も繋がれている。


 ゆっくり上下する胸。


 自分と同じくらいの大きさの体もあった。


 背丈。


 腕の長さ。


 閉じられたまぶた。


 年齢だけなら、同じだった。


 


 違うのは、


 目を開けているかどうか。


 それだけだった。


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