母の言葉
「あんたはうちの子じゃない!」
なんて子供の頃に何度か母親の口からとびだしたものだ
私は、「それじゃぁわかりましたよ」とばかりに家をでる
私は、頑固だ
それも、どうしようもないほどに・・・
私は、私が間違っていない限り頭は下げない
それは、どんな状況に陥ってもだ
初めて家を出たのは7歳位だった気がする
「うちの子じゃない」なんて言われたら、「おうち」に居るわけにはいかない
そう思って私は家を出た
出た所で、行くところなんてあるわけがない
今さっきまで「おうち」に居たはずなのに、ここは私の「おうち」ではないと言われたのだから
行く当てもなく山を目指して歩いて行く
海は「おうち」から近いので、とりあえず向かうのは山だ
その前に、お父さんのお墓にお参りしてから行く
墓前で手を合わせながら「お父さんは私のお父さんだよね」と確認してから山を目指す
頂上はどこにあるのか分からないけど、道があれば歩いて行ける
きっとどこかに私の「おうち」が見つかるはずだ
そんな気持ちで山道を歩き続けるが、流石に田舎
誰にもすれ違わないまま、夜になってしまう
遠くで、野良犬の鳴き声が聞こえたり、フクロウの声におびえながらも歩き続けた
季節は夏を少し越えたあたりだったから、食べるのものには困らない
なりかけの果物を見つけては木に登り、湧き出る水を飲んで喉を潤す
順調に山を登り続けていたのだけど
3日目にとうとう、お巡りさんに捕まった
もと「おうち」まで連れてこられて、もと「お母さん」がお巡りさんに頭を下げている
もと「お母さん」が「何を考えているの!」なんて怒ってはいるが
今はもう「よその人」なので、怒られる意味は分からなった
私は「ここは私の「おうち」じゃないなら、あなたも私の「お母さん」じゃないでしょ?私は新しい「おうち」と「家族」を探しているだけです」と言ってやったら、泣きながら殴られた
ゲセヌ・・・
お巡りさんが困ったようにとりなしてくれて、もと「お母さん」が謝ってくれたので「お母さん」に戻してあげた
度々こんな事を続けていたら、「お母さん」も学習したのか
子供が山の中で1週間暮らす、とかいう外聞の悪さがマズイと思ったのか
ある日から「お母さん辞めます」って「お母さん」が家出をするようになった
大体は姉と兄の姉兄喧嘩から始まって、私が巻き込まれてから、「お母さん」がキレルってパターンだったのだけど
山で1週間暮らせる私にとって、「お母さん」の価値はないに等しい
それなのに、やれご飯が食べられないだの、洗濯はどうするんだとか、上が騒ぐ
騒いだ挙句に、「みんなで「お母さん」に謝ろう!」となる
まてまて、あなた達が喧嘩始めなきゃこんな事にはなってないのだから「私は行かない」
はずなんだけど、結局は暴力に負けて連れていかれる
その時の「お母さん」の勝ち誇った顔がどうにも許せない
私はこんなまま育ってきた
だから子供が出来た時に、言わない言葉ランキングを考えたりしたものだ
とうぜん「おまえはうちの子じゃない!」なんて言うはずもなく
この子はなんとなく、私に似て頑固者のようだから言っちゃいけない言葉だ
他にも色々な言葉があるのだけど
私は「お母さん」にようやく感謝ができた
あなたと同じことをしなければ、幸せになれる・・・そう気づいたのだ
時折訪れる不眠症の治し方てあるのかしら・・・