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ここより先は黄泉の国。  作者: 七星北斗


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1/1

1.リバイブル


 パチパチと火花が散り、

天井が落ちる聖堂。

 小さな赤い眼差しは、

その様を、丘の上から眺めた。


 この世界でもっと栄えた国、

チンクアンタは、その面影すら

残ってはいない。


 赤き衣を纏う、知性ある竜は、

火の粉を撒き、

町を灰色へと変える。


「尊き我らが主、

どうかお救いください」


 四面楚歌の赤き渦の中、

人柱は、祈りを捧げる。

 長髪は焦げ、衣服にも

燃え移る。


 それでも祈る姿は、

聖なる乙女そのもの。


 しかし自分が誰に、

どこに祈っていて、

この願いは届くのか?


 願うほど怖くなる。


「…国が滅びようとも、人間は負けません」


 肌が黒くなり、

消えぬ痛みと、身体は塵へ。


 これは、一昔前の

できごとであった。


 人間の脅威となる、

生き物が、世界に存在する。


 それらの存在を、

総じてテスターと呼ぶ。


国を滅ぼした、赤き竜も

テスターの一体だ。


 テスターは、危険な生き物

であるにも関わらず。

 テスター教という教団が、

世界各地に混在している。


 テスター教には、

教えがあり、殺し、

奪い、還す。

 この3つの美学を

美徳とした。



 この国の干支には、

日本国と同じように、

12の生き物が象徴

とされる。


 干支には、

人間の心象心理を模した

内面を持つという。



 小川に白い髭を

生やした男と、

牙の生えた豚の

血を流す童女がいた。


 流水で冷やされた猪は、

細菌の繁殖が抑えられ、

肉の断面から血抜きにもなる。


「叔父さん、この猪どうするの?」


 オレンジがかったブラウンの髪、

燃えるような赤い目をした幼子は、

穴のあいたボロきれを着る、

初老の男に向かって問うた。


「干して乾燥させ、保存食にするのさ」


 草で編んだ草履を乾かしながら、

男の言葉に頬を膨らませ、

不満を顔に出した。


「今日は、食べないの?」


 こんな大物、きっと脂が乗って、

旨いはずだ。

 今すぐ食べたい、

生でも構うものか。


 リブルの口の端から、

垂れる涎を眺め、

溜め息を吐いた。


「期待してるとこ悪いが、

今日は、干し肉と野菜スープだ」


 また干し肉!干し肉って、

硬いし、あんまり美味しくない。


 それに野菜スープだって、

薄味の上に、

どうせ野菜クズだろうし。


「この猪は、皮を剥いでから、

3日分の生肉を残し、

後は干し肉にするぞ」


 ということは、

明日は肉が食べられる。

 干し肉じゃなく、

厚切りなステーキを。


 であるならば、香草を

摘み。とっておきの塩を

使おう。


 でも、仕掛けた罠は、

まだ5つある。

 つまり5つの罠全てに、

獲物がいるなら…(ジュルリ)。

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