表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サヨカクシ  作者: 有氏ゆず
第一怪 ヨロズ荘へようこそ
8/21

1-7



「きゃああああああああ!!!!」


あたしは叫び、思わず腰を抜かしてしまう。


こ、これは夢だ。そうに違いない。だってそんな、非現実的なこと……!!

そう願って自分の頬を抓ったのに。痛い。


「何してるのぉぉぉぉぉぉ」

「いっ、いやああああっ!!」


目の前にいる猫の妖怪はその毛むくじゃらの大きな手をぶんぶんと振り回してきた。あ、あんなの当たったら、怪我じゃ済まない。


「に、逃げなきゃ……」


早く立ち上がって走りたいのに身体は完全に怯えてしまって、言うことを聞いてくれない。情けなくもあたしは這いずって玄関に向かうしか出来ないのである。


「追いかけっこぉ?きゃはは!待て待てぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「やだああああ!来ないでええええ!!」


猫の妖怪はまるで玩具でも見つけたかのようにあたしに駆け寄って来る。そして、手をあたしに向かって振り下ろし────






────あ、だめだ。






そう思った時は、もう既に手遅れだった。


「きゃあああああーーーーっ!!!!」


妖怪の鋭い爪が、あたしの服の背中の部分と、肌を裂く。痛いなんてもんじゃない。怖過ぎて、気を失っちゃいそう。だけどここで気を失ったらそれこそ命まで無くなっちゃう。でも、気を失わなかったってもう動けない。




ああ、あたしはこのまま殺されちゃうんだ……。


やっぱり、多少高くてもちゃんとしたところに住むんだったな……。安い家賃に釣られるんじゃなかった……。




あたしはぎゅっと目を瞑る。


どうせ殺されるのは分かってる。だけど、自分が殺される瞬間なんて見たくなかったし、最後の瞬間まで怖い思いをしたくなかった。


目を閉じれば、視覚的な恐怖からは逃れられる。

さあ、早く殺しなさいよ。いや、ほんとは殺されたくないけどやるならさっさと……!!




だけど、いつまで経っても "その瞬間" は訪れない。


「ど、どうしよう、どうしよう……!!」


……え?

突然、何とも情けない声が降り掛かってきて、あたしは思わず目を開けてしまう。


「……!!きゃあっ!!」


そこには変わらず猫の妖怪が居たのだが、様子が変だ。襲ってくる気配は無い。……というか、焦ってる?




「あっ……」


いや、あたしも危ないかも。くらくらする。気を失っちゃいそう。


どうせ殺されるなら気を失ってる間の方が良いかな……なんて思いながら、あたしは意識を手放した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ