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「……はい?どういうことですか?」
意味が分からなくてあたしが聞き返すと、大家さんはあたしの問いには答えず大きな溜息をついた。
「はー……あの狐野郎め。視えてる奴は寄越すなって伝えといたんだがなァ……。知らねェぞ、面倒なことになっても……」
……何のことだろう。彼が何を言っているか全く理解出来なくて、あたしは首を傾げるしか出来ない。
「源氏ィ、お嬢の面倒は任せた。やべェ奴はウチにはいねェが、一応見といてやってくれ」
「畏まりました、神々廻様」
あっ、あの表札…… "神々廻" って書いて "ししば" って読むんだ。成程。
ってそんなことはどうでも良くて。彼らはさっきから何を話しているんだろう。
「あの、さっきから何の話をしているんですか?」
置いてけぼりになるのは嫌だったので、口を挟むことにする。
「あー……何でもねェよ。名乗るのが遅れた。俺ァ、ここの大家の神々廻ってモンだ。ンで、コイツは源氏。家政夫みたいなモンさァ」
家政夫って。それよりは執事さんの方がこの人……源氏さんのイメージには合うと思うけど。そもそも格好がそれっぽいし。このボロアパートには似合わないくらい、きっちりした格好をしている。……前髪はだいぶ長いけど。
「……ま、とりあえず……何かあったら源氏に頼りなァ。俺は知らねェ。押し付けやがったあの狐野郎のせいだからな」
「神々廻様、それは大家としてあまりにも無責任だと思いますが」
「あーうるせェ知らねェ。後のことは全部お前に任せた。源氏、部屋まで案内してやりなァ」
そう言って大家の神々廻さんは鍵をこちらに投げて寄越した。すかさず源氏さんがキャッチする。
「全く……本当に無責任ですね……。彼も、彼に押し付けたあの方も」
「あ、あの……」
「それでは行きましょうか、吉野様。部屋まで案内しますので」
「あ、はい……!」
あたしは源氏さんに続いて神々廻さんの部屋を出た。……正直、部屋が汚過ぎて空気が悪かったから助かった。
でも、何か不穏な単語が聞こえたりして……ちょっと、いやだいぶ不安になってきたけど……。