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無理矢理腕を引っ張られたまま電車から降ろされる。
どうやら蛇で大騒ぎになっているうちに、電車は駅に着いていたらしい。
「な、何なんですか……!」
あたしの腕を掴んでいた手を振り払い、思わず相手を睨みつける。
電車内ではよく見えなかったけど、相手は自分と同い年くらいに見える青年だった。
「……アンタ、同じ学校だろ。だから降ろしてやっただけだが?」
「あっ……そ、そうだったんですか?」
「まあ、俺も手荒な真似をしてしまったな。それは悪かった。だけど、そのだな……」
彼は何故か恥ずかしそうに咳払いをする。訳が分からなくて、あたしは首を傾げた。
「……その、オッサンに触られてただろ」
「あ、ああ!そうでした!」
正直、突然の蛇の出現のインパクトが強過ぎて忘れかけていたが、痴漢されてたんだった。今更ながら恐怖が蘇ってくる。
「す、すみません……助けてくれたんですね」
「いや、無事ならそれで良い。もっと早く駆け寄れたら良かったんだが身動きが取れなくてな」
……めちゃくちゃ良い人だった。さっき睨みつけてしまったことを後悔する。
「ほ、本当にありがとうございました!そのあたし……吉野沙宵です」
とりあえずお礼と挨拶をしようと深々と頭を下げる。
「…………」
しかし、彼は何も言わず、ただ頭を下げたあたしの後頭部をじっと見つめているようだった。
「……?あ、あの……どうしたんですか……?」
「あ、ああ。いや、悪い。俺は神凪古だ」
いたたまれなくなって頭を上げると、彼……神凪くんも慌てて名乗り返してくれた。
「……うなじの痣は、生まれつきか?」
「……え?そんなとこ、痣なんてあったんですか?知りませんでした」
成程。さっき後頭部を見ていたと思ったのはうなじを見ていたのか。そして、痣があったから気になったと。
うなじなんて自分で見ることないし、気づかなかったけど……。変な痣だったのかな。何となく恥ずかしくなって、何度か髪を撫でる。
「いや、気づいていないなら良いんだ。何となく気になっただけだから」
「そ、そうですか?」
「ああ。それよりも急ごう。新学期早々遅刻だけは免れたいからな」
「は、はい!」
時計を見ると、確かにもう時間ギリギリだ。あたしだって転校早々遅刻は避けたい。
「……源氏さん、有翔ちゃん、行きますよ……!!」
あたしは神凪さんに聞こえないように姿を消してしまった二人に声を掛けると、神凪さんに連れられて学校へと向かうことにした。




