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「いや!それで許せるとかそういう問題じゃないですよね!?」
他の妖怪もこんな感じだったとしたら、あたしの命がいくつあっても足りない。
「悪いけど出て行きます!そもそもここに住む条件に当てはまってないですし!」
「まあ、そうなりますよね。でも、吉野様はここに居て貰った方が良いんですよ」
「い、嫌です!あたし、妖怪に殺されたくありません!!」
「……いえ、むしろ殺されない為にここに居てもらった方が良いんです」
……え?それって、どういうこと?
今すぐにでもここを出て行くつもりで荷造りしていた手がピタリと止まる。
「恐らく、晴臣さんは気づかれていたのでしょう。吉野様が《引き寄せ》だということに」
「晴臣さん?それに、引き寄せって何ですか?」
「引き寄せと言うのは簡単に言うと人ならざる者を引き寄せてしまう体質のことですね」
「へえ、結構そのまんまの意味……ってええ!?」
あたし、そんな体質だったの!?
でも生まれてこの方幽霊とか妖怪とかその類いのモノは一度も見た覚えないんですけど!?
「あ、あのあの、あたし、今までそういうの見たことなんかないです……!」
「それは吉野様本人がソレに気づかれていなかった可能性がありますね。あまりにもはっきり見えるものだから人間だと思った……とか。それに、妖怪の中には上手く人間に擬態出来る者も多いですから……」
……ああ。クラクラする。自分がそんな変な体質だったなんて。しかも、今まで気づかずに生きてきたなんて。
「……だからこそ、ヨロズ荘に居た方が良いと晴臣さんが判断した。ここなら俺や神々廻さんが守れますから。……まあ、ここに住む妖怪達がちょっかいをかけてくる可能性も大いにありますけど」
そう言って源氏さんは猫の妖怪に目線をやる。猫の妖怪はビビってしまったのかそれとも反省しているのか更に縮こまってしまった。
「ご、ゴメンなさい……もうあんなことしないし、ぼくもヨシノサマのこと守るから……!」
ヨシノサマ……なんか変なイントネーションだ。もしかしてそれがあたしの名前だと思ってるのかな……?だとしたら、ちょっと可愛いかも。
「あたし、ヨシノサマじゃないです。吉野沙宵。吉野が苗字で、沙宵が名前です」
「サヨ?サヨちゃんていうの?カワイイねえ!ぼくは有翔!猫又の有翔だよ!」
猫妖怪……有翔ちゃんはそう言って子猫の姿になり、あたしの膝に擦り寄ってきた。……う、これだとめちゃくちゃ可愛い……!!




