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……というか、さっきから気になってたんだけど。この女の子は何なんだろう。何でここに居るんだろう。
「あなたはその、一体誰なんですか?」
「えっとね、ぼくがさっきの猫なの。驚かせちゃってごめんなさい……」
思考がフリーズしそうになる。こ、この子が?さっきあたしのことを殺そうとしてきた猫の妖怪……!?
「ごめんなさい!傷つけるつもりはなかった!ただちょっと、遊んで欲しかっただけだったの!」
逃げ出そうとするあたしの背中に向かって、その子は叫ぶ。……嘘をついているようには思えない。殺意も感じられないし。
「ごめんね。痛かったよね、ごめんね……」
そんな、今にも泣き出しそうな声で謝らないでよ。絆されそうになっちゃうし、何だかあたしの方が悪いことをしちゃってるみたい……。
「……吉野様は完全に被害者ですし、罪悪感を覚える必要はありませんけどね」
あたしの胸中を察したのか源氏さんが口を挟む。
「本来なら、ヨロズ荘には人間には害のない妖怪しか住まわせていないんですよ」
「……あたし、思いっきり背中引っ掻かれましたけど」
……あれ。そういえば背中、割と思いっきり引っ掻かれたように思えたけど。全然痛くないな。
「 "本来なら" です。ここに住む資格があるのは霊感が全く無い人間のみですから。視えないし感じない人間に対しては妖怪が何をしようと影響を受けないんですよ」
「……えっと、でもあたしは、霊感がある……んですよね」
「ええ、それはもうガッツリと」
何となく理解した。霊感が無い人間と妖怪同士はお互いに干渉し合わないと。だから害は無い。だけど、霊感がある人間に対しては、違うということだ。
「……それでもここには比較的大人しい部類の妖怪しか住んでいないんですけど。自分達のことを視える人間が来てくれたのが嬉しかったみたいで、テンション上がってちょっかい出しちゃったみたいですよ」
「そう!そうなの!ぼく、殺すつもりなんて無かったんだからね!?」
「それでも人間はアンタ達と違って脆いんですから、アンタにとっては遊びのつもりでも普通に死にますからね」
「うう、ごめんなさい……」
つまり、この猫の妖怪はただあたしと遊びたかっただけで。力加減が分からずああなってしまったと、そう言いたいらしい。




