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これは、昔々のお話です。
龍臣という、奉日本神社の跡取り息子がおりました。
彼がまだ子供だった頃、神社の裏の森が彼の遊び場でした。
いつも通り龍臣が森が遊んでおりますと、彼はひとつの小さな祠を見つけました。
「こんな祠、見たことあったっけ」……龍臣は恐る恐る祠に近づきます。すると……
「開けて、どうか、ここを開けておくれよ」
なんと、祠の中から子供の声がするではありませんか。
急いで出してあげなければ。そう思った龍臣は祠を開けようとしますが、何をしても開きません。
すると、祠の中からまた声がします。
「祠に貼ってある御札を剥がしておくれ。それがあるせいで、私は外に出れないんだ」
龍臣はその声に従い、祠に貼ってあった御札を剥がしてしまいました。
「……ああ、本当にありがとう。ようやく出ることが出来たよ」
なんと、そこに封じられていたのは人々に呪いをかけ、奉日本の先祖によって千年の眠りにつかされた悪狐だったのです。
「今まで封印してくれたお礼だ。お前の一族に呪いをかけてやろう」
悪狐は怯える龍臣に遠い子孫まで続く、呪いをかけられてしまいました。
これから奉日本家に生まれるものは女子のみだという呪いです。
そして、悪狐は長い眠りにつくことにします。
次に目覚めるのは、奉日本家に十二人目の女が生まれる時だ、と。……そう告げて。
奉日本家は十二代続けて女子が生まれればその十二代目の女子は凄まじい妖力を持つという言い伝えがあるのです。
そして、その妖力は十七歳になる頃に最も大きな力となるのだと……。
悪狐は、その十二代目の女子の妖力を狙っているのだと龍臣は理解しました。
……それまでに、悪狐を何とかしなければ……。
龍臣はまだ見ぬ自分の子孫たちに向けて、手記を書き残しました。
そして、長い年月が流れ……
《サヨカクシ・開幕》