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第5話「フジツボのロッド」

遂に覚悟を決めたオレ、オッサンを連れて街へ出る!情報を手に入れるのだ!オッサン(伯爵令嬢レノメリア)の真の姿を取り戻す為!…逃げろ!BL路線!…。


超ひさびさ更新。ライト系ハイファンタジーです。

 この岩場は、いわば人工的なモンで。


崩れた魔女の塔の瓦礫が元なのさ。さから、地元の奴らも気味悪がって、俺とオッサン…レノメリアだけの穴場になっている。



 50歳のオッサンは釣り糸を垂らしている。


夕日がオッサンの顔を赤く照らす。なかなか、釣りの腕を上げた。集中したその顔は剣豪のようだ。


オッサンの竿がしなる。

「いまだぁ!」


可愛く野太い声を上げ、慎重に釣り上げる。

「やったぁ!ほめて!」


ああ、これがセリフ通り可愛らしい少女だったらなんと愛しいことだろう。


しかし、夕日を浴び魚を自慢げに持ち上げる姿は、タダの釣り好きオヤジでしかなかった。

潮の香りと、酒とイカと鼻歌が似合いそうだ。



「ぶー。なんで褒めてくれないの。」


ぶーじゃねえ!おっさん!!


「もっと大事にしてくれないと、怒るんだから。」


やーめーてぇぇ~!おっさん~!!


―――――――――


 俺は、波の無い時には、近場に潜る。


勿論、貝を採るためだ。


ウニにアワビ。ただ、ココは常夏の国じゃないので、そんな事ができるのも、ここ数日までだろうな。



で。俺は今日、その素潜りでヘンなものを見つけた。


岩の間に挟まった、銀色の小さな杖だ。まぁ、フジツボやらなにやらついているが、こすったら取れるだろう。


「…それ、何でしょう?」


「魔女の塔だもんなぁ、壊れず残ったのかねえ。お宝かな。」


「魔女のなら、怖いです…大丈夫?」


オッサンは心配そうにオレを見る。


手に持っても、とりあえず何も起きそうにない。


街の鑑定士にでも見て貰えばわかるだろうか?…いやいや、そんな金はねえ。魔法の品の鑑定なんぞ、全財産でもたらん。大体、壊れてる可能性が高いだろう。



「大丈夫なら…良いんですけど…。」


オッサンは何故か恥じらっている。


「…売っちゃいましょうか?、その、私達の、将来のために。」


何言ってんのおっさーん!!


「もう、他人じゃ、ないし……」


オッサンが両手で頬を抑え、上目遣いでオレを見る。


があああああー!!やーめーてー!!


―――――――――


 聞いてくれ、俺は、覚悟を決めた。


…って、誰に言うわけでもないんだが。覚悟を決めた。


町へ行く。レノメリアのことは、ココで毎日クスぶっていても何も変わりそうにない。


なけなしの財産。レノメリアの髪飾りを売って金にした残り。俺の貯めていたはした金。


フジツボのロッド(と名付けた)、それから大切な相棒、葦毛馬のブラッソ。


冒険者気取りの、三又の槍。というか、サカナを採る為の銛だが、まぁ槍と言えば槍。



これで何日、滞在できるだろう。


ひと月がイイ所か?



 オレは、オッサンに事情を説明した。


元に戻す(であればイイが)ためには、情報が居る。その為に、街に行こう!と。


だって、このままじゃ、俺とオッサンの同棲生活、ヤバそうだもん!



「わ、私のこと、信じてくれたんですね!!」


オッサンが抱き着いて来た。


いや、やめて。


「貴方に会えて、良かった。」


オッサンが目を瞑り、キスを待つ仕草。


…どう見返しても。見直しても。


おっさんじゃーん!?


おがああああああああ~!!


―――――――――


 オレは、オレ達は、ミルエリダの街、即ち、レゾーナ伯の領地だが…に泊まった。


俗にいう冒険派の宿、では無く、町人や商人がよく使う宿が必要だった。


じゃぁ、何処がそれに該当するかと言うと、俺に判るはずもない。



…だから。オッサンに聞いてみたのだ。


オッサンは腕くみし、部下をレクチャーする上司のような感じで街案内をする。


…オッサン…似合うなぁ。




 さて、街道沿い川沿いの宿、「葡萄の森」。


俺たちは、ここに連泊することにした。勿論、情報を手に入れる為だ。



…なぁオイ。情報って、どう手に入れればいいんだ?


酔っ払いに聞きまくればいいのか?


酒場独特の賑やかさ、雲った煙。同時に複数の話題で盛り上がる喧騒。


隣であろうと、大声なのに所々聞き取れず、断片的に情報が流れ込む。


「…さっきから、飲んでばかりですう。聞きに行かないの?」


おっさんが心配そうに上目遣いで聞いて来る。


「すっかり赤くなっちゃって…。」


「いやぁ、難しいもんだな…。」


「ひっく。わたし、まだまだ飲めます。もー、わたしが訊いてきちゃうんだから。」


うん。ホンモノの女のコであったならば、即止めただろう。


しかし、目の前にいるオッサンは、不敵にでき上ったタコである。



…レノメリアは…おっさんは、酒を持って、近くの4人掛けに座る商人たちに近寄る。


「えへへ、こんにちは。」


「…な…にかね、兄弟。」


「わたしに、見覚えは無いですかぁああ?」


酔ってる!お前、自分の姿を忘れてるな!?


オレは立ち上がって、レノメリアの応援に駆け付ける。


「知らんなぁ、兄弟。」


「おーっと、ツレが酔っぱらってんですまないな!」


オレは割って入ろうとする。


「そうか。はよ、このオネエっぽいオッサン連れてってくれ。」


レノメリアが俺の手を振りほどく。


「ま!しつれーな!そんなわたしに、お酒で勝てないんでしょ?」


「はぁ?オマエみたいなヤツがオレに勝てるはずなかろう?」


「しょうぶ、するうう?」


「…コップ持てやオネエ。」


オレが呆気に取られているうちに、レノメリアと商人のオッサン。オッサン同士のバトルが始まってしまった。


相手のツレ3人は、囃し立ていてる。


オッサンと商人の前に、ニオイから強そうな琥珀色の酒が、なみなみと注がれた。


「GO!」


ごくん。ごくん。


「はー、おいしい。」


オッサンは、ゆであがったタコの様になりつつも、一気に2杯飲みほした。みなさん、一気飲みはやめましょう。


3杯目を続けて、流し込む。


「えー、何このオネエおやじ…。」


商人はあっさりギブアップした。


「よええなぁ。じゃぁ、次はオレだ!」


商人の仲間が続きに入ったが。レノメリアはもう3杯飲んでいる訳で、フェアでも何でもないが。


「…もっと飲みなさいよぉ。きゃは!」


オレは、何か今、いけないものを見ている気がする。


2人目がギブアップ、商人たちは、良いが回って、笑った。


「なんだおめー、オネエの割にツええじゃねえか!負けたアア!飲め飲め、ココは俺らが奢ってやるぜ!」


結局オレもテーブルに座らされ、酒と肉が回ってくる。


「おめーらは、兄弟か?親子か?」


「なーにいってんお?わたし、こいびとです。」


「ぐはあああ!やられたぜ!このオネエ、若いオトコ捕まえたワケか!やるじゃねえか!げはははは!!」


なんか、オレの立場や世間体や性癖プライバシーはとうの昔に消滅している。


オレも酔ってきた…。もう、どーでもいいやー。



「で、おめーら何しに来てるワケだ?」


「ホラ、伯爵のおんなのこが行方不明でしょ、さがそうとおもってるの!」


「たはー!そのナリで、メンズカップルで、伯爵令嬢探し!一獲千金狙い!ってわけか!あはは!そんなん判ってりゃ、俺たちが探すぜエ!」


「うそだー!おじさんたちなんか知ってるでしょ!かおにかいてありますう!」


「うはー!オネエオヤジ鋭でええー!しゃあねえ、教えてやる!ウワサじゃ、追放された家庭教師のヤツが北の魔女んところに向かったとかなんとか!」


北の魔女??


「ご令嬢の方はてんで判んねえが、これもウワサじゃ、この街から出てねえんじゃないか、って話だ!」


「えー、そうなんですか?さわられたんじゃないんですか~?」


「触るじゃねえ!攫うだぜオヤジぃ~さすがエロオヤジ!あははっははは!!」


「ああう…。」


「ははは!だが、納得の行く、静けさなんだよ!伯爵家の自作自演を疑ってる奴もいる位だ!おっと今のは聞かなかったことにしてくんな!」


自作自演…??


…軟禁??ってことか??


―――――――――


 オレは、さすがにヘロヘロになったオッサンを上に運ぶ。


「重い…。」


「し、しつれえな~わたし、おもくないもん、ぷん…。」


酔っ払いとは、重いモノなのだ!何故だろう!!



必死の思いでオッサンをベッドに転がした。


オレも勿論、酔いが少々回っている。


オッサン…レノメリアに毛布を掛け、オレも隣のベッドに転がる。


意外と、俺たちは今日、重要な情報を手に入れたんじゃないだろうか?


勿論、デマじゃ無ければ、だけどな…。



 横になって、暫くして。


不意に、人の気配。


レノメリアが、出来上がった目で、オレのベッドに入って来た。


俺の上半身にのしかかる形で、ささやく。


「…すき…。」



だーーーーーーーーーーーーっ!


これが女の子だったら、オレの理性さらば!


だが、目の前にある、紅潮した顔は、タダの骨ばったタコだった。


たこじゃーん?



オッサンレノメリアは、オレの胸に顔を押し当て、寝息を立て始めた。



すうすう…。


寝息だけは、女子っぽかった。



は、早くナントカしなければ!!


明日には北へ向かおう!


レノメリアの為に!


てか、オレの為にー!!



―――続く。

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