第7章
カーテンの内側は細長い空間で、両側にソファーが置かれてあった。ここが待合室なのだろう。
大学生風の気弱そうな若い男とスーツを来た若い会社員が座っていた。どちらも黙ったまま、顔をうつむき加減にして、思い詰めたような顔をしている。
なんなんだ、こいつらは。これから遊ぶためにここに来ているのに、まるで出撃前の特攻隊のような顔をしてやがる。
壁には女の子の顔写真が貼ってあった。先程のフロントのようなところに貼ってあった写真よりも人数が多い。先程のは今店に出ている女の子で、ここにあるのは女の子全員の写真であると見当がついた。
写真の下には年齢とスリーサイズが書かれている。
花連の写真を捜すと、二十五歳とあった。十九や二十歳の若い子が多い。二十五歳は最年長で、花蓮ともう一人顔立ちのはっきりした化粧が濃い目の女の子の二人だけである。
綺麗な子が多い。
名前の横に太字で「新人」と書いてある女の子が数人いた。新人と謳った方が人気が出るのだろう。プロとして長年働いている子よりも素人に近い子を好む男が多いのだろう。こういう所で遊んだ経験がない正夫でもそれは理解出来た。
しかし、正夫は花蓮が二十五歳だと分かって、逆にほっとし、心がいくぶん軽くなった。娘とあまり歳の違わない子なら、余計に疾しさが増す。
カーテンが開いて、いかにも不良っぽい感じの二人組が入ってきた。
「1時間待ちだってよ。信じられねえよ」
金髪で鼻の左右にピアスをしている男が連れにこぼしている。
「俺も45分待ち」
こちらは髪を銀色に染め、ツンツンに立てらせている。
二人組は店を出てからの待ち合わせ場所を相談していたが、いつの間にか話題が変わったようで、最近見たアダルトビデオのことを卑猥な言葉を連発しながら話し始めた。
なんだ、この店は若い男ばかりじゃないか。
正夫は場違いに感じ、次第に窮屈な気持ちになってきた。
しかも、みんな細くて恰好いいし、顔もなかなか整っている。女の子も自分のようなオヤジを相手にするよりも、若くて外見の良い男を相手にする方がいいに決まっている。職業とはいえ、自分に指名された彼女が不憫にさえ思われてくる。
先に待っていた二人の男が順に呼ばれ、次に正夫の番号が呼ばれた。