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第28章
食べながら花蓮は正夫のことをいろいろと尋ねた。
家族のことを言うのはあまり気が進まなかったが、特に話題もないので、正夫は問われるままに答えた。
県庁で課長をしていること。家内は韓流ドラマにハマっていること。息子は商社に勤務し結婚し、別の県に住んでいること。娘は先日地元の大学に入ったことなど。
そして、初めて会った日は実は娘の入試のためについて来ていたということ。
「えー、そうなんですか。娘さんが試験を受けている時にあんなことをしてて、悪いお父さんだこと」
花蓮は悪戯ぽく笑った。ドキリとするような色気があった。
彼女は表情がころころ変わる。
自分が彼女の顔を忘れたのは、顔にぼかしの入った写真を見たからだけではないことに気づいた。
黙って何かを考えている時は、つんと澄ましたような知的で端正な顔になる。喜んだ時は目を細めた猫のような愛らしい顔になる。時折り今のような悪女のような色っぽい顔もする。




