表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/300

96 食べ歩き

 すでに遅い時間ということもあり、表通りのお店は大半が閉店している。

 ただ、この地は観光地と言うこともあり、繁華街の方であれば出店とかでまだ賑わっているはずとのこと。

 リンちゃんに案内され繁華街へと向かう。


「と、いうことで繁華街まできました」

「なに食べようか」


 リンちゃんの一声にみんなが反応する。


「「肉っ」」


 そう即答する姉妹の二人。

 なんだろ。二人して飢えているのかな。


「あ~、じゃあ焼き肉?」


 焼き肉屋なんてあったっけかな。


「子供たちだけで入れるの?」

「それなら出店で食べ歩きすればいいんじゃないですか?」

「あ、そうしようか。そのほうがみんなで好きなもの食べられるし」


 そう言ってみんなで移動する。

 ぞろぞろと見た目子供の集団四人。

 正直、この時間だと目立つ……。


「あ、串焼き!」


 牛肉を串に刺して焼いた物で、非常に香ばしい匂いがしている。


「おじさん、四本下さい」

「あいよっ!」

「あ、お金……」

「私に任せなさい」


 ルチアちゃんが困ったような声を出したから、胸を張って言う。

 先ほどの戦利品で懐はホクホクだ。

 おや、リンちゃんがアウルと何かコソコソと話をしている?


「アウル、コトミは何したの?」

「えと、金庫の中身を……」

「あぁ、うん。納得。またか~」

「またって、また?」

「そう、コトミは悪党に容赦ないからね~」

「そこ! 影でいちゃもんつけない!」

「後処理する方も大変なんだよね」


 リンちゃんが呆れながら言ってくる。


「う……ごめん」

「まぁ、いつも助かっているからいいけど。また、誤魔化しておくよ」

「うん、いつも通りよろしく」

「私はなにも聞いていない、私は無実だ……」


 アウルが何かつぶやいている。


「アウル、私たちは悪の組織を潰す、正義の見方だよ」

「そんな腹黒い正義ないよ」


 アウルうっさい。


「むしろ必要悪と言った方が正しいのでは無いでしょうか」


 ルチアちゃんも聞いていたのか、横から口を挟んできた。


「いやー、そこだけ切り取ってみたら、むしろ悪だね!」

「なっ……ひどい! 特に最後のリンちゃん! リンちゃんも同罪だからね! ……お肉分けないよ」


 屋台のおじさんからちょうど袋を手渡される。

 私の手元には袋に入った串焼き。

 人質ならぬ、肉質はこちらの手にある。


「人の批判をはね除け活躍するヒーロー、うんかっこいいね」

「必要悪も裏返せば正義になります。問題ありません」

「悪でも何でも自分たちが良ければいいよね?」


 あんたたち手のひら返しすぎだろう!

 そしてリンちゃんはさらに悪へ染まってるよ! そのセリフは!


「はぁ……もういいよ。一緒に食べよう」




 その後も何だかんだ言いつつも食べ歩き。

 食べた。肉ばかり。ただ女子的に食後のデザートも忘れない。


「女子……ねぇ」

「……なによ」


 リンちゃんが半目になりこちらを見ている。

 いや、あなたも同じように食べたでしょうに……。




「今日このあとどうする? せっかくだしどこかに泊まる?」


 そこそこいい時間にもなってきたので、これからどうしようかと相談。

 みんな後半になり口数が減ってきている。このままだと楽しい時間が終わっちゃうしね。


「そうだね……。でも私たち、お金無い……」


 アウルが珍しく気にしているね。


「それは大丈夫よ。私が出すんだし」

「え……でも……」

「アウル、いいんだよ。こういうときは遠慮しないの」


 リンちゃんがアウルに何やら話をしている。

 アウルはたまに遠慮するんだよな。

 普段は遠慮どころか邪魔しかしないのに。


「コトミは相変わらず遠慮しないね……」

「うっさい」

「ところで、子供たちだけで泊まれる宿なんてあるんですか?」


 そう、こちらの世界では未成年者の自由は少ない。

 そもそもこんな時間に出歩いていたら通報物だ。

 それでも周りが温かい目で見守ってくれるのは街柄なのかな?

 祭り騒ぎでそれどころではありませんか、そうですか。


「大丈夫。私に任せて」

「リンちゃん? いいけど、大丈夫?」


 なんか、嫌な予感がするけど……。


「問題なし!」


 不安だ……。といっても、他にいい案が思い浮かばないため、リンちゃんに付いて歩いていく。

 少し歩くと目の前には高層ビルが……ってこれ、ホテルか……?

 リンちゃんは躊躇(ちゅうちょ)することなくその建物に入っていった。

 見上げていたら置いていかれそうになったので、慌ててついて行く。

 内部も高級感溢れる装飾品で埋め尽くされており、庶民の私からすれば簡単には手が出ないホテルというのがわかる。


「あ、ワタクシです。父様への来客が急遽ありまして、突然で申し訳ないのですが、お部屋を用意出来ないでしょうか?」


 誰やっ! ……相変わらずの豹変(ひょうへん)っぷりに思わずツッコミを入れてしまう。


「はっ、リーネルンお嬢様。承知いたしました。いつものお部屋でご用意がございます」

「ありがとうございます。お友達もご一緒して問題ありませんか?」

「もちろんでございます。お食事は如何いたしましょうか?」

「軽くいただいて来ましたので、あとでお願いできますか? こちらからお声がけしますわ」

「承りました。それではお部屋にご案内いたします」


 そんなやりとりののち、フロントクラークの男性が、案内しようとカウンターの向こうから出てくる。


「あ、今日はお友達とゆっくりしたいので案内は不要です。ルームキーだけいただけるでしょうか」

「承知いたしました。ごゆっくりと、おくつろぎください」


 軽く会釈をし、フロントから離れるリンちゃん。


「さぁ、皆さん参りましょう」


 後ろの二人はボーゼン。私は、まぁ、慣れたってだけで……って、置いていかれる! ちょっと待って……。

 二人の手を掴み、半ば引きずるように連れていく。

 うぅ……周りの視線が痛い……。


「ふーっ。ね、問題無かったでしょ?」


 エレベーターホールの前で回りに誰もいないことを確認したリンちゃんが素に戻る。

 ウインクするご機嫌なリンちゃんとは裏腹に、後ろの二人は白目を向いていた。


 エレベーターに乗り込み目的のフロアに到着。

 ホテルの部屋は最上階。ワンフロアで一部屋か……。

 いったい一晩でいくらするんだろうか。


「ふふふ、お友達同士で泊まるって旅行みたいで楽しいね」

「えっと、そう、だね」

「なによー。コトミ、歯切れが悪いね」

「うん。慣れたつもりだったけど、私、混乱している」

「あはは、ごめんね。いまさらだけどさ」


 あっけらかんと笑うリンちゃん。

 まぁ、いいんだけどね。

 部屋の扉を開け中に入る。


「ほら、二人とも、着いたよ」

「はっ……」

「……リンさんって、何者なんですか?」

「あはは、やだな。どこにでもいる普通の少女だよ。少しだけネコ被っているけど」


 少しじゃないよね、絶対に。


「コトミうるさい」

「えっ!? 声に出てた!?」

「ううん、顔に出てる」

「か……お?」


 ってどういうことよ。そんなに分かりやすいのか。


「コトミは昔からそう、すぐ顔に出る」


 アウルもいきなりなによ。泣くぞ?


「ま、せっかくのホテルだし楽しもう!」


 私が一人ダメージを受けていじけていると、リンちゃんが仕切り直してきた。


「はぁ、まぁいいや……。とりあえずお風呂入りたいね」

「一緒に入る? 四人なら入れると思うよ」

「お風呂っ!?」


 うわ、ルチアちゃんか。


「ビックリした。どうしたの?」

「あ……ごめんなさい。お風呂、久しぶりなもので……」


 あ~年頃の女の子だもんね。

 私やアウルは前世のこともあるから、あまり気にならないけど、リンちゃんやルチアちゃんはそうじゃないもんね。


「じゃあみんなで入っちゃおうか~」

「狭くない? 大丈夫?」


 お風呂場の中をちょっと覗く。

 ん~、蛇口が左右に一つずつあるし、浴槽も四人は入れそうだね。それにしても……。


「いい、部屋だね……おいくら?」

「ん? そんな野暮なこと聞かないでよ~。でもまぁ、コトミなら普通に泊まれるクラスだよ」


 私を基準にされても困るんだけど。


「え? コトミってそんなにお金持ってるの?」

「何言ってるのよ。アウルたちも持っている……という より、これから貰うんだよ?」

「「……え?」」


 姉妹が二人して疑問を口にする。


「コトミは優しいからね~。絶対に一人占めしないんだ。ほんとバカだよね」

「リンちゃんうっさい」

「でも、そんなバカだけど、ワタシ好きかな」

「バカバカ言うな~!」

「あっ……」


 アウルが何かに気づいたように――。


「……コトミは、そうだったね」


 ぽつりとつぶやく。


「昔から口は悪かったけど、優しかったよね。口は悪かったけど」

「二回言うって確実に悪意持っているよね!?」

「へ~コトミの昔話って聞きたいな~。ワタシと出会う前のことだよね?」


 リンちゃんがアウルの漏らした言葉に反応する。


「「うっ……」」


 アウルと二人して口を紡ぐ。

 昔……テスヴァリルの話はさすがになぁ……。


「ん? どうかした?」

「あ、いや……あっ、お風呂だよね、お風呂入ろう!」

「あ~、ごまかした。なになに? 言えない秘密でもあるの?」


 リンちゃん鋭いね!


「そういう話はまた今度ね! また今度!」

「へぇ、今度なら教えてくれるんだ」

「うっ……」


 や、やぶ蛇だったか……。


「おぉ、コトミが手のひらで転がされてる」

「アウル、うっさい。むしるよ」

「何を!?」


 はぁ、まぁいいや。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ