表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/300

77 <初めての仲間>

 それからさらに時間がたった頃、そろそろ疲れてきたこともあり、先に帰ることとした。

 アリシアは変わらず他の冒険者と楽しく会話をしながら呑んでいる。

 元気だな、あいつ。


「はぁ、先に帰るよ」


 一応、声はかけておく。


「あ、待ってよー! それじゃ、みんなまたね〜っ!!」


 ギルドの中に向かって大きく手を振るアリシア。

「おぉー。またな」「気ぃつけて帰れよ」「楽しかったぜ!」と、方々から別れの挨拶が聞こえる。

 人気者だね。

 そんな声を背に受けながら、ギルドをあとにした。


 小走りについてきたアリシアと二人で通りを歩く。


「一緒に帰らなくてもいいのに」

「ん? うーん、やっぱりシャロがいないとつまんないからさ」


 なんだそれは。やっぱり……いや、何でもない。


「……バカにされると思ったんだけど、どうしたの?」

「バカだとは思ってるよ。口に出していないだけで」

「あはは……。やっぱりシャロはシャロだったね」


 またわけのわからないことを。私は私だろうに。

 ……ん?


「そういえば、宿屋はあっちじゃないの?」


 自分の家とは反対方向の道を指し示すが、アリシアはこっちを見てニコニコとしている。

 なんか嫌な予感が……。


「明日も朝早くからギルドに行きたいので、シャロの家に泊まりた――」

「却下」

「えぇ〜、まだ何も言ってないよ〜。女の子同士仲良くしよ?」

「女の子だろうがなんだろうが、他人を泊める気はない」

「えぇ~。じゃあ、私はどうすればいいの?」

「宿屋に泊まればいい」


 まったく、何を考えているんだか。

 いまだぶつくさ言っているアリシアを放置し、自分の家へ向けて歩きだす。


「ふぅ……」


 誰も居ない家に着いて一息つく。

 先ほどの喧騒(けんそう)から打って変わって、静かな家は寂しく感じる。……そんなことを思うなんて、少し飲み過ぎたか。

 遅い時間ということもあるが、久し振りのベッドを前に、(まぶた)が重くなってきた。

 無理に睡魔と闘う必要もないから、もうこのまま寝ちゃおうか。

 そう思い、寝る準備をする。

 準備といっても装備を外し服を脱ぐ程度であるが。


「ふぅ……」


 寝床に入り、あらためて一息つく。

 今回の依頼はいろいろなことがあった。

 アリシアとのやりとり含め、ドラゴンの討伐、妖精との出会い。

 最後のギルドでの宴会は遠慮したかったけど。

 まぁ、たまにならこういうのもいいかな。

 毎回だと、ちょっと心が折れそうだけどね。

 そんなことを考えながらゆっくりと意識が沈んでいく。


「…………?」


 眠りに落ちる瞬間、物音が聞こえたような気がした。

 ただの気のせいかとも思いつつも、起き上がる。


「……一応確認しておくか。何かあったら嫌だし」


 誰に言い訳をするでもなく、重たい身体を起こし外の様子を見に行く。

 一歩歩くのも億劫(おっくう)だけど、なんとか入り口までたどり着き、ドアを開ける。


「……何してんの?」


 ドアのすぐ脇、うずくまるように座っている人物。


「んぅ……あ、シャロ。おはよう」


 顔を上げたのは、先ほど別れたアリシアだった。


「まだ夜だよ。そうじゃなくて何してんの?」

「あ~……宿屋一杯でさ。行くあても無いからここに来ちゃった。一応、ノックしたんだけど、起こしちゃ悪いなぁと思って」


 ノック? ……あぁ、さっきの物音か。

 困惑しながら説明するアリシアにため息を一つつく。


「……バカなの?」

「えー、なんで」

「普段、遠慮もなにも無いくせに、なんでそう言う時に遠慮するの?」

「だって……迷惑かなって」


 こいつは、ホントに……。


「バカ」

「あぅ」

「入って」

「……いいの?」

「外にいられると気になって逆に迷惑」

「……うん、ありがとう」


 普段と雰囲気の違うアリシアが家に入ってくる。

 ホント、どうしたんだか。


「隣の部屋に布団余ってるから、勝手に使って」

「あ、はーい」


 隣の部屋に向かうのを見届け、自分のベッドに入る。

 はぁ、まったく、バカなんだから。

 一人ため息をつく。

 あとは大丈夫だろうと思い目をつぶる。


「あの……シャロ?」


 声をかけられ、扉の方を見ると、半分ほど開いた扉からアリシアが顔を覗かしていた。


「……なに?」


 薄眼を開き、何の用か聞いてみる。


「一緒に寝ていい?」

「調子のんな」

「ぁぅ……ごめん」


 ……あぁ、もう、面倒くさいなぁ。


「はぁ、いいよ、おいで」

「やった」

「もう、今日はなんでそんなにしおらしいの。調子が狂う」


 さっきまでの遠慮のなさはどこへいったのか。まったく。


「え? ちょっと調子乗りすぎちゃったかなって。いっぱい迷惑かけたし」

「まぁ、確かに? 怒りすぎて血管切れるかと思ったし」

「ぁぅ……」


 ……はぁ。


「あー、もう。私が口悪いって知っているでしょ。いちいち落ち込まない。本当に嫌なら家に入れないし、とっくに追い出している」

「えと、そうなの?」

「うっさい。もう寝る。あとは好きにしろ」


 そう叫び、布団を頭から被る。

 まったく、調子が狂うなぁ。


「あはは、ありがとう。……ありがとうね、シャロ」

「ふん」


 近くに布団のひかれる音がする。


「……えっ? 床で寝るの?」

「えっ?」


 ……あっ。


「あっ……じゃあ、ちょっとお邪魔して」

「ダメ! 今の無し! 床で寝なさい!」

「えー! ひどい! やだ! ベッドがいい!」

「うっさい! さっきの遠慮はどこへいった!」

「いいじゃん! 減るもんじゃないし!」

「減るわ! 精神がゴリゴリ減るわ! ちょっとは遠慮しろ!」

「ざんねーん! わたしはもう遠慮しないことに決めたんですぅ! 何を言われてもやりたいようにやりますぅ!」

「くそっ! 子供か! やっぱり出てけ! 外で野垂れ死ね!」

「やーだよー! ってことでお邪魔しま~っす!」

「あー! 邪魔! 布団入ってくんな!」


 狭くて寂しい、一人で住んでいた家が騒がしくなった。

 面倒ごとが増えたけど、これはこれで悪く、無いかな。

 そんなことを思いながら夜が更けていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ