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71 着せ替え人形

 懐かしい夢を見た。

 前世で過ごしてきた日々のことだったけど、なんでこんな時に見るのかな。


「ん~~っ」


 身体を起こし、大きく伸びをする。


「今日もよく寝たなぁ。……うん、まぁ、もう見慣れた光景だよね」


 また隅っこに丸まって眠るリンちゃんの姿が……。

 近くに歩み寄り布団をめくる。


「すぅ……すぅ……」


 珍しく寝ているね。

 もうちょっと寝かせてあげようか。

 そう思ったところ――。


「ん……コトミ? もう、朝なの?」

「朝、だね」


 考えていたら起きちゃったか。


「ふあぁ~っ」


 大きなあくびをしながら身体を起こすリンちゃん。


「お嬢様なのに、はしたないよ」

「そんな細かいこと気にしないでよ。ふぅ、おはよ。昨日よりは寝れたよ」

「おはよう」


 不眠症なんだろうか。

 今度、リラックス効果のあるお茶をプレゼントしようかな。


「……気持ちだけ受け取っておくね」


 また心を読んで……。


 二人とも朝の準備をして朝ご飯を食べる。

 午前中はまったり。

 午後から出掛けるため、お昼ご飯は早めに食べよう。


「今日はショッピングに行こうね。コトミの服を見に行こう」

「私の服?」


 お昼ご飯の最中、隣からそう声をかけられる。


「そうだよ。ワタシのせいで一着ダメにしちゃったからね。買ってあげる」


 そう言えば昨日、少女の一閃でご臨終されたのだった。

 もう一着持ってきているけど、これしかないから洗濯している間は着るものがなくなっちゃう。


「それじゃあ、お言葉に甘えようかな」


 お金には困っていないけど、好意は素直に受け取っておかなくちゃ。


「ふふふ、任せて。コトミは素材がいいんだから、もっと可愛い格好しないと。見(つくろ)ってあげるね」


 背中に嫌な汗が流れる。


「……お手柔らかにお願いね」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 お昼ご飯が終わり、早速お出掛けの準備。

 今日も徒歩で向かう予定である。


「それじゃあ行くよー」


 私とリンちゃんが横に並び、マーティンさんは数メートル後ろに付いて歩く。

 近くには私がいるし、護衛対象の周囲を警戒するなら少し離れておいた方がいいのだろう。

 私としても離れてもらった方が、リンちゃんと普通に会話できるし、助かる。

 私には秘密が多すぎるから……。


 昨日と同じように橋を渡り、クレープ屋さんを通り過ぎる。

 相変わらず人が多いからリンちゃんとは手を繋ぐ。と、いうより繋がれる。いや、いいんだけどね?

 護衛対象へ自然に近づくことができるからさ。

 と、誰に対してかわからない言い訳のようなことを思う。


「あ、見えてきたよ」


 リンちゃんの視線を辿ると、通りの向こう側にファッションショップが数件見える。

 その中でも一軒、近寄りがたい雰囲気のお店があるが……。


「とりあえずあのお店に行ってみるから」


 ……やっぱり。


「あの店はどう考えても、私に似合わないと思うんだけど」


 他のお店は普通の服屋に見えるのでまだ許せる。

 だけど、リンちゃんが指差したお店は白とピンクを基調とした甘ったるそうなお店だった。


「お店の外見からして可愛いすぎるよ……」

「いいじゃん。たまにはワタシみたいに可愛い服を着なよ」


 今日のリンちゃんは暑い季節でも過ごしやすそうな服装をしている。

 上下セパレートに見える服装だけど、これはワンピースか?

 ……このぐらいなら許容できるか、いやいやいや、想像してみろ、私にこんな可愛い服が似合うわけがない。


「それはリンちゃんが着るから可愛いのであって、私が着たところで可愛くはならないよ」

「まぁまぁ、モノは試しと言うことで。とりあえず入ってみよう」

「ちょ、引っ張らないで。私は白とか黒の無難な色でいいよ」

「ダメだよ。そんなの。パンダになっちゃうよ」


 なんだよ。パンダ可愛いじゃん。ダメなのかよ。

 私のブツブツとした抗議に耳を貸すこともなくお店の中に連れていかれる。

 中に入ると外見以上にファンシーな感じだった。

 壁や天井はピンク一色。

 床は辛うじて白色を維持しているがそれさえもお店の可愛さを一層底上げしているようにも見える。

 ディスプレイされているコーディネートも淡いピンクや淡い青、淡い紫など、歯の奥が痒くなりそうな色合いのお店だった。


「淡い色が多い……」

「可愛いでしょ。とりあえずこっちね」


 そう言ってお店の奥に連れていかれる。


「あら、リーネルンお嬢様じゃないですか。お久しぶりです」


 店員さんと思われる女性が話しかけてくる。

 ピンクや白の入り交じった可愛らしい服装の女性だ。

 間違いなくこのお店の店員さんだろう。


「お久しぶりです。今日はこの子に合う服を探しに来ましたの。少しゆっくりと見させてもらえますか?」


 対外的なリンちゃんは今日も絶好調である。


「えぇ、奥の部屋をご利用ください」


 リンちゃんに手を引かれお店の一角にあるフィッティングルームへ入る。

 ……フィッティングルーム?

 フィッティングルームだとは思うんだけどテーブルがあるし、鏡も横に長く大きい。

 そもそも普通のフィッティングルームの二十倍ぐらい広い『部屋』なんだけど……。

 いや、『ルーム』なのは間違いないんだろうけど……。


「服を見繕ってくるからちょっと待っていてね」


 その言葉を残し、足早に店内へと戻っていく。


「はぁ……」


 今さらどうこうしたところで、状況が好転するわけではないか。

 諦めに似たため息を漏らし、備え付けの椅子に座る。

 コンコンコンと、部屋のドアがノックされる。


「はい、どうぞ」

「お嬢様、失礼いたします」


 ドアを開けて入ってきたのは、先ほどとは違う女性店員だった。

 その女性は紫ベースの服装で所々に黒色のワンポイントが入っている、カッコ可愛いい服装だった。

 これなら私でもまだ似合うかな……。身長が足りませんか、そうですか。

 そんなことを考えながらも女性は一礼。


「お飲み物をお持ちしました」


 あぁ、うん。なんとなくわかっていたよ。

 庶民は試着しながらお茶しないけどね。

 私の考えなんてお構い無しにティーセットが並べられていく。


「それではごゆっくりどうぞ」


 はぁ……。とりあえず、お茶でも飲んで落ち着こう。

 しばらくそうしてのんびりとリンちゃんを待つことにした。

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