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67 追加の護衛

「コトミ嬢、リンから詳細は聞いた。ウチの娘を命がけで守ってくれてありがとう! まさに命の恩人だ!」

「そんな大袈裟にしないでくださいよ。友達を助けただけですから」

「それでもありがとう! この謝礼は十分に渡そう!」

「いえ、お金はいいですから……」


 お金は貰えるところから貰うからね。大丈夫だよ。


「それじゃあ私の気がすまん! 何が欲しいんだ」


 この人ってこんな暑苦しい人だったっけ……。


「えーっと、じゃあ、私がいつか困ったときに助けてくださいよ。それで十分です」

「……そんなことでいいのかね。娘の命はそんなに安くないぞ?」


 どないせいっちゅーねん……。


「大丈夫ですよ。本当にマズイ時にでも助けてもらうつもりなので、お金より大変かもしれませんね」

「う……む、確かに言われてみればそうか。わかった。これは貸し一つだな。我々ペリシェール家はいつ如何(いか)なるときもコトミ嬢の力となることを誓おう」


 あははは……大丈夫かな、やっちゃっていないよね。

 冷たい汗を背中に感じながら愛想笑いをする。


「……お話終わった?」


 隣の席に座っているリンちゃんから声がかかる。


「あ、うん。ごめんね」


 大人同士の会話だったから、リンちゃんは静かにしていたようだった。

 あ、私も今は子供ですか、そうですか。


「リンも、ちゃんとお礼を言いなさい」

「言ってるよー。感謝しかない」


 膨れっ面になりながらも腕を絡ませてくる。


「リンもそうだけどコトミちゃんも無事でよかったわぁ。よく逃げられましたね~」


 二人への説明はかなり湾曲(わんきょく)させている。

 子供が大人十人に大立振る舞いをしていると知られたら大変なことになる。

 そのため、怪しい人物に追いかけられたけど、何とか逃げ切ることが出来たと説明した。

 リンちゃんは私と秘密を共有したいからか、えらく協力的だ。


「リンもしばらくは家に居た方がいい。また襲われる可能性もあるだろうからな」

「やだ」


 やだってあんた……。


「コトミがいるから大丈夫だよ。コトミはすごいんだから」

「コトミ嬢がすごいのはわかっているが、それでも限度があるだろう。今回は運良く逃げきれたかも知れないが、次はわからないだろう?」


 すみません。逃げるどころか返り討ちにしました……。


「やだ。もし、それでもダメなら勝手に出ていく。その方が危険だと思うよ? それなら目の届く範囲で自由にさせておいた方がいいんじゃないの?」

「うぅむ……」


 リンちゃんの交渉術に若干引き気味の私。


「……コトミ嬢」

「あ、はい」


 考えがまとまったようかな。


「申し訳ないがもうしばらくリンのワガママに付き合ってもらえないだろうか。護衛料は上乗せさせてもらう……」


 折れたか~。まぁ、仕方がないよね。

 リンちゃんならどんな手段を使ってでも抜け出しそうだし。

 それなら私にしろ、他に護衛をつけた方がいいんじゃないかな。


「お金はいいですよ。その代わり他の護衛の方もお願いしますよ。私一人じゃ荷が重いです」


 横から余計なことを言うな、と視線が突き刺さっているが気にしない。


「あぁ、手配しよう」

「あ、ワタシの近くはコトミだけにしてよ」

「そうもいかん。せめて一人は付けるようにしてくれ」

「はぁ~い……」


 渋々といった感じではあるが一応了承のリンちゃん。

 その後、遅めの昼食を取り、部屋で少しのんびり過ごす。

 リンちゃんはまだぶーぶー言っている。


「まぁ、レンツさんの言い分もわかるし、仕方がないよ」

「ぶー、コトミはどっちの味方なのよ」

「そりゃ、リンちゃんだけど、さすがに危険な目に合わせたくはないよ」


 納得しているのか納得していないのかわからないけど、ベッドに転がりながらまたぶーぶー言っている。

 小さくため息をついたところで部屋のドアがノックされた。


「は~い」


 リンちゃんはまだゴロゴロしているから私が応対する。


「リンお嬢様、コトミお嬢様、失礼いたします」


 扉の前に立っていたのは見たことない人だった。

 執事服着ているからお手伝いさんなんだろうけど。


「あ、マーティン? どうしたの?」


 ベッドの上から顔だけこっちに向けて話してくる。


「リンお嬢様、明日からの護衛は私めにお任せください」

「あ~、うん、そうなんだ。よろしくね」


 なんか投げやりな感じになってるね……。

 マーティンと呼ばれた人は特に気を悪くしたわけではなさそう。

 見た目は三十代後半ぐらいかな?

 前髪半分がオールバックで残り半分が長いという奇抜な髪型が印象的だけど、爽やかな笑みを浮かべ、物腰柔らかそうな雰囲気で一礼している。


「それではお嬢様方、また明日よろしくお願いします」


 そう言い残し部屋を出ていった。


「リンちゃん。あの人知っているの?」

「ん~? うん。少し前からいたね。家のお手伝いさんというより、護衛とか外回りのお仕事担当している人だよ」


 ふーん。

 しばらくゴロゴロしていたリンちゃんも気が済んだのか起きだしてきた。

 お茶をしながら、明日の予定の確認。そう言えばお茶会ばかりやっているな。

 ま、楽しいからいっか。

 明日はマーティンさんもいるから午後からお出かけということにした。

 せっかくの休日なのに肩身の狭い思いをすることになってしまった。

 うーん、このままやられっぱなしというのも(しゃく)だけど、どうしたもんかな。


 機嫌の良くなったリンちゃんと一緒に夕食をいただきお風呂に入る。

 夜も寝るまで色々お喋りしながら就寝。

 こうして二日目を終えたのであった。

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