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47 友人と内緒話

「っと、そういえば今のうちに渡しておこう」

「ん?」


 収納に入れておいた金塊をテーブルの上に並べる。


「あぁ、そういえばあったね。換金にちょっと時間かかるけど大丈夫?」

「うん、そんなにすぐ物入り用じゃないし」


 普段の生活費は両親からの仕送りで十分だし。

 それにしても、この量はいくらになるんだろうか。

 単純計算しても小さな一軒家程度なら買えそうだけど。


「取り分はどうしたらいい? コトミの戦利品だからコトミが決めていいよ」

「え? ……半分のつもりなんだけど」

「はぁっ?」


 っと、いきなりビックリするなぁ。

 どうしたんだろうか。


「いや、普通は一番リスクを冒した人が多くもらうものでしょ。ワタシなんてせいぜいサポート程度しかしていなかったし、半分は多いよ」

「うーん、とはいっても私にとってはリンちゃんのサポートは助かったし、結果的にバレることなく退散することもできたから、十分な報酬だと思うんだけど」

「……やっぱりお人好しだよね」


 なんだよー。

 いいじゃん、別に。

 友達、なんだからさ。


「……リンちゃんとは対等でいたいんだよ」

「はぁ、わかった。でも、それじゃ私の気が済まないから、他のことでも手助けするね」


 それなら、まぁ。

 お互い納得したということで、一旦金塊をリンちゃんに預ける。


「換金後のお金は振り込みでいい? 現金だとさすがに(かさ)張るでしょ」

「うーん、ただ振り込みだと、不明な高額入金で変な所に目を付けられないかな」

「へっ……? あ、そうか。コトミ、口座持っていないんだね。いい機会だし作っちゃう?」

「えと、ごめん。話が見えないんだけど……」


 聞くところによると、世界の大手銀行であるクライス世界銀行の口座であればプライバシーがしっかりしており、公安や国からの情報開示にも抵抗できるだけの力があるらしい。

 ただ、口座を作るためには強力なコネクションと相応の維持手数料がかかる。


「ワタシならコトミを紹介して口座を作ることができるから、作っちゃおうか。その方が今後とも便利だろうしね」


 今後が何を指しているのかわからないけど、その方が安心かな。


「それじゃ、よろしくね」


 なぜそのようなコネがあるのかは、いまさらな気がして聞かないことにした。さすがお金持ち。


「それにしても……」

「ん?」


 紅茶を飲みながら疑問に思ったことを聞いてみる。


「人様のお金を盗んできたのに、怒ったり非難したりしないんだね」

「うーん、全てが綺麗事で済む話でも無いからね。ああいう(やから)は野放しにしない方がいいの。もし、コトミが後処理をしていないなら、ワタシが指示していたよ」


 後処理って……。

 金庫泥棒も計画の内かよ。

 そこまで用意周到なリンちゃんって何者?

 子供なはずなのにね。


「だからコトミは負い目を感じなくても良いんだよ」


 私自信、やったことに対して、後ろめたい感情はない。

 ただ、リンちゃんに軽蔑(けいべつ)されていないか、嫌われていないかが心配だった。

 けど、杞憂(きゆう)のようだった。


「ふふふ、コトミとは仲良くやっていけそうだよ」

「金庫泥棒のあとにそんなことを言われても逆に怖いよ……」


 若干呆れつつ、紅茶を一口飲む。


「コトミって子供っぽくないよね」

「何よ、いきなり……」

「ワタシはいろいろと教えられているから、何が正しくて、何をすべきかわかっているけど、コトミはそんな感じじゃないのに、ワタシと考え方が似てるんだもん」


 何をいろいろと教えられているかが非常に気になるんだけど。


「なんか、同業者って感じ」

「なによ、同業者って」


 そんな怪しいことなんかしていないよ。

 せいぜい魔法で生活を楽にしているだけだね。

 って、十分怪しいですか、そうですか。

 その後もリンちゃんの追求を(かわ)していく。

 躱しきれているかは疑問だけども……。


 ちょうど話が一区切りついたところで、扉がノックされる。


「お嬢様、お昼ご飯のご用意が出来ました」

「よし、それじゃあお昼にしよう。行こっか」


 リンちゃんが立ち上がる。


「うん、ご馳走になります」


 私もリンちゃんのあとに続くよう部屋を出る。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 食卓にはご両親の姿があり、一緒に食事をすることとなった。

 牛肉をこんがり焼いて野菜と一緒に盛り付けられた料理や、魚介をムース状のクリームで包んだ料理など、普段見慣れない料理が出てきた。

 味は当然逸品だし、見た目も素晴らしい、相当手の込んでいる料理だった。


「毎日食べていたら太りそう……」

「その分動けば問題ないよ」


 漏らした言葉にそう返すリンちゃん。

 隣に座っているリンちゃんはスタイルがいい。

 子供体型だけど、手足はスラッとしているし、膨らみも私より……ぐぐぐ、まだ誤差だ、誤差の範囲だよ。


「身体を動かすと言っても……」


 魔法に頼っているところもあるから、思うほど脂肪が燃焼しないと思うんだよね。

 かといって無意味に疲れるのも嫌だし。


「あ~、なんとなくわかった。すぼらなんだね」

「ちょっと、なんてこと言うの。無駄に疲れるのが嫌なだけであって、ずぼらとは違うよ」


 まったく失礼しちゃうな。


「二人とも仲が良くて羨ましいよ。このぐらいの歳になると身分の違うことを気にする子もいてね。それに、親が子供を通して関係を持とうとしてくるから、なおさら神経を使う」


 あ~、確かに。

 貴族と違うとはいえ、これだけの屋敷を構えられるからにはそれなりの立場にいる人なんだろう。

 取り込もうとして来る人たちも多いことだろうに。


「コトミさんはこの屋敷を見ても萎縮(いしゅく)していないのかしら?」


 目の前に座っている夫人からそんなことを聞かれる。


「えぇ、お友達ですから、そんなことは関係ないですよ」

「最初は帰ろうとしていたけどね」

「うっ……き、気のせいよ」

「わははは、まぁ、この屋敷を初めて見たときは誰もかしら驚くだろうから、それは仕方がないだろう。それに、コトミ嬢もそれぐらいで友人関係を変えることは無いのであろう?」

「当然ですよ。リンちゃんは大切なお友達ですから」

「コトミ……」

「あらあら、いいお友達が出来て良かったですね」


 そんな感じで和やかな雰囲気のまま食事が進み、食後のお茶の時間となった。


「ねぇ、パパ。コトミと射撃場に行ってもいい?」

「ん? あぁ……そうだな。ロベルトと一緒ならいいぞ。危ないことはしないようにな」

「わかっているわよ」


 二人のやり取りを見ながら食後の紅茶を味わう。

 さっぱりしている茶葉は、残った脂っこさを流し、スッキリさせてくれる効果があった。

 さすが、料理の組み立て方もしっかりしているし、味も申し分ない。


「お口に合ってくれたかね?」

「えぇ、とても美味しかったです。でもちょっと食べ過ぎたみたいです」


 微笑みながら正直な感想を伝える。

 美味しかった。

 確かに美味しかった。

 だけど、毎日食べたら太る……。

 やっぱり少しは運動しようかな……。


「リンちゃんは何か運動とかしてるの?」


 このご飯で、このプロモーション。

 何か身体を動かさないと維持できないだろう。


「え? 運動? んー、いろいろやっているかな」

「スゴいね、私は何もやっていないよ?」


 テスヴァリルでは魔物との戦闘で自然と身体を動かすことが多かったけど、この世界では戦うことがまず無い。

 そのため、運動不足になりがちなのである。


「そうなの? 動きが素人とは思えないから何かやっているのかな、って思ったんだけど」


 動きって……あぁ、クマとの戦いとかかな?


「どうだろ。実践を通じて組み立ててきたから、無駄な動きは少ないのかもしれない」


 前世でも誰かに習ったわけではなく、我流で鍛えてきた。

 体術とかは全然出来ないけど、細かい魔力制御は得意だから、近距離線の手数で勝負していた。


「実践って……なに?」


 あ、しまった。

 この世界では魔物や人と戦うことなんて無い。

 実践と言えば、前世でのことなんだけど、それを言えるわけもないしなぁ。


「えぇと、いろいろとあるんだよ、いろいろと……」


 いい言い訳が思いつかない。


「はぁ、まぁ、コトミだしね」


 またそれか。

 いや、まぁ、それで助かっているのは事実なんだけど、いまいち腑に落ちない。


「それじゃ、ごちそうさま。ほら、コトミ行くよ」

「わわわ、引っ張らないで。ご、ごちそうさまでした」


 リンちゃんに引っ張られ食卓をあとにする。

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