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45 友人の部屋

「ここが、ワタシの部屋だよー」


 両手を広げ案内された二階の一室。

 ドアを開けると白色とピンク色に統一された可愛らしい部屋が目に入る。

 勉強机や本棚、ベッドにテレビ、そして中心にはテーブルとソファーといった応接セットまである。

 なぜに個人の部屋に応接セットまで……。


「人の部屋をあまりジロジロ見ないでよ」

「あ、ごめんリンちゃん、あまりにも普通だったから、てっきりガンマニアよろしく、壁面に銃がびっしりと飾られているかと思って」


 中に案内されながら思ったことを口にする。


「あー、コレクションは射撃場の個人スペースにあるよ。あとで案内してあげる」


 あるんかい。

 しかも射撃場まであるってどんな家だよ。

 中央に陣取っている応接用ソファーに腰かける。


「今日は来てくれてありがとう! 学校だけじゃ内緒の話もできないし、ゆっくりお茶を楽しみながらお喋りしよ」

「うん。お招きいただいてありがとう。でも、お茶を楽しみながらって、そんなお(しと)やかな会だっけ」


 お淑やかとはほど遠いと思うんだけど。


「いいの。うら若き乙女が二人も揃っているんだから十分よ。っと、どうぞー」


 扉がノックされ、メイドさんが入室してくる。


「お嬢様、お飲み物をお持ちしました」

「うん、ありがとう」


 テーブルにティーセットと私がさっき渡した洋菓子が並べられていく。


「お土産ありがとう」

「お口に合うかどうかわからないけどね」

「ふふふ、大丈夫よ。ワタシは意外と庶民の味も好きだからね」


 普段から高級品ばかり食べているのか。

 でもまぁ、お菓子とかって高ければおいしいってわけでもないしね。

 特に最近のは見た目で勝負しているものが多い。

 銅貨の形をしたワッフルとか見た目のインパクトがすごいよね。

 名前なんて言ったっけ。銅貨パン? そのまんまか……。


「なに一人でボケツッコミしているのよ」

「……また人の考えを読んで……」


 メイドさんが紅茶を入れ終わり、退出していく。

 リンちゃんがカップにミルクを注ぐ。


「この紅茶はね、ミルクティーがオススメの飲み方。ミルクを入れても紅茶の香りが衰えないんだよ。ミルクの風味と甘味を紅茶が引き立ててくれるのもポイントだね。あえて砂糖を入れないのがツウかな?」

「へ~、私も同じようにしようかな」

「オッケー、ワタシがやってあげる」


 言うが早いが、私のティーカップにもミルクを注ぐ。

 なるほど、ミルクが入れられるように深めのティーカップになっているのか。


「はい、どうぞ」


 受け取ったミルクティーから紅茶の香ばしい香りが漂ってくる。

 紅茶の種類には詳しくないけど、普段飲んでいるものとは比較にならないほど、上質なものだとわかる。

 カップを手に取り一口飲む。

 直後、口の中に深みのある茶葉の香りが広がり、ミルクの濃厚な風味がそれを引き立てる。

 香り高い紅茶に負けず、ミルクも良質なものを使っているな。


「おぉ」


 思わず感嘆(かんたん)の声を上げる。


「ふふふ、どうかな。って聞くまでも無いんだろうけどね。コトミも気に入ってくれたようで良かったよ」


 これは、確かにいい。

 家でも飲めたらって思うけど……いったいいくらするんだよ、これは。


「また飲みたくなったら来てもいいよ」


 それは……もっと遊びに来ていいってことかな?

 このミルクティーのためならそれもありか……ってどんだけ現金なんだよ。

 紅茶の香りに包まれながらしばし余韻に浸る。


「そういえばコトミのご両親は大丈夫だった? お泊まりとか許してくれるの?」


 ふぅ、と一息ついたところでそんなことを聞かれる。


「あー、うちは放任主義でね、二人とも仕事で基本的に家にいないんだ。一応連絡は入れたけど、『気を付けてね』、の一言で終わったよ」

「……? どういうこと? 家にいないって毎日?」

「そだね。もう数ヵ月は帰ってきていない……かな?」


 両親に最後会ったのっていつだっけ……。

 一人で生活しても特に問題はないし。


「それ……放任主義って言うの? 子供を一人残している状況って放任じゃなく放置でしょ」


 なんか呆れられた。まぁ、そりゃそうか。

 夜遅く帰ってくるならまだしも、何ヵ月も帰らないとか、普通の子供には耐えられないかもしれないしね。

 でも放置って、ねぇ。


「まぁ、そうとも言う、かもしれない。でも、一人の方が気は楽だよ。普段はお手伝いさんも来てくれるから、衣食住には困らないし」

「はぁ……一人暮らしをする十歳児なんて聞いたこと無いわよ」

「もう十一歳になってるよ」

「そういう問題じゃないわよ」


 なんでい。


「昔はちゃんと家にいたよ? それが仕事が忙しくなってきたからと言って、段々と帰りが遅くなり、帰って来ない日が続き、最終的には別の街に移住しちゃった」

「移住しちゃった。って軽く言うね……。一緒に付いていかなかったの?」

「うん。住み慣れた町を離れたく無かったしね」


 まぁ、これは建前で、本音は早く自由になりたかったからだけどね。

 両親との暮らしも悪くはなかったんだけどちょっと窮屈だった。

 それに、両親の分も含めた家事全般をこなしていたから、私の負担が……っと、いかんいかん、そんなこと言ったら両親に申し訳ない。

 家事は好き好んでやっていたんだし。

 文句を言ったらバチが当たる。

 それに見た目は十一歳でも、中身は立派な二九歳。

 うん、特に何も問題はない。

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