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289 無事に終わった訓練

 「ん〜〜っ」


 大きく伸びをし、身体を起こす。

 身体が凝り固まっている気がするが、こればっかりは仕方がない。


「野宿するのも久し振りだしなぁ……」


 寝惚(ねぼ)(まなこ)をこすりながら周りを見渡すと、隣にはいつものようにカレン……とリンちゃん、そしてアウルか。

 ルチアちゃんとシロは……焚き火を挟んで反対側にいた。

 目が合うと軽く会釈してきたので、私も軽く手を上げて答える。

 夜が明けたばかりで、深い森の奥にはまだ日が差さず、周囲は薄暗い。

 二度寝する気にもならないから起きるか。

 ルチアちゃんに見られているし、年上の威厳を示せねば。


「……っと、その前に」


 立ち上がる前に周囲の三人へと治癒魔法をかける。

 念のため、いつもの恒例行事だ。

 そして立ち上がり、そのままルチアちゃん――じゃなくて、シロの隣へと腰を下ろす。

 いや、ルチアちゃんと喋ろうと思ったんだけど、シロの視線が……。

 まぁ、魔力吸収の効率も上がるし、別にいいんだけどね。


「特に異常なし? あ、治癒魔法いるかな?」


 二人とも念のために治癒魔法かけておく。


「あ、ありがとうございます。特に異常も無かったです。静かなものですよね」


 治癒魔法をかけるために取ったルチアちゃんの手を離す。


「まぁ、この世界じゃ魔物なんてものはいないしね。出たとしてもクマぐらいだから、さほど危険は無いよ。もう少し日が出たら朝ごはんの準備をしようか」


 そう言って、みんなが起き出してくるまでルチアちゃんと他愛もない会話を交わす。

 その後、起き出してきた三人と一緒に朝ご飯を食べた。

 メニューは昨日の夜ご飯と同じ。

 野営しているときはあまり料理に時間をかけていられないし、そこは仕方がない。

 朝ご飯を食べながら今日の予定を確認。

 訓練としては一晩無事に過ごせたし、問題ないかな。

 ここで長居しても仕方がないから、今日はさっさと帰ってゆっくりしようか。

 そう提案すると、みんなも問題ないようでうなずいてきた。

 うん。お風呂も入っていないし、若き乙女たちにとってはなかなか辛い。

 さっさと帰還するようにしよう。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 帰りは同じ道を辿っていたけど、行きよりも時間がかかった。

 慣れた道ではあったのだけど、それ以上に疲労が溜まっているからか休憩する回数が増えたからだ。

 まぁ、まだ日は高いし、のんびりいこう。

 そうやって何度か休憩を挟み、なんとか家までたどり着いた。


「つ、疲れたのです……」

「お、同じく……」

「お疲れ様。荷物はあとで片付けるからちょっと休憩しようか」


 そう言ってカレンとルチアちゃんは身体を引きずるようにして家の中へと入っていった。

 アウルとリンちゃんも少し疲れているように見えるけど、二人よりはまだ元気そうだな。


「ちょっと休憩したらお風呂入ろうか。まだ早い時間帯だけど、やっぱり気持ち悪いしね」


 テスヴァリルじゃ身体を拭くか水浴びする程度だったけど、この世界に生まれ変わってからはお風呂に入らないとどうも気になる。


「じゃ、ワタシは湯を貯めてくるね」


 リンちゃんがそう言ってお風呂場へと向かっていく。


「それじゃ、私たちは片付けをしましょうかね」


 アウルと共に荷物を中に運び入れ、リュックの中身を片付けていく。


「あっ……姉さん、ワタシも手伝います……」

「いいよ。カレンとルチアちゃんは休んでいて。……お風呂はどうする?」

「「入りますっ」」


 二人の声がハモる。まぁ、そりゃそうか。


「それなら先に入っていいよ。私たちは片付け終わってから入るから」

「あ……その……」

「……サイコロ」


 …………。

 二人が物欲しそうにこちらを見てくる。

 その隣にはいつの間にか戻ってきたリンちゃんとアウルまでもが期待の眼差しを向けてきていた。


「……はぁ。もう、勝手にして……」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんなわけで今日は私とカレンとルチアちゃん、残りはアウルとリンちゃんとシロ、という組み合わせでお風呂に入ることとなった。


「姉さんと一緒……」

「あぁ、ほら、ルチアちゃんもいるんだから。そんな恍惚(こうこつ)とした表情をしない。端から見たら危ない顔をしているよ」

「危ない顔ってなんですか。こんな可愛らしい妹なのに」


 私の言葉にカレンが膨れっ面になりながら抗議してくる。だけど――。


「カレン……」


 ほら、ルチアちゃんも呆れているし。


「……今日はルチアから洗ってあげる」

「え……? いや、いいよ。さすがに悪い……って、その手は何かな?」


 呆れるルチアちゃんに対し、カレンが両手をワキワキとさせながら近づいていく。


「大丈夫。優しくするから」

「何が大丈夫かわかんないんだけど!?」


 一歩後退りカレンから距離をとる。だけどこの狭い浴室では逃げ場なんてなく……。


「や、ちょ、どこ、触ってるのよっ。やめてって――」


 あ、これアカンやつや。

 そう思い、そっと障壁を自分の前に展開する。

 その直後――。


「ウォ、ウォーターボールっ!」

「あ――」


 ルチアちゃんの放った水球がカレンに直撃する。

 当然至近距離にいたルチアちゃんへも……。


「「つ、冷たぁぁい~~っっ!!」」


 ……まぁ、そうなるだろうな。

 私は障壁のおかげで直撃は免れたけど、二人は……。


「シ、シャワー貸してください……!」

「はいよ」


 カレンとルチアちゃんが必死の形相で手を伸ばしてきたから、お湯の出ているシャワーヘッドを渡してやる。


「あ、ルチアっ。ワタシも……!」

「カレンは自業自得でしょっ」


 今度はシャワーヘッドの取り合いでもみ合いになる二人。

 仲のいいこっちゃ。


「こけるなよー」


 わーわー、きゃーきゃー、仲良さそうにしている二人を横目に、一人身体を洗っていく。

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