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244 六人全員集合

 リンちゃんの車がゆっくりと街中を走る。

 数日前に過ごした街並みが目の前を流れていく。

 人通りはあまり多くなかった。

 大部分の人は避難しているのだろう。

 それでも残る人が何人かいるのかな。


「それじゃ、地下に……司令室へ行くよ」


 リンちゃんの家に着いたところでそう言われた。

 地下? 司令室?

 そう疑問に思っていると、アウルが説明してくれた。

 有事の際に備えて司令室が地下にある……って、なんじゃそりゃ。

 どんな映画の中の世界だよ。

 まぁ、リンちゃんだしな……。

 変な納得感を持ちながらリンちゃんに付いて地下へと下りていく。

 ……深い。こりゃ、スマホの電波も届かないはずだわ。


「ちょっと一息いれようか」


 エレベーターを下りて薄暗い廊下を歩く。

 案内された部屋は応接室のようにテーブルやソファーが並んだ部屋だった。

 薄暗い廊下とは対照的に、部屋全体が白く、ここが地下だとは思えない。

 ただ、窓が無いからその点は地上と違っていた。

 リンちゃんに促され、三人ずつに分けてソファーへと座る。

 私の両隣には当然カレンとシロ。

 くっつき過ぎだわ……。

 正面にはリンちゃん。その両隣にはアウルとルチアちゃん。

 みんなの視線が痛い……。



「えっと、飲み物六人分お願いできる? そっちの二人は……」


 リンちゃんがメイドさんに飲み物を頼み、カレンとシロを見る。


「えーっと、私と同じ紅茶で。砂糖とミルクもお願い」


 紅茶でも砂糖とミルクを大量に入れれば飲めるでしょ。

 カレンが何か言いたそうにしているけどスルー。

 クルクルクルゥ〜。


「……ついでに、夜ご飯も用意させようか」

「……ついでに、よろしく」


 リンちゃんの提案に素直に応じる私。

 それより、これがお腹の音だとよく気がついたな。

 さすがのカレンもこの時ばかりは、恥ずかしさのためか顔を伏せていた。



 みんなの前にティーカップが並べられ、いい香りで部屋が満たされていく。

 両隣の二人はカップに並々と砂糖とミルクが……。溢れるぞ?

 まぁ、いつもどおりだ。気にしちゃいけないな。うん。


「えぇと、いろいろと教えて欲しいことがあるけど、その前に自己紹介しようか」


 私は全員のことを知っているけど、カレンやシロのことを説明しないと。


「目の前の女の子がリーネルン・ペリシェール――リンちゃんで、右隣がアウル・クリューデ、左隣が妹のルチア・クリューデ、だね。まぁ、カレンには説明する必要がないのかもしれないけど……」

「……?」


 リンちゃんが怪訝(けげん)そうな顔をしたけど、とりあえずはスルー。

 カレンは魔眼を抑えていつもの翠眼(すいがん)に戻っているけど、相変わらずリンちゃんを睨みつけている。

 はぁ……。


「で、こっちの子がカレン。見てのとおり魔眼持ち。魔眼のことについてはあとで説明するよ。で、反対側のこの子はシロ。特殊な子だから、こちらもあとで説明するよ」


 補足説明の方が多くなりそうだな……。


「……どっちも特別な能力(ちから)を持っているんだよね?」


 リンちゃんが少し顔を伏せながらそんなことを聞いてくる。


「あー、そうだね。それもあとで説明するよ」


 まぁ、そりゃそう思うわな。

 この短期間で少女二人も連れ込んでいるんだから……。


「この世界で魔眼持ちって……珍しいね。というよりいるんだね」


 アウルがリンちゃんに続いて口を開く。


「そうだね、私もびっくりしたよ。まぁ、シロがこっちに来れるくらいだから、魔眼持ちがいてもおかしくないのかな」


 どういう理屈かわかんないけどね。


「シロって……もしかして――妖精の子!? なんて子を連れ込んでいるの!?」


 シロに気がついたのか、血相を変えて叫ぶアウル。

 そういえばアウルに説明していなかったか。

 テスヴァリルにいた時も話すタイミングなかったしな。


「あぁ、うん。そうだけど、大丈夫だよ。害はない」

「害のない妖精って……」


 アウルが半ば呆れているけどこればっかりは仕方がない。

 突然変異の影響なのか知らないけど、この子とは意思疎通が図れているし。

 それに、わざわざこの世界まで私を追っかけて来たんだし。


「……コトミもアウルも、二人だけがわかる話をしている」

「「…………」」


 リンちゃんの一言でアウルと視線を交わす。

 ……そろそろ内緒にしておくのも限界かな……。

 ルチアちゃんにもバレちゃっているようだし。

 それに、話を聞く限り、世間にアウルとルチアちゃんのことが広まっているらしい。

 まぁ、あれだけドンパチしていれば(いや)が応でも噂になるか。

 ――仕方がない。

 そろそろ隠し通すことも難しくなってきたし、リンちゃんとルチアちゃんに説明するか。


「リンちゃん。このあとは時間あるかな? ヘルトレダ国の動向も気にはなるけど」

「うん。大丈夫だと思うよ。アウルとルチアのおかげで前線部隊は壊滅状態だし、夜間の市街戦はハードルが高いからねぇ。明日の朝方までは大丈夫と思う」


 壊滅状態……。

 まぁ、あの惨状じゃ相当無理したんだろうしね。

 それより、時間があるなら私とアウル、テスヴァリルのことを説明しよう。

 ……これで、完全に隠し事がなくなっちゃったな。

 意を決し口を開こうとしたところ――。


「夜ご飯の準備ができたようだね」


 扉をノックする音が聞こえ、リンちゃんが立ち上がる。

 ……まぁ、ご飯を食べながら話しをするか。

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