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229 突然の撃墜

 そのままゆったりまったりしながら一時間程度経過。

 カレンはその間に慣れてきたからか、今は同じようにゆったりまったりしている。

 おっちゃん――フリックさんがいるからあまり声を出しての会話ができないのは仕方がない。けど――。


『それで、姉さんはロフェメルへ行ってどうするのですか?』


 念視(ねんし)による会話はできているから問題はない。

 うん。魔眼便利だな。


『そうだね……。向こうの状況がわからないけど、とりあえずはリンちゃんたちと合流して、それから決めるかな』


 現状、両国の状況がどうなっているかまったくわからない。

 離陸前にニュースサイトを引っ張りだしていたけど、あまり有意な情報は得られなった。

 リンちゃんも街もみんな無事だといいんだけど……。


『姉さん……』


 不安な私を気遣ってか、心配そうに私を見るカレン。


『大丈ぶ――』

『姉さんっ!』


 ――っ。

 そう念視(ねんし)で叫び、飛びついてきたカレン。

 条件反射的に障壁を張る。

 直後、後方から何かを切り裂くような轟音と衝撃が身を包む。


「なっ――!」


 バラバラになっていく機体。

 フリックさんはとっさに舵を切るが間に合っていない。

 突然の浮遊感。

 穴だらけとなった機体は高度を維持することができず、地面へと吸い込まれるように落ちていく。


「ちっ……いきなり攻撃かよ!」


 フリックさんの叫び声が風の音にかき消される。

 機体は前方半分残っているが、後ろ半分と尾翼を失い、飛行を続けることができない。

 辛うじて前方半分が残ったのも障壁のおかげか。


『姉さんっ!』


 カレンはしがみついて念視(ねんし)で叫ぶ。

 くそ、このままじゃ三人とも……。

 さすがにこの高さじゃ落下の衝撃に耐えられない。

 ……やむを得ないか。

 頭から落ちていく機体にしがみつきながら魔力を大量に拡散する。

 墜落するまであとわずか、間に合うか――。


「――よっ、と」


 この場に似つかわしくない呑気な――と言ったら失礼だろうが――少女の声が聞こえた。


「……どういう状況?」


 全身が白で染まった少女は落下していく機体――というより私に引っ張られ一緒に落下していく。

 そう思うよねー。って、それどころじゃなく!


「シロ! 説明はあと! 転移して――」


 地面は目の前まで迫って――。



「わぷっ」


 急に浮遊感がなくなり、顔を何かにぶつける。


「あた、あたた……」


 顔を上げると、真っ白に染まった景色。

 ……雪山に落ちたか。って、寒っ。

 腕の中にはカレン。

 フリックさんも――そばにいた。

 あ、フリックさんが放心しているけど大丈夫かな。

 少し離れたところにはもくもくと黒煙を上げる()()だったもの。

 状況を把握しようと、自分とカレンに治癒魔法をかけて立ち上がる。


「カレンは無事かな? あ、シロありがとうね。助かったよ」

「……魔力、もらうからね」


 断る前から吸い取られているけど、仕方がないか。

 ホント危機一髪って感じだったし。


「あの、大丈夫ですか……?」

 フリックさんの近くにより、治癒魔法をかける。

 魔法を見られるのもマズいけど、もう今さら手遅れな気がする。


「あ、あぁ……。大丈夫、だが……いったい、何が……なぜ、生きている……?」


 周囲を見渡しながら困惑するフリックさん。

 まぁ、そりゃ、そうだよねー。

 なんと説明したものか……。


「いやー、なんとか、無事で良かったですね……あはは……」


 誤魔化し笑いをしながらなんとかその場をやり過ごそうとする。

 雪山で寒いはずなのに、変な汗が流れてきた。


「嬢ちゃんたちはいったい……って、そこの白い嬢ちゃんは……何で、どうやってここへ……?」


 あー、やっぱり気がつくよねー。うーん、どう説明したものかな……。


「とりあえず、寒いので移動しませんか?」


 いまの状況を見かねたカレンがそう提案してくる。


「……カレンの嬢ちゃんって、そんなに眼が赤かったか……?」


 いろいろ鋭いな……。

 カレンから『この人どうします?』って目を向けられるけど、どうするかな。

 さすがに説明しないわけにもいかないかー。口止めするにしてもね。


「……とりあえず寒いので移動しましょう」


 結局はカレンと同じセリフを絞り出すしかなかった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「シロ、申し訳ないんだけど、緊急事態と言うことで……転移お願いできる?」

「……………………いや」


 ……すっごい嫌な顔したな。

 まぁ、妖精にとって魔力は生きるために必要なものだしな。

 嫌がるのも無理はないだろうが……。


「でも、このままここに居たら、凍死しちゃうよ?」


 めっちゃ寒いし。

 手足の感覚無くなってきたし。


「…………」

「……近くの街まででいいからさ。せめて人がいる場所までいければ、あとはなんとかするよ」


 頬を膨らませながら考え込むシロ。

 ホントこの子は感情表現豊かになってきたなぁ。

 妖精は基本無感情というか、相手を(たら)し込むために感情を現すことはあるけど、今のシロみたいに自由な表情というのは見たことがない。

 この子も変わってきたのかなぁ。


「………………わかった」


 そんなことを思っていると、シロはたっぷり数十秒考えて答えを出してきた。


「ありがとう。そうと決まれば早速行きたい。寒くて本当に死んじゃう」


 カレンもさっきから私にくっついてきているし。

 心なしか震えている気もする。

 フリックさんは……あまり状況を掴めないでいる、かな?


「あ……あの飛行機、というか、飛行機だったもの……は置いていってもいいですか?」


 出来ることならなるべく身軽に行きたい。

 きっと原型を留めていないだろうし。


「あ、あぁ……命があっただけでも、儲けものだしな……。それより、君たちはいったい……」

「あー……。まぁ、ちょっとあとで説明しますね。とりあえず移動しますんで」


 そう言ってシロへ目配せし、一瞬で転移する。

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