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171 乱戦からの巻き込まれ

 ホールの中を抜けると通路があり、その先に扉が見える。


「姉さん、ちょっとこっちに」


 カレンに引かれるまま、扉から身を隠す位置へと移動する。

 疑問に思ったがカレンのことだから何か考えがあるのだろう。

 カレンも同じように身を隠し、操っている一人の兵士が扉に向けて駆け出す。

 銃器類は持っておらず、手には大型のナイフを構えている。

 駆けている速度のまま扉を蹴破り、さらに進む。

 ――と、思った瞬間、乾いた音と共に男が勢いよく倒れ込む。

 一体何が――?

 疑問に思ったところ、カレンから念視(ねんし)が届く。


『長い通路を利用して待ち構えているようです。狙撃用のライフルですかね、あれは』


 なるほど、とりあえずあの男を偵察として進ませたのか。

 倒れた男は足を撃ち抜かれているが、そんなことを気にも止めず、立ち上がり再び駆け出す。

 二度目の銃声。

 男は気にも止めず、駆けていく。

 三度、四度、五度。

 致命傷を避けた攻撃は男には効かず、その歩みも止めない。

 あと少しで通路の奥へ届こうかというときに――男の脳天へ銃弾が撃ち込まれ、その動きを永遠に止める。


「やっぱり生身の人間じゃ限界がありますね……」

「うーん、私の障壁だと防げるかな」


 魔力でできている障壁は、基本的に物理的な攻撃を防ぐことが出来る。

 ただ、アウルの時のように、魔法を打ち消す効果があるときは例外だけど。


「ちょっと試してみるかな」


 カレンの横から通路へと出ていき、障壁を張る。

 そこに撃ち込まれる銃弾。

 うん。普通に防げたな。

 やっぱり、この世界で魔法は反則だわ。


「ちょっと行ってくるよ」

「あ、姉さん、ちょっと待っ――」


 カレンの言葉を待たず、跳躍(ちょうやく)を使っていきなりトップギアへと入れる。

 障壁を使い銃弾を防ぐと共に、足裏へ魔力を流し、壁、天井へと張り付き駆ける。

 狭い通路の中を縦横無尽に、動き回り銃弾の軌跡を逸らす。

 通路の奥まで数メートルと迫ったところで――。


「炎弾っ!」


 目の前の集団へと魔法を叩き込む。

 燃え広がる炎に焼かれないよう、速度を落とさず突き抜ける。

 通路の奥は先ほどと同じようなエントランスホールになっており、そこには……。


「あー……人がいっぱい」


 ちょっとやっちゃったかな……。

 見渡す限りの銃口は全て私に向いていた。

 宙に浮いたまま思考を巡らし、どうしたものかと考える。

 ……とりあえずやるしかないか。

 勢いの付いたまま目の前の兵士に飛びかかり風槌(ふうづち)を叩き込む。

 取り押さえようと近寄ってきた兵士たちに対しては鎌風(かまかぜ)を使い、切り刻んでいく。

 致命傷にはほど遠いけど、手数で勝負していく。


「炎弾、双っ!」


 目の前の集団に対し魔法を叩き込み、転移を使って上部へと逃れる。

 直後、連続した銃声。

 遠く離れた男がこちらへ照準を合わせ、引き金を引いている。

 ――ちっ、障壁は間に合わないか。

 致命傷だけは避けようと、空中で身体を捻る。

 当たると思った瞬間、何人かの兵士が射線上に飛び出し、銃弾を防いだ。

 ――おぉ、カレンか。ナイスフォロー!


「銃はやめろ! 同士討ちになるぞ! ――っ、ぎゃあっ!」


 叫んでいた兵士が銃弾を受け倒れる。

 何人かの兵士たちは自動小銃を仲間に向け撃ち始めていた。

 カレンの能力(ちから)だろう。


『姉さん! 巻き込みますよ!』


 私も参戦しようとしたら、カレンからお叱りの言葉――念視(ねんし)を受けた。

 うぅ……仕方なしに、混乱に乗じてその場を離脱する。

 壁沿いに駆けていき、カレンがいるであろう元の通路へと戻る。

 物陰から様子を伺っていたカレンの近くにより身を伏せた。


「ご、ごめんね……?」


 恐る恐るそう謝ると、フードの中から鋭い魔眼で睨まれた。うぅ……。

 とりあえずその場は置いといて、目の前の戦況を覗き見る。

 仲間同士で撃ち合っているから、誰がカレンの操視(そうし)下にいるかわかんないや。

 周囲を警戒しながら終わるまで待とう。

 その後、かなりの銃弾を撃ち付くし、立っている者がわずかとなったときに、銃撃が終わった。


「終わった、かな?」


 先ほどの騒音がウソのように静まりかえったホールを覗く。

 立っている兵士は……十人ほどいるな。

 これが全部カレンの操視(そうし)下にいるの?

 すごいな……魔力大丈夫か?

 カレンのフードを少しめくり中を覗くと、変わらず険しい視線をこちらへ向けてきた?


「……怒ってる?」

「少し。ただ、それ以上に魔眼の制御が大変です」


 だよねー。

 一人を操るのでもすごい能力(ちから)なのに、十人まとめてだもんな。

 しかも同時に動かそうにも魔力の操作が難しい。それに頭もこんがらがる。

 きっと、悠視(ゆうし)を常時稼働させて極短時間の内に指示を出しているんだろう。

 うぅん、気の遠くなる作業だな……。

 こりゃ、無事戻れたらいろいろとお強請(ねだ)りされるな……。


「少し休憩しようか」

「いえ、できれば短時間で済ましたいので、このまま進みましょう」


 ふむ、無理矢理休憩させても魔力は回復しないし、本人の言うとおり先に進んだ方がいいか。


「わかった。無理はしないでね」


 カレンはうなずき、ホールの中へと足を踏み入れていく。

 周囲には事切れている多くの兵士たち。

 先ほどと同じ、血の臭いが充満するホールの中を歩いて行く。

 今のところ横道とかはなく、真っ直ぐ進んでいるが、この先に武器庫とかあるかな?

 兵士もそうだけど、武器弾薬、兵器類も全て破壊しておきたい。

 そう思いながら、とりあえず続く道を進んで行く。

 ホールを抜けようとしたところ、カレンが足を止めた。


「……また、待ち伏せですね」


 ふむ、どうしたものか。

 また、私が突撃しようか考えたところ――。


「ちょっと試させて下さい」


 カレンが何かを思いついたようだ。

 操視(そうし)している男たち三人が通路に入り直線に並ぶ。

 ふむ、試してもらうか。

 そのまま見ていると、先頭の男は手榴弾を両手に持ち走り出す。

 後ろの男は、前の男にピッタリくっつくようにあとを付いていく。

 最後の男は自動小銃を構え、同じように走って行く。


 先ほどの通路と同じように扉を蹴破ったところで、男たちに銃弾の雨が降り注いだ。

 前回の教訓を活かしてか、先頭の男は即射殺され、その後も銃撃が続く。

 ただし、両手の手榴弾は既に前方へと投擲(とうてき)済みであった。

 二人目、三人目の男が、先頭の男――既に死に絶えているが――を銃弾の盾にし突き進む。

 手榴弾が発破するが、カレンが操作している男たちは肉盾によりノーダメージ。

 奥にいる兵士たちは……。


「ぎゃっ……!」

「だ、誰か、助け……!」


 真正面で手榴弾が発破したため、数人の兵士がもがき苦しむ。

 そのままカレンが操作している男たちが奥の部屋へと到達する。

 それに合わせて残りの操作している男たちが突撃していく。


「私も行くかな」

『姉さん……あまり無茶しないでくださいよ?』


 若干呆れ口調なカレンの念視(ねんし)が心へと響く。

 あはは……。

 ジト目のカレンに見送られながらも通路へと飛び出す。

 カレンが操作している男たちの邪魔にならないよう、壁沿いに通路を駆け抜けていく。

 通路を抜けた先は少し開けた十字路のようになっており、既にカレンの兵士たちによって制圧されていた。

 うーん、どっちに行ったらいいのか。

 カレンの透視(とうし)でちょっと視てもらうか。

 逡巡(しゅんじゅん)しているうちに、遅れてやって来たカレンと合流する。


「先に親玉潰しといた方がいいと思うだけど、どっちに行ったらいいかな」

「そう、ですね。……ここはちょうど建物の真ん中になって、左手には宿舎のようなものが、右手には食堂のようなものが見えます。……真っ直ぐは事務所のようなものと、人がいっぱい居るのが視えます」


 そうなるとやっぱり真っ直ぐ行くか。

 左右にも多少人がいるだろうけど皆殺しにしたいわけじゃない。

 ここの組織が再起不能になれば問題ないし。


「長期戦になりそうだね。魔力は大丈夫?」

「……少し減ったのがわかります。このベースだと全然余裕そうですけど」


 ……この子も魔力いっぱいあるんだね。

 うらやましい限りだ。


「それならもうちょっと頑張れるかな。先に進もうか」


 そう先を促し、カレンの操作している兵士たちを先に行かせる。

 また、待ち伏せだろうな。

 いいかげんうんざりしつつも仕方がなく前に進む。

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