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133 ウルバスの構成員

 少し遅くなったけどお昼ご飯は昨日も行ったお店にしよう。

 意外とおいしかったし、店員さんも親切だったから。

 頻繁に来る街でもないし、そこまで冒険する勇気はない。

 カララン、とベル音が響く。


「いらっしゃい。奥の席へどうぞ」


 昨日と違い、私みたいな子供が入ってきても特に驚くようなこともなく対応してくれた。

 また奥の席に案内してくれたけど、安全を考えてかな?

 確かに入り口や窓付近の席よりは安全かもしれないけど。


「カレンは奥の席ね」

「あ、はい」


 素直に従い奥に座る。

 うん、これで、何かあっても私が対処すればいい。

 そんな頻繁に何かあっても困るけど……。

 店員さんが注文を取りに来て、ランチタイムのオススメ二つを注文する。


「それで、カレンは――」


 と、話しかけたその時。


「てめぇ、このガキ!! やっと見つけた――」

「私の連れに何か用?」

「……っ!」


 立ち上がった拍子に傾いた椅子が、音を立てて倒れる。

 顔に大きな傷跡のある男がいきなり手を伸ばしてきたから、反射的に男の喉元にナイフを突きつけた。


「何の用?」


 そのまま再び問いかける。


「っ、このガキがウチのシマを荒らして、金目のものを持ち逃げしたって話だ。盗られた物を返してもらいに来ただけだ」


 男の方に注意を向けながら、カレンを見る。


「ワ、ワタシじゃありません! 違います!」

「嘘をつけ! 二人組の男たちがお前の指示で動いたと言っているんだ!」


 ん? 男二人?

 ……あぁ、あの広場にカレンと共にいた男たちか。


「そ、そんなことありません!」

「嬢ちゃんには悪いけど、これは俺らとこのガキの問題だ、そのナイフは引っ込めてくれないか」


 カレンは私を見ている。


「わ、わかりました。だから、このお方には手を出さないで下さい」

「俺らとしちゃ、盗られた物を返してもらえればいいさ。まぁ、金じゃなくてもいいがな。げへへ……」


 ゲスなセリフを口にする男へ、殺意が沸くが抑える。


「……姉さん、ごめんなさい。少しの間だけでしたが楽しかったです。迷惑かけて、ごめんなさい」


 瞳に涙を浮かべ、カレンが立ち上がる。


「――で、いくら?」

「……は?」


 男が間の抜けた声を出し、カレンが驚愕(きょうがく)に目を見開く。


「だから、いくら盗られたの?」

「……金貨十枚だ」


 鞄から取り出す振りをして、収納から袋を取り出す。

 その中から金貨二十枚を数え、テーブルに置く。


「これが盗られた金貨十枚。そしてこの十枚が利子と――」


 カレンに視線を移し、言葉を続ける。


「この子には二度と手を出さないこと。わかった?」

「……俺らからすりゃ盗られた物が返ってくれば問題ないさ。それにガキ一人見逃すことぐらい些細なことだ」

「それじゃ、交渉成立だね。あぁ、男たちは私らと関係ないから、好きにしていいよ」

「ははは! オッケー、オッケー! 俺らは約束を守る。金さえ貰えれば問題はないさ!」


 男は金貨を掴むと外へと歩いて行く。


「また機会があればよろしく頼むぜ」


 去り際にまた面倒になりそうなセリフを置いて男は店をあとにしていった。



「……ふぅ、ごめんね。面倒ごとに巻き込んで」

「い、いえ、そんなことより、お金……! ワ、ワタシ、何もしていないのに……っ!」


 動揺と困惑で声を荒げるカレン。


「大丈夫、落ち着いて。どうせあなたにちょっかいを出していた男二人の仕業でしょ」

「そこまでわかっているのにどうして……!」

「とりあえず、落ち着いて、ね」

「う……はい。すみません。取り乱してしまって……」


 見計らったかのように、頼んでいた料理が運ばれてくる。

 手際よく料理が並べられ、最後に飲み物が二人分置かれる。


「あれ? これ、頼んでいましたっけ」

「いえ、これは私からのサービスです。先ほどは助けに入れず申し訳ありませんでした。この辺りはウルバスの者がを幅を利かせているのですが、私たちも迂闊に首を突っ込むわけにもいかず……」

「こちらこそ、逆に騒がしくしてすみませんでした。こういうことはお店の外でやるべきでしたね。気を付けます」


 周りに意識を向けると、先ほどの喧騒(けんそう)さが嘘のように静まりかえっている。……やっちゃったなぁ。


「事情は聞こえてきたので存じております。彼らからすれば、お金を手に入れるためには手段を選ばず、日常茶飯事……とまでは言いませんが、よくあることですので気になさらないで下さい」

「ありがとうございます。せっかくなのでいただきます」

「はい、ごゆっくりと」


 店員さんは一礼して去って行った。


「よし。とりあえず、食べながら話しようか」

「……はい」



 カレンはどうも納得出来ていないようだけど、まぁ仕方がないか。

 お金は大切だけど、使えるときには使わなきゃ。

 今回だってブチのめすのは簡単だったけど、そのあとのことを考えると穏便に済ませておいた方がいい。

 それが理不尽だとしても、危害が加えられないのであれば。


「ちなみに、さっきの男がシマとか言っていたけど、縄張りみたいのがあるの?」

「……はい。この地域ではウルバスという組織が大々的に仕切っているはずです。みかじめ料、いわゆるプロテクションマネーを得ることにより、法では解決できないことも平気でやる連中です。恐らく、さっきの男もそこの構成員ではないかと、思っています」

「ふーん、逆にお金さえ払えばなんとでもなる、ということ?」

「……はっきりとは言えませんが、さっきの男はそのようでした。それでも、どこの世界にもある程度のバカはいるので、絶対とは言えませんが……」


 そりゃそうか。

 命の危険をかえりみず、危険因子に手を出すのはバカのやることだ。

 危険だとわかっているのに、なぜ手を出す。

 それは……バカだからだろうなぁ。


「それで、その、ワタシのせいで……」

「あぁ、気にしていないから大丈夫。それより、お願いがあるんだけど、いいかな」

「お願い、ですか。もちろん、ワタシに出来ることはなんでもやるつもりですが、出来ることなんて……」


 カレンが少し困った口調で言う。


「うん、その辺の細かいことはあとで説明するからね。とりあえず食べちゃおっか」


 ここの食事はやはりおいしい。

 昨日のご飯もそうだったけど、ランチタイムのこのメニューもおいしい。

 今日は白魚の香草焼きかな。あとはサラダとパン、スープだね。

 カレンを見ると黙々と食べている。

 昨日食べていた感じだと、カレンにとっては量が少ないかな?

 朝ご飯も三人分完食していたし。


「すみませーん」


 手を挙げ、追加注文をする。

 カレンの口元が少し釣り上がったような気がした。

 うん。こうやって暗に好感度を上げて……って、別に他意は無いよ。

 ただの親切心でやっているだけ。

 誰に言い訳するでもなく、追加注文した料理が並べられていく。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「結構食べたな」

「すみません……」


 結局、あのあとも追加注文を続け、ランチタイムのメニューを踏破した。……三人分を。

 食事を済ませ店をあとにする。

 相変わらずいい食べっぷりだった。

 こんな細い身体のどこに入るんだろうか。

 って、言わなくてもわかるよ。

 身体の一部が成長期のようだしね。くそっ。

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