127 魔眼の少女
「あの……ごめんなさい」
「少しは落ち着いたかな?」
あれからしばらくして、やっと落ち着いた頃。
「あなたは一体……?」
「あー、まぁそうなるよねー」
クルクルクルゥ〜。
どう説明したものかと、考えていたらなんか変わった音が鳴ったな。
音の発生源は……この子か。
おや、なんか恥ずかしそうにしているけど……。
あぁ、なるほど。
「……ご飯食べる?」
「…………」
コクリとうなずく。今度は遠慮しなかった。
少しは信頼してくれているのかな。それだと嬉しいな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……結構食べたね。余裕を持って頼んだはずなんだけど」
「ごめんなさい……」
夜も遅くなってきてしまったから、ルームサービスを頼んだ。
決して出かけるのが面倒くさくなったのではない。
まぁ、お金の心配はいらないしね。
それで、足りなかったら困るから、多めに頼んだつもりなんだけど、ペロリと食べてしまった。
よっぽどお腹が減っていたのかなぁ。
「ついでにお風呂も入っちゃおっか。あ、そういえば今はどこに住んでいるの? お家の人とか心配しない?」
「……大丈夫。心配する人はいないです」
「そう? それなら泊まっていかない? いろいろとお話ししたいこともあるからさ」
「…………」
コクリとうなずく少女。
端から見ればいたいけな少女を連れ込んで、よからぬことを企む怪しい人物に……。
いやいやいや、これは人助けだ! 下心がゼロというわけではないが、やましい気持ちなんてない!
まったく説得力が無いが、誰に言い訳するでもなく、そう心に思う。
泊まったホテルはさほど高級なところでもなかったからシャワーだけだった。
まぁ、たまには仕方がないか。
「先にシャワー浴びていいよ。って、そういえば名前聞いてなかったね。私はコトミ・アオツキ、コトミでいいよ」
「あ……ワタシは……カレン」
「ん。よろしくね。じゃあ、カレン、どうぞ」
タオルセットを渡して、シャワールームへと押し込む。
寝間着もちょうどあったから一緒に渡しておいた。
さすがにこのボロボロの服じゃ寝づらいだろうしね。
さて、今のうちにリンちゃんたちへ連絡しておくか。
とりあえずカレンのことは言わなくてもいいかな。どうなるかまだわからないし。
「『無事ホテルについてチェックインしたよ』っと」
遅い時間だしグループチャットで連絡を入れておく。
まだ寝るには早い時間だろうけど、リンちゃんもご両親のことで忙しそうだしね。
連絡したあと、村への行き方とか、明日の天気とかを調べておく。
少ししたらリンちゃんから連絡がきた。
『おつかれ~。元気? 無理しないでね』
「ふふ」
こういう友達がいるだけで、沈みそうな気持ちを支えてくれる。
リンちゃんに出会えて良かったな。
その後もグループチャットで少しだけやりとりを続け、キリのいいところで『おやすみ』と連絡を入れる。
そのまましばらくスマホを弄っていたら、カレンがシャワールームから出てきた。
腰まで伸びた髪はもともとくすんだような色だったけど、シャワーを浴びてからはキレイな銀髪となった。
顔の汚れもキレイに落ちており、火照った顔は幼いながらも妖艶な雰囲気を醸し出していた。
「額の怪我は大丈夫?」
「……はい、少し沁みましたが」
うう……ごめんね。あとでちゃんと治してあげるから……。
とりあえずカレンにドライヤーを渡しておいて、私もシャワーを浴びよう。
説明する前にいろいろと見せちゃうと混乱しちゃうし。
さて、カレンの様子が気になるから、手早くすませちゃおう。
そう思い、いつもより短時間でシャワーを浴び終える。
それにしても、一人でお風呂――今回はシャワーだけど――に入るのも久しぶりだなぁ。
リンちゃんの別荘に行ってからは誰かしらと毎日入っていたし。
たまには一人というのも良いけど、ちょっと静かすぎるかな。
今までは一人で全然平気だったというのに、どんな心境の変化なのか、他に人がいないと、静かというかなんというか、物足りなさを感じるようになってしまった。
まったく、私にも早く帰らなきゃいけない理由ができてしまったな。
「お待たせ――」
「すぅ……すぅ……」
大急ぎで部屋へと戻ると、そこにはドライヤー片手に椅子で眠り落ちるカレンがいた。
――って、寝ちゃったか。いろいろと聞きたいこともあったんだけど。仕方がない。
「今のうちに治しちゃおうか」
意識を集中させ、カレンの額に手を触れる。
痛いままじゃ可哀そうだし、傷も残っちゃうからね。
いつもと同じように治癒魔法を発動させ、痕も残さず完治させる。
「これでよし、っと」
寝ているカレンをそのままにしておくわけにもいかず、とりあえずベッドに押し込む。
子供の割に重かったな。……って、いかんいかん、子供とはいえ女の子なんだから聞かれたら怒られちゃう。
そんな考えを飲み込み、髪を乾かすためドライヤー片手にシャワールームへと戻る。
「ふぁ、私も寝よっかな」
まだ早い時間帯だけど、長旅の疲れか眠くなってきた。
カレンを起こさないようベッドの奥へと押し込み、その隣へ潜り込む。
床で寝させるわけにもいかないしこれぐらいはいいよね。
ふぁ……、うん。おやすみなさい。




