表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/300

116 ファッションショップ

「お姉ちゃん、この服とかお姉ちゃんに似合うんじゃない?」


 ルチアちゃんがアウルの身体に合わせながら服を吟味(ぎんみ)している。

 クレープを食べ終わったあと、リンちゃんに案内されやってきたのは街のファッションショップ。

 以前リンちゃんと買い物に来た甘ったるい店の数件隣にある普通の店だった。


「……私もこういうのでいいんだけどなぁ」


 手に取ったのは無難な白のブラウス。

 どこにでもあるような服で、可も無く不可も無く普通の服だった。


「コトミにはちゃんと用意してあるからね」


 ニッコリと私の肩越しに微笑むリンちゃん。


「…………」


 有無を言わせぬそのセリフに、小さくないため息をつく。


「ルチアのその服、少しおとなしめじゃない?」

「わたしはこのくらいでちょうどいいよ。お姉ちゃんみたいに目立ちたくないし」

「……私もそんなに目立ってないからね?」


 姉妹のとりとめないやり取りに耳を傾けながら店内を見て回る。

 いろいろな街に出店しているこの店は、安定の価格と品揃えを有している。

 アルセタにいたときにはよく利用したこともあり、見覚えのある服が何着もディスプレイされていた。

 客層としては中堅層向けが多いかな?

 高くもなく安くもない、ほどよい価格帯が人気の秘密でもある。


「あ、コトミの下着も用意してあるからね」

「…………」


 肌着コーナーを通ったときに後ろからそんな声をかけられる。

 手持ちぶさただからか、私に付いてきたリンちゃん。

 護衛がいないけど大丈夫か?  と、思ったけど、私も護衛みたいなものか……。

 夜のことを考えると少々気が沈むが、落ち込んでいるわけにもいかず、アウルたちの所に戻る。

 アウルたちは……あそこか。

 声のする方に向かって歩いていくとフィッティングルームがあった。


「ルチア、この服どうかな?」

「んー、いいんだけど、スカート短くない? 見えそうだよ」

「わひゃ。め、めくんないでよ。あまり長いと動きづらいんだよ」

「うーん、まぁ気を付けていれば大丈夫かな」


 仲良さそうだね。


「二人とも似合っているよ」


 アウルは膝丈程度のスカートに無地のブラウス。

 ルチアちゃんは足首まで隠れるスカート……というよりワンピースにカーディガンを羽織っている。


「アウルはまだしも、ルチアちゃんは暑くない?」

「大丈夫ですよ。スカート生地は厚いですけど、上の方は涼しい素材でできていますから」


 へー、よくできているね。

 ぱっと見ワンピースに見えないのはそのせいか。


「コトミさんは買わないのですか?」

「……うん、大丈夫……」


 ニコニコしているリンちゃんにゲンナリしながらもそう返す。

 アウルは首を傾げていてよくわかっていないようだが、ルチアちゃんは理解したのか微妙な笑顔を浮かべている。

 うぅ……。哀れまないで……。

 その後、二人の肌着も数種類選んで購入。

 かなりの量になったけど店員さんのご好意で届けてもらえることとなった。

 後ろ盾(リンちゃん)がいると、いろいろと楽だなぁ。


「その分、ワタシもコトミを利用させてもらうからね」

「…………」


 笑顔で放たれたその言葉に不穏な空気を感じながらも四人揃って帰路につく。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「あ、ついでにもう一件寄っていかない?」


 帰る最中、リンちゃんからそう声がかかる。


「ん? いいけど、どこに寄るの?」

「んふふ〜、こっち、こっち」


 楽しそうに人混みをかき分けながら進んでいくリンちゃん。

 おーい、護衛を置いていっちゃだめでしょー。

 まぁ、目の届く範囲にいるし、日中堂々と手を出すやつはいないか。

 そのままリンちゃんのあとを追いかけるようにして付いて行く。


「ここだよ〜」


 リンちゃんに案内され着いたところは――。


「……水着?」

「そだよー。コトミ、海行きたいって言っていたじゃん」


 いや、行きたいとは言ったけど、泳ぎたいとは言ってないんだけど……。

 それに、あまり人目につく場所じゃちょっと都合が悪い。


「少し遠いけど、ペルシェール家のプライベートビーチがあるから、そこに行こうね」


 ……さすがお金持ち。


「さささ、とりあえずお店に入るよ」

「ちょ、ちょっと、押さないでよ」


 有無を言わせず店の中へと連れ込まれる。




「このあたりが子供サイズの売り場だね。コトミにはこれが似合うと思うんだけど」

「……いきなりすぎるんだけど。それに、それはちょっと肌を見せすぎ」


 リンちゃんの持っている水着は上下分かれているセパレートタイプの布地が少ない水着だった。ムリ。

 なぜにそういう水着を選ぶのか。

 本当に着てほしいならちゃんと選べばいいのに。

 ふくれっ面になっているリンちゃんを放置し店内を見回す。

 水着専門店ということもあり、若い女性客が多い。

 むぅ……あれだけのスタイルがあれば、水着を選ぶのも楽しいんだろうけどなぁ。

 少し離れているところの女性グループへ目をやり、心の中でそう思う。


「水着を買うとか初めてなんだけど、どう選べばいいのかな……」

「お姉ちゃんは動きやすいのがいいんじゃないの? こういうショーパンスタイルの水着もあるよ」


 二人は気にもとめず楽しそうに選んでいる。

 片方はお子様だし、もう片方は単純代表だしな。


「なぜかコトミから(さげす)まれているような気が……」


 うっさい。

 反対側のリンちゃんはぶつぶつ言いながら水着を選んでいる。

 うーん、リンちゃんに任せていたら、どんなものを選ばれるかわかったもんじゃない。

 はぁ、気乗りしないけど自分で選ぶか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ