⑥
ドアが開いて“本店”に呼び出されていたボスが戻って来たので、皆一斉に腰を浮かせた。
それを手で制したボスはドカッ!と椅子に腰を下して煙草をくわえた。
すかさずタニさんがマッチを擦って火を点ける。
「どうでした?」
ボスはタバコをくゆらせながら話を切り出す。
「このヤマは“本店”に捜査本部を置く事となった。50人態勢でな」
「ではウチからは誰が…」とチョーさん
するとボスはオレを一瞥した。
よしっ!!とオレは内心ガッツポーズを取る。
「捜査妨害するような“所轄”の助けは要らないらしい」
「何ですって!! 捜査妨害したのはヤツらです!! 一体どういう事ですか!!??」
とオレは気色ばんだ。
しかしボスはオレをグッと睨む。
「そういう事だ」
怒りに震えるオレの肩をムリさんが後ろから抑える。
「なあ、チノパン! 白黒は“本店”が決めるんだ。上意下達ってヤツだ。その時点で所轄は捜査情報をすべて“本店”へ報告する。速やかに且つ正確にな。ぼやぼやしているヒマはねえぞ!!」
そう言って白紙の報告書をどっさりと渡された。
カリカリしているオレの扱いはムリさんに任せて、ボスはタニさんに声を掛ける。
「ところでな、タニさん! その席で“サメさん”を見かけたんだ。こちらの視線に気が付くと、スッと姿を消したんだが」
「サメさんって…鮫島警視ですか? 確か今は…『NPA』のガイジにいらっしゃるのでは?」
「ガイジ? まさか赤軍ですか?」とムリさん
「ああ、確かにサメさんは今、ガイジだが…赤軍がらみとも思えん」とボス。
「ボス、私もそう思います。彼らは“武装闘争”をもって事を成そうとする輩です。やはり『ヤリ口』が違います。」とタニさん。
これらのやり取りの意味を解せず、オレは鳥さんにこそっと聞いてみる。
「鮫島警視って?」
「城北署時代のボスや幸さんの上司だ。キャリアだがアウトローな人で…そのあたりもボスとは馬が合う…」
「ボスってキャリアなんですか?」
「ああ、本来ならこの年次で所轄の警部にとどまっている人じゃないさ。そもそも警部なのに係長なのは…ひとえにオレたちのケツを拭いてるから! そう、今日のお前もそれをボスにやらせているんだ」
「…スミマセン」
「謝る相手が違うし、ボスに謝ったら却ってドヤされるぞ!『謝るような信念を持たない行動はするな!』ってな」
しかしこれが本当に“信念を持った行動”なのだろうか?…
気が付くと皆、自分の机に向かって報告書を書き始めている。
オレは釈然としない思いを抱えながら白紙の束をバサリ!と机の上に置いた。
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一人居居残りで四苦八苦して報告書を仕上げ、椅子を4つ並べて毛布に包まり、しばし仮眠を取っていると
「おい!起きろ!!」.
と刑事部屋に飛び込んで来たムリさんの声で目が覚めた。
「見てみろ!」
と渡された朝刊のトップには大きく
『深夜の銃撃戦 土川組組長死亡!! 抗争は更に激化か?!』
との見出しが!!
「なんじゃこりゃあ!!」
とオレは叫んでいた。
このお話を書くに当たって昭和の刑事ドラマを何本か観ました。
少しは馴染めたかなあ…
刑事ドラマのファンの方々から怒られないよう頑張ります(^^;)
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