①
昨日書いた短編を発展させました。
真面目に書きます!!
調べながらなるだけ当時の刑事ドラマっぽく書いてみようと思います。
ドゴン!と頭を蹴とばされて…
「あ、流しの食器!!」と身を起こす。
しかし周りは別世界!!
オトコの部屋??!!
私はぐちゃぐちゃの髪をバリボリして…ぐちゃぐちゃの記憶をガサガサ探す…
と、香ばし過ぎる香りが…
「チノパン!! トースター頼む!!」
えっ?えっ?と身を起こし、何とか香りの元に辿り着いたが、このトースター! 扱い方が??
すると後ろから伸びてきた男の手が黒のレバーをガコン!と殴り、きつね色を越して黒ずみかけた食パンが2枚、ポン!と跳ねた。
「目、覚めたか?」
私は記憶から名前を引っ張り出す。
「おはようございます。ムリさん…」言いながら私は大きく欠伸をする。
これは演技!
地でない!!
多分…
ムリさんは苦笑いしながら“布団無しこたつ”(この辺、親近感が湧く)の上に柄の違うカップを置き、シュンシュン湯気を吹いているやかんのお湯を注ぐ。
インスタントコーヒーが、焼き過ぎのトーストと相まって…いい香りだ。
「それ食ったら出勤前に朝めし行くぞ!」
「ウィッス!」
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『幸吉』と書かれた暖簾は、まだ内側に掛かっていたが…ムリさんは引き戸をガラガラと開けて中に入る。
私は…自分の今の身長を忘れて建具にゴツン!と頭をぶつける。
「オイオイ大丈夫かい!」
“仕込み”の美味しそうな匂いとガラガラ声に迎えられて私は中に入った。
「こいつ、昨日から入った新人で柴門! あだ名はチノパンです! ほらっ!オヤジさんに挨拶しな!」
「柴門です…よろしくお願いします。」
このオヤジさん顔のパーツがみんな大きくて…人懐っこい笑顔の裏に鋭い視線を隠し持っている。
「オヤジさんは…昔…ボスの城北署時代の同僚で敏腕刑事だった方だ」
「ムリさん! 昔の事は言いっこなしだぜ! 俺はもう警察には愛想が尽きたんだ。しかし暢子がお前さんたちの同僚になっちまったから、仕方なくお前さんたちの為に時間外をやってるだけだ!」
「カモちゃんは?」
「ん? 出勤前の化粧! 仕込みを手伝っていると間がなくなるから先に済ませておくんだと!」
うっ!! かもちゃんとやら…エライ!! 耳が痛い!!
私は…
化粧しなくても良いのをいい事に…今日も髪すら梳かしていない…
なんて能天気に考えているとムリさんからこんな事を言われる。
「チノパン! 髭くらい剃れよ! チョーさんあたりからどやされっぞ!」
うっ!!
オトコには髭剃りという儀式があったんだ!!
「T字カミソリ1個やるから署に着いたら剃っとけ!」
「ああ、それなら俺のをやるから暢子に言いな! ちょうど今、洗面台に居るだろ! 靴脱いで上がんな! あ、手は出すなよ!!」
中へ上がって洗面台に行ってみるとポニテの…私より若い?女性がエプロンを被っているところだった。
「あなた、チノパンくんね。お父さんとムリさんの声がここまで聞こえてたわ」
「あの…カモ…さん…ですか?」
「いやだわ!ムリさんって!! 私、暢子というのだけど…字が…鳥の“鴨”に似てるでしょ? ムリさん、最初読み間違えて…それが私のあだ名になったの」
「はは、ムリさんらしいっす。じゃあ、暢子さんとお呼びしますか?」
「もう、どっちでもいいわよ」
「そうですね。暢子さんには鴨のようなしなやかな美しさがある」
「ええ?それって褒められているのかしら?」
確かにそうだ。この人は和風の美人さんで…所作が…キビキビとした俊敏さをおっとりとした柔らかさで包んでいる感じなのだ。
「これ、お父さんのだけど新品だから…チノパンくん、T字カミソリは?」
男の髭剃りなんて経験した事の無い私は
「オレは電気なんで…」とごまかす。
「そう…じゃ顔を洗って…ちょっと待ってて」
“オレ”が洗い終わった顔をタオルで拭いていると…戻って来た暢子さんは蒸しタオルをオレの顔に当て…しばらくしてから泡立てたシャボン?を摺り込んで慣れた手つきでスイーッ!スイーッ!と剃ってくれた。
う~ん!いかにも世話女房タイプ!! こりゃ署のアイドルに違いない!!
「暢子さんは…“オレ”達の同僚なんですか?」
この時代の化粧品の匂いなのだろうか…“オレ”の髭を剃りながら暢子さんはふんわりとした香りを立たせている。
「ええ、所属は生活安全課なの」
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「最初に右手で握り次に左手の手のひらの下側をグリップに密着させて右手と同じようにフレームの上の方を握る。
オレの好みなんだが…体は目標に対して正面を向き、右腕を伸ばして左肘を軽く曲げる」
「やってみます」
グリップを両手で握り直し…言われた通りの姿勢で標的に拳銃を向け、息を止めてトリガーを引く。
ドン!と言う音と共に腕に衝撃が掛かるが、さっきより全然安定していて…初めて標的の“8”枠に弾が当たった。
二人、ごついヘッドフォンみたいなイヤーマフを外す。
「やるじゃねえか チノパン」
「射撃の名手、ムリさんのご指導のたまものです。」
「いやいや、この短期間で大したもんだよ! お前、必死だったからな」とムリさんから肩をどやされた。
「ええ、『もし実際に銃を使うことになったら』と考えると怖くて…必死でした」
「うん、そうだな…オレも禁忌を犯す事は止めて今は常に弾込めしてるよ」
日頃は拳銃に弾を込めないムリさんが弾込めをする状況…
今、淀橋署管内には不穏な事件が勃発していた…
1話限りでなるだけ長くはしたくないのですが…
少なくとも連載になります(^^;)
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