8 薬草集め
小説のなかで、主人公の妹のトモエと父親の妻の1人であるカグヤの名前を取り違えるミスをしていました。一応修正していますが、見落としなどあれば報告していただけると幸いです。
父上が旅立った日に、再び年長組で薬草を取りに出かける。今度は図鑑を持ち出して葉っぱの形をよく調べながら採取する。
「フィオナちゃ~ん、あんまり森の奥にいくと魔物に見つかるよ~」
フィオナはそんな声を知ってか知らずか森の方へとずんずん歩いて行く。
「レオン、なにかフィオナの気に触ること言いましたか?」
ジョセフィンが小さなナイフで薬草の根っこを掘り起こしながら聞いてきた。
「ああ、フィオナには後衛の護衛をお願いしたかったんだけどね、お願いしたら断られた。」
「はあー、メリナ母上に何教わってんですか、もっと女心とやらを学ばないとだめですよ。フィオナちゃんは人一倍繊細なんですから。それに…」
ジョセフィンがいいかけて辞める。おそらくその後にはフィオナが魔法を使えないということを言おうとしたのだろう。だが年長組の中でも一番の魔法の使い手だけに自分でそれを言うのがためらわれたのだ。
「ん」
「フィオナはね、城の奥で守られてるお姫様やるつもりはないんだよね。レオン兄は良かれと思ってフィオナに後衛の守りをお願いしたんだろうけどね、フィオナは前線で戦いたいんだよ。」
「だよなあ…。後衛の守りはめっちゃ大事なんだけどね」
「そうかい?、私とゾーイなら二人でもなんとかなると思うけどね。」
「バカいえ、ゾーイもお前も剣の腕はからっきしじゃないか。そこらのチンピラには負けないだろうけどね。」
「ま、ともかくフィオナは外しなよ、フィオナは中衛も嫌がると思うから前衛に組み込むしかないんじゃないか?」
「怪我してほしくはないんだけどね。」
「おや、フィオナにはずいぶん甘いじゃないか、他の妹たちにも同様に甘くしてくれてもバチはあたらないよ。」
「父上がずいぶん甘やかしているじゃないか。甘すぎると父上のいってた”トウニョウビョウ”になるぞ。」
おそらく甘やかされて育った子供がなる病気なのだろう。
「兄上は父上のあとは継ぐのだろう?だったらこれくらいは人を動かすためと割り切らなきゃ」
ジョセフィンが冗談めかして笑い、別の場所にある薬草を探しにいった。ずいぶん分散してしまったな。そろそろお昼にしようか、屋敷の料理人が持たせてくれた弁当がある。
(ずいぶん甘やかされているこって、この分だと兄弟全員”トウニョウビョウ”じゃ)
飯を食べようと腰を上げたところで農民の悲鳴が聞こえてきた。悲鳴と絶叫。
「魔物じゃー。はぐれモンスターがでたぞー」
真っ先にフィオナが飛び出す。一番離れていたのにどうして一番反応が早いんだろう。だが好都合でもある。フィオナでもゴブリン一匹くらいならたやすく倒せるだろう。
(これで自信を付けてくれればフィオナの意地っ張りも治るかもね、もしかしたらメリナ母上との仲も好転するかもしれない。最近よそよそしかったし)
残りの兄弟をまとめて悲鳴の上がる方へと急いでいると、遠すぎて聞こえなかった声がはっきりと聞こえてきた。
「ありゃあミノタウロスじゃ!!!」
ミノタウロスとは牛の頭を持った人間のような魔物で体調3メートルから4メートル、体表は固くて修練の甘い魔法ではなかなか致命傷を与えられない。村を襲っていたミノタウロスは体調4メートルにもなろう大物だった。”ボウケンシャ”ギルドではランクBに数えられる。
「女子供は逃げろ逃げろ!、あとは時間を稼げ!」
村長らしき人が大声を張り上げる。ミノタウロスは筋肉が豊富で力は強いが、デカさに反比例して動きはのろい。あのデカさで俊敏だったらどう倒せばいいのか。
見ればミノタウロスは全裸に腰布だけという格好をしていて人間の身長以上もありそうな巨大な斧を振り回して家々を破壊していた。ミノタウロスの、牛そのものの顔が太陽にきらりと反射する。
「村長、村長!」
男をまとめて必死にミノタウロスを威嚇している村長に声をかけると、村長はお世継ぎ様!と嬉しそうに返してきた。男たちの間でも少しだけ緊張がほぐれていく。
(意外と立場ってものが人に及ぼす影響って大きいんだな…)
「村長、威嚇しながら逃げろ。こんな武器じゃあ斧の一撃で全滅しかねないぞ」
村人たちは農業で使っているのであろう鋤や鍬をもって並んでいるが、斧の一撃を加えられれば大惨事を免れかねない。
「俺たちが援護するから少しずつ離れるんだ。それから足の早いやつを”ボウケンシャ”ギルドによこせ。命あっての物種だぞ。」
「しかしお世継ぎ様。ここは我らが勇者様と一緒になって開拓した村、そう安々と逃げ出すわけには…」
「阿呆!ここで全滅したら誰が畑を耕すんだッ」
思わず声を上げてしまった。それに気付いたミノタウロスが村人たちの方に斧を振り上げる。
危ない!と声を上げる前にミノタウロスの脇の民家から弓がビシッと飛んできた。硬い頭蓋骨にあたって、ベシッと音を立てて弾かれた。
「テレサ!」
見ればテレサが民家の上に昇ってミノタウロスに向けて弓を放っていた。どうやら風魔法で自分を運んだらしい。ミノタウロスは集団で棒を振り回している奴らより柔らかそうなお肉を見つけて突進してきた。
「おい、お前ら」
年長組は言わなくてもわかっていますと言わんばかりにうなずいた。領民を守るのが領主とその一族の役目なのだ。今まで散々家族に言い聞かされてきたのだから。
カグヤなんて覚えやすい名前をつけるんじゃなかったです。でも娘の名前がトモエなのは理由があるので帰るつもりはないです。
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