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2 母親たち

「レオン(自分の名前)よ、子どもたちよ、授業を真面目に受けていないそうだな、先生がたが嘆いておったぞ」


夕食の席で父親に叱られる年長組一同、長いテーブルを組み合わせてなるべく多くの妻と子どもたちが座り顔を合わせるように工夫しているのでうなだれる兄弟達の顔が見える。


「しかし父上、毎度の如く父上と母上がたののろけ話を聞かされる身にもなってください。」


たまらず上げた抗議の声に父の近くで上品に食事を食べている母上達が一様に顔を赤く染める。そこ、照れるところではない。


父の右隣には血の繋がった母、エミリアが白い騎士服を着、頭にティアラを被って座っている。見事な金髪碧眼で身長は一六〇センチ程度、鍛えられた肢体はメリハリが利いておりスタイルはいい。


かみ女ながら若くして戦場を駆け回り、剣聖とまで称された女騎士で、父は初めて出会ったときに『姫騎士じゃん!』とかいったらしい。いい加減にしろ


母エミリアの父は前のニーベル辺境伯、エミリアの母は先の国王の王妹だったので今の国王の従姉妹にあたり、娘のいない先の国王陛下の密命”勇者タローを王国に縛り付ける”を受けて嫁いできた。


勇者タローが辺境伯として公式に地位を認められ、反対派貴族が難癖をつけられないのは母の血も大きい、父が異世界転生なるものをしたときにはすでにニーベル辺境伯家は、一族が母を除いて全滅していたのだから。


それでも父への愛は本物で、騎士団や領軍をしごいたり、領地開拓はできても政治外交ができない父を補佐して毎日忙しくしている。のだが現在、新しく子供を授かったとのことで一旦役目を退いて胎育に専念している。


父の左隣には先の聖女が座っている。名前をリアという、聖女の役目はとっくの昔に他の物に譲ったが、白と黒を基調とする修道服を身にまとっており、そのお腹は不自然に膨らんでいる。妊娠7ヶ月なのだ。


聖女は純潔でなければ役目を果たせないのとされているのだが、それでも父とともに生きることを選んだ。


元とは言え聖女であるという名声は大きく、外交や宮廷での立ち回り、ニーベル領内の教会内部のまとめ上げをするとともに、福祉を担当している。


このリア母上も金髪碧眼で胸と尻はエミリア母上よりも大きい一方背は低い。エミリア母上はリア母上を『大きくていいな』と羨み、リア母上はエミリア母上を『スタイルが良くていいな』と羨む。


リア母上は妊娠していないときはわずかにつまめるお腹の肉のことを気にしているのだ。あれに関しては腹筋が割れていてつまめる余地がないエミリア母上のほうがおかしくてリア母上はむしろ普通だ。


母エミリアの右隣には大賢者にして大魔女ルイーザが魔女帽を被って食事を頬張っている。数百年は生きているという魔女は母上がたの中でも一番若く見える顔立ちで、自分よりも年下の12歳と言われても納得できる。


青い目にこの近くでは珍しい黒い髪(太古の昔に滅亡した遊牧民族の血を引いているらしい、父上が最初に現れたときはそこの末裔だと思われたそうだ)を持ち、胸や尻は…。何も言うまい


だがそのお腹は…例にもれず大きく膨らんでおり、動くのが辛そうだ。臨月なのだから。


以上3人が父の勇者パーティでルイーザも例にもれず父の”はーれむ”なるものの一員であり、領内で教育を担当している。妊娠と出産で度々中断しているが…


リアの左隣には前の魔王の娘で人質兼父上の妻のハンナが生まれたばかりの赤子を抱いている。ハンナ母上は魔族なのだが、魔族といっても人とあまり変わらず背中から羽が、頭から角が生えている他は人間と大差ない。


父上は初めてあったとき『”さきゅばす”じゃん!』と歓喜の声を上げたらしい。歓喜の声を上げるところではない。それに”さきゅばす”とは何なのだ?


黒い髪と赤い目を持ち、その肢体は…大変にわがままです。背は一六五とかなり高い。


ハンナ母上は魔王の娘で、ハンナ母上の母の父は魔族四天王の一人だったのだが、双方父上に討ち取られ、ハンナ母上の母もその前に病死していたため魔王の後妻とその子供達に疎まれ、半ば追放される形で父のもとにやってきた。


父も父で生来のお人好しのところを見せ、死刑にしろという声の多かった貴族を(物理的に)黙らせ、ついには妻に迎えてしまった。今は魔族との仲介を担当している。


ルイーザ母上の隣にはカグヤ母上が座っている。つわりがひどいらしく食欲がなさそうだ。

魔族に支配されていたホーライ諸島の王の娘で、王が父上の”はーれむ”メンバーを見て娘を差し出してきたのが始まりだそうだ。父上は『”ヤマトナデシコ”じゃん』と大喜びした。


カグヤ母上は公式には役目はないが、父上の冒険記や伝記を忙しい他の母上に代わって書いており、そこに他の母上がたが(愛しい人は格好良く見える!)とばかりに話を盛り始めるので、子どもたちが難儀している元凶である。


黒目黒髪をもち、背は一五〇センチとかなり低い、体格はそこそこで単という着物を着ているため目立たない。


ハンナ母上の左にマリー母上が鎮座している。父上が王国の北方にあるワブロワナ帝国に支援を求めに行ったときに知り合ったらしく。ワブロワナ帝国公使兼父上の妻を努めており、他の母上がたが詳しくない帝国や北方の情勢を知らせてくれる。


他国の貴族の妻となり、度々妊娠して任務を中断する公使など失格だと思うがあくまで方便なのだろう。一年前に子供を出産していらい父上と妊活に励んでいる。まだ産ませるつもりか…


マリー母上は青い目に青い髪を持っている。体格はかなり大きく一七〇センチよりは下だがハンナ母上よりは大きい


本来なら公使として王都にいなければならないのだが、父が寂しがりゲート魔法を扉に付与することで領都から王都へとすぐに行けるようにしている。このことを聞いたときにマリー母上に3時間のろけられた子どもたちの気持ちを察してほしい。


マリー母上の左にマチルダ母上が大きなお腹をさすっている。見事なプラチナブロンドと長い、とんがった耳はエルフの一族の証である。


ニーベル辺境伯領から南西、王都から見て南にあるエルフの森の王女の一人で、母上が魔族の呪いに侵されていたときにエルフの聖樹から取れるエリクサーともらいに行くときに出会ったらしい。


この話を聞いたとき、エミリア母上とマチルダ母上の惚気話を一晩中聞かされた。


マチルダ母上は父上が創設した”ボウケンシャ”ギルドなるものを管理運営している。この”ボウケンシャ”なるものになると領内で魔物を狩る権利と義務が与えられる。


かつて父上がこの世界にやってきたとき”ボウケンシャ”ギルドなるものが存在しなかったために残念がっており、その事もあって”ボウケンシャ”という職業を父上が創設することとなったのだ。


きっと父上がいた世界も魔物がたくさんいたに違いない。父上がよく言う”かろーら”とか”ぷりうす”のような魔物を狩っていたのだろうか?


カグヤ母上の右。父上と母上がたが座っている長机の一番右にメリナ母上が座っている。腹は膨らんでいない…。


メリナ母上はニーベル辺境伯領の南にあるロウホワ都市国家連合の元娼婦で、魔族大陸に向かう船を調達する際に出会ったとのことである。


娼婦だからと遠慮するメリナ母上を父上(と言うより母上がた)が口説き落として身請けして連れてきたのだ。どうやら勇者パーティに自分の身を顧みずに情報を流し、殺されそうになるところを父上が助けたらしい。


メリナ母上は父上のハーレム管理と子どもたちの教育や乳母ぎめを担当しており、自分も含め兄弟姉妹は忙しい実の母に変わって、自分の子もそうでない子も分け隔てなく接してくれるメリナ母上にいつも感謝している。母上がたが嫉妬によるつかみ合いを行ったりしないのもメリナ母上の努力が大きい。


身長は一六〇ほどだが体は一番わがままで、それだけでなく均整が完全に取れている。暗めの金髪に青い目は民族が入り乱れる貿易国家の出身ゆえか。


以上が父上が辺境伯になる前に出会って結婚した母上がたで、実は父上の”はーれむ”メンバーはこの3倍おり、父上が座っている机とは別の机で食事を食べている。あちこちの王侯貴族が差し出してきた娘達だ…。


そして総人数すらもわからない子どもたちがテーブルに年齢別に座っている。まだ生まれたばかりの幼い兄弟達は実の母が抱いているか、乳母が隣で食事を取らせている。


「しかしなあ、(よくは覚えていないが)真実だからなあ」


父親が無表情で惚気始める。自覚がないだけなおさらタチが悪い。


「我々年長組(一番最初の年に生まれた子供)はもはや15です。いつまでも両親の惚気を聞いているわけには行きません。」


「小さい頃はあんなに『お父様すごい!』といってくれたのに」


「昔は昔です!」


とんでもない黒歴史だ。思い出したくもない。


「そうか、もうそんな歳か…。いつまでも子供と思っていたのにな…。私がこの世界に来たのも15の年だった。頃合いだろう、レオン。お前は兄弟を連れて”ボウケンシャ”になるのだ。」

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