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タイムトラベル空港 〜オーパーツの持ち込みは禁止です〜

作者: 矢本多和

 私はキャリーケースを引きながら、足早に保安検査のゲートに向かう。



 人生で何度目かの寝坊。

 旅慣れているから――そんな(おご)りが災いしたのだろうか。

 この旅は私にとって、初めての体験だというのに。



 羽田空港第四ターミナル。通称、タイムトラベル空港。

 それは今年の春から始まった。


 言葉の通り、()()()()()に行き来ができる。

 信じ難い技術だが、今やこれが旅行産業になっているというのだから驚きである。

 


 かねてより旅行好きな私だが、ここ数年は休みを取る事も叶わなかった。

 そんな職場に嫌気がさし、転職先が決まった事を機に、この旅行を決行したのだ。




 気ままな一人旅。

 他人に気を遣わなくて済むこのスタイルが私流。

 荷物だって必要最低限でいい。


 相棒とも言える小さなキャリーケースを手荷物検査用のカゴに乗せてゲートをくぐる。

 しかし、すぐに空港職員の男性に呼び止められてしまう。



「申し訳ございません。スマートフォンの持ち込みは禁止されています」


「え? 機内モードにしますけど……」



「いえ。お客様の向かわれる昭和三十年代頃には、スマートフォンは行き過ぎた産物――オーパーツと呼ばれる物に該当します。

 時代にそぐわない物品の持ち込みは()()()()()()()()()恐れがあるので、一切の持ち込みが禁じられています」



 ……なるほど。

 確かに今回は、下調べが足りなかったと思う。

 それでも、彼の言葉に自然と湧き上がった疑問をぶつけてみる。



「それを言ったら、ここまで洗練されたキャリーケースだって、当時はまだ無いでしょう?

 他にも服から何から、一般的な旅行グッズは全部、オーパーツに該当するんじゃないですか?」



 すると彼は小さく笑い、肩を(すく)めた。


「なにをご冗談を。

 そんな事を言ってしまったら、このタイムトラベル旅行というコンテンツ自体が破綻してしまうではないですか」



 なんだその逆説的な理論は。

 私は呆れながらも、隣のゲートを指差した。


「隣はスマートフォンを持ち込めているみたいだけど。

 あちらは過去行きではないの?」



 私は知っている。

 先程隣のゲートを通過した家族が『過去に行くのは初めて』と会話していたのを。


 彼は再び小さく笑う。



「あちらは過去は過去でも()()()()()()――人類が最初に栄えた時代じゃないですか。

 あの時代は既にスマートフォンが存在していたので大丈夫ですよ」



 そうだっけ?

 ……なんだか、私が知っている歴史と違う気がするけれど。

 こんな事ならきちんと歴史を勉強しておくんだったな。



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― 新着の感想 ―
[一言] タイムトラベルと言う概念を改めて考えました。 昭和三十年代なら電波も整備されて無いし許して下さいよー、なんて思いましたけどアプリとか考えると確かにオーパーツですねw タイムトラブルが成立し…
[一言] およよ?なんか不思議な感じで終わった! なんか気になる!(^ω^;) 続き気になる!!プリーズ(^ω^;)
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