第79話 合わない人
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「なんなのあの人!」
ギルドからの帰り道、俺の頭はさっき会ったライアのことでいっぱいだった。
あの人がレイヴェルの姉弟子とか、事実だとしても認めたくないくらいに腹が立つ。
っていうか、あいつ姉弟子って言う時若干こっちに勝ち誇ったような目を向けてきてたし。
あぁダメだ。なんか癪に障る。ムカつく。
久しぶりにあった合わないタイプの人間だ。
「クロエどうどう」
「私馬じゃない!」
「いや、とりあえず落ち着けってことだ。さっきから周りの人が何事かって目で見てるから」
「え……ぁ」
レイヴェルに言われて周囲を見渡してみれば、確かにオレのことを何事かって目で見てた。怖がってる人もいる。
え、オレそんなに怖い顔してたのか?
「ご、ごめん……で、でもさ。やっぱりムカつくよさっきのあの態度は」
「うーん、まぁ確かにお前からしたらそうかもしれないけど……」
やっぱりなんか歯切れが悪い。
まぁレイヴェルからしたら姉弟子っていう立場の人だし、少し複雑なのかもしれない。
「ライアさんは普段から確かに厳しい人だ。でもあんな言い方をするような人じゃないんだけどなぁ」
「だったらなおさらムカつくんだけど。なんであの人は私のことをあんなに目の敵にするの?」
「それを俺に聞かれてもなぁ。まぁ確かに昔から魔剣が嫌いな人ではあったんだけど。だからクロエにあんなにきつく当たるのかもしれない」
「……まぁ、魔剣だからって理由で嫌われるのは昔から何度もあったけど……」
でも、なんとなくだけどあのライアの俺への態度はただ嫌いってだけじゃない気がする。
もっと他の……うまく言えないけど、何か別の理由があるような……。
「……ねぇ、レイヴェルから見てあのライアってどういう人なの?」
「どうって言われてもなぁ……そうだなぁ。安直な言い方になるけど憧れの人て感じか?」
「憧れの人……」
やっぱりそうなんだ。
レイヴェルの態度見てなんとなくわかってはいたことだけど……。
なんでかわからないけど、胸の奥がキュッとなる。
「クロエ? どうした?」
「……ううん、なんでもない」
「ならいいけど。ライアさんはさ、俺がイグニドさんに保護してもらった時にはもうイグニドさんの弟子だったわけなんだけど。もうその頃からすっげぇ強さでな。俺と二つしか離れてないのに、バンバン魔物倒して冒険者として名を上げてた。姉弟子とは言うけど、俺にとってはイグニドさんに続いてもう一人の師匠って感じだな。色々と面倒みてもらったよ。俺に剣の心構えを教えてくれたのもあの人だ」
「そうなんだ……じゃあ結構付き合い長いんだね」
「あぁ、そうだな。あの人強さってマジで化け物じみてるっていうか。たぶんっていうか……俺が世界で一番強いと思う人だ。イグニドさんも言ってた。『こいつの実力はもうすでにアタシを超えてる』ってな」
「えぇ!? あのイグニドさんの実力を超えてるの!?」
それはマジで予想外なんだけど。
オレだってイグニドさんの実力を全部知ってるわけじゃないけど、でもあの人が人外じみた力を持ってるのは知ってる。
だって、あの人の炎はオレに……魔剣に届くほどの炎だ。
つまり、つまりだ。あのライアって奴の剣は魔剣に届く可能性があるってことだ。
超越者……人の身でありながら人を超えた存在。
そんな雰囲気はある人だったけど……。
「なんで急に難しい顔してんだよ」
「別になんでもないけど……ねぇレイヴェル」
「ん? なんだよ」
「あの人と私どっちが大事?」
「はぁ!?」
「ねぇどっち?」
「いや、あの、それはだな……」
ふっふっふ。困ってる困ってる。
これぞ男が聞かれて困ることTOP10に入るであろう『私と仕事どっちが大事なの!』だ。
まぁオレは彼女なんていたことないからそんなこと言われたことないんだけど……って、あれだ。別にオレがレイヴェルの彼女とかそういうことを言ってるわけじゃない。
オレはあくまでレイヴェルの相棒。相棒ってだけだから。それ以上でもそれ以下でもない。
ないったらない!!
……誰に言い訳してるんだオレは。はぁ。
「どっちが大事とか聞かれても……ライアさんもクロエも俺なんかには勿体ないくらいの人だし……」
ちょっと困らせてやろうと思ってした質問だったけど、ちょっと意地悪過ぎたか。
うん、それにこの反応を見る限りレイヴェルが女慣れしてるってことはなさそうだ。
綺麗な女の人ばっかりだからちょっとだけ心配したけどその必要はなかったかもしれないな。
これでもし『お前の方が大事だよ(キラリ)』とか言われたりしたらドン引きだ。
契約の解消を考えるレベルだ。いや、さすがに嘘だけど。
でもレイヴェルが女慣れしてるってのはなんか違うし。こっちの勝手な印象だけど。
「ふふ、冗談だよレイヴェル。本気でそんなこと聞くはずないでしょ」
「じょ、冗談? おまえ、あのなぁ……」
「本気で考えてくれたのは嬉しいけど、そこはすぐにクロエの方が大事だって言ってくれた方が私は嬉しいけど」
「そんな歯の浮くようなセリフ言えるか!」
「チッチッチ。何事も練習。経験だよレイヴェル。その……ほら、もしこの先レイヴェルに気になる人ができた時のためにもさ」
「気になる人ねぇ……そんな機会が俺にあるかどうか。それに、この面だからなぁ」
「確かにレイヴェルはちょっと目つきが悪いけど、でもでも良い所はいっぱいあるわけだし。目つきは悪いけど」
「目つきが悪いって二回言うなよ」
「ご、ごめんごめん……でも本当にそう思ってるよ? レイヴェルには良い所もいっぱいあるんだから」
まさに今日、レイヴェルがライアに向かって言ってくれた言葉。
『クロエは誰かを破滅させるような奴じゃない。俺はそう信じてます』
あの言葉がオレにとってどれだけ嬉しかったか。そして救いになったか。きっとレイヴェルはわかってない。
あのライアが言った言葉は全てが真実じゃない。でも、全くの嘘でもない。
あの人がどこまで知ってるかはわからないけどな。あの分だとオレがまだレイヴェルに言ってないことまで、色々と知ってそうだ。
隠してるってわけでもないんだけどな。いまいち言うタイミングが思いつかないってのはあるけどさ。
決心がついたら話す。それは絶対だ。
「いつかきっと、レイヴェルのことをちゃんとわかってくれる子も現れるよ」
その時オレがどうするかは……うん、まぁ、今考えることじゃない。
その時が来ればきっとわかる。俺がどうするかも。その時が来れば……。
「クロエ?」
「……ううん、なんでもない。それより早く帰ろう。あの人のこと思い出したらむしゃくしゃするし、こういう時はいっぱいご飯食べてストレス発散しないと!」
「ストレス発散って……はぁ、でもそれもそうだな。俺もお腹は空いてるし。さっさと帰るか」
「うん!」
そしてオレ達は、『鈴蘭荘』へと帰るのだった。
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