エピローグ 暗躍する闇
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
ノインはとある一室で、自らの主たる存在に頭を垂れ、ディエド達が任務に失敗したことについて報告していた。
「失敗した……か」
「……はい」
主の落胆したような声音にノインはビクリと体を竦ませる。
そこにディエド達と話していた時のような雰囲気は微塵もない。
あるのはただ主に落胆されることを恐れるしもべの姿。
「申し訳……ございません。主様のご期待に添えず」
「気にするな。お前を責める気はない。それよりもなぜ失敗した。それほどの手練れがあの里にはいたか? 冒険者共の中にそれほどの実力者がいたと? あの里で厄介なのは族長であるリューエルとその娘のラミィだけだと思っていたがな。その二人にしてもディエドには及ばない。【剣聖姫】でもいたか?」
【剣聖姫】。それは数少ないS級の冒険者。その中でも最強格の一人。人の身でありながら人を超えた超越者。
ノイン達にとっても油断ならない存在だ。
しかし、竜人族の里に【剣聖姫】はいなかった。
「いえ。居たのはもっと別の存在……魔剣使いです」
「なんだと?」
「その名はクロエ」
「っ!」
「……主様?」
「クロエ……クロエだと?」
主の様子が変化したことをノインは明確に感じ取る。そしてそれは、どこか喜びを含んだ驚きを滲ませていた。
「そうか……そうか。奴は生きていたか」
「奴とはクロエのことですか? 主様はあのラグナロクシリーズの魔剣をご存知で?」
「あぁ、知っている。よく知っている。あの時死んだ……いや、破壊されたと思っていたんだがな。しかし、生きていたとなれば話は別だ。あぁ、奴が生きているのであればディエド達を退けることができるのも納得だ。そうか……契約したのか。くくく……あははははははっっ!」
「あ、主様……」
「あぁ悪い。あまりにも予想外でな。ラグナロクシリーズ……世界を変革する魔剣、その最後の一振り。まさかこんな形で再び存在を知ることになろうとはなぁ」
「……主様がお望みとあればすぐにでも捕らえて」
「いや、その必要はない」
「しかし」
「奴が生きていて、そして誰かと契約しているというのであればいずれ俺のもとまでたどり着く。それからでも良い。それよりも、目的の物は手に入れたのか?」
「はい。それは間違いなく」
ノインは一本の枝を取り出し、主へと差し出す。
「……竜命木の枝。これさえ手に入っていれば問題ない。任務など些事だ」
ドヴェイルと手を組み、竜の卵を手に入れる。それがディエドに与えられた任務だった。しかし、それとは別にノインが主から与えられていた任務があった。それが竜命木の枝を手に入れることだった。
「これなら問題ない。あいつに渡しておけ」
「はっ」
「次の標的は……獣人にしよう。狙うは『月天宝』だ」
「かしこまりました。すぐにでも確保してみせます」
「焦って仕損じるなよ」
「もちろんです。今度こそ必ずご期待に沿ってみせます。では」
「あぁ」
その次の瞬間にはノインの姿は部屋の中から消えていた。
一人残された主は、椅子に座ったまま天を仰ぐ。
「生きていたかクロエ。そうか……なぁクロエ、お前は誰と契約したんだ? 今どこで何をしているんだ? もしお前が今笑っているのなら……幸せの中にいるとしたならば……」
グッと、何かを握り潰すような仕草をする。どこかを見つめるその瞳に、どんな感情が込められているのか。それは誰にもわからない。
「今を謳歌すればいい。全てを忘れ、安寧に身を委ねればいい。俺が世界を壊す、その日までな」
これで竜人族の里編は終わりです。
いくつかの閑話を挟んでから、次の章を開始したいと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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それではまた次回もよろしくお願いします!




