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魔剣少女になりました!  作者: ジータ
第二章 竜人族の里編
69/350

第68話 繋がる心

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

〈レイヴェル視点〉


「な、なんだ……ここ……」


 クロエをなんとか正気に戻そうとして取っ組み合ってたはずなのに。気が付いたら一面真っ暗だ。

 何があるわけでもない。手とか足とかはちゃんと見えるから、暗闇ってのとはまたちょっと違うんだろうけど。

 

「セフィのいた世界と似たようなもんなのか?」


 ボロボロで血だらけだった体にも傷一つない。

 うん、やっぱり現実世界ってわけじゃなさそうだ。

 そうなると問題はここがどこなのかってことなんだけど……。


「キューッ!」

「うぉっ! お、お前……」


 目の前に現れたのは多色に輝く球体……っていうかあれだ。セフィの所に託された竜の卵……。


「えっと……」


 どうしたらいいんだこれは。

 何か訴えかけられてるのはわかるんだけど。


「キューッ、キューッ!!」

「いやキューッじゃわかんねーよ」

「キュッ!? キュー……」

「あぁいや悪い! わかる、わかるぞ。なんとなくだけど」

「キュキュ?」

「うん、まぁそうだな。えーと……名前とかは……ないか。そんじゃとりあえずキュウって呼ぶけど。キュウはここがどこなのかわかるのか?」

「キュー」


 キューって鳴くし、球体だからキュウ……安直過ぎるか?

 いやでも名前なんてわかりやすいくらいでちょうどいいだろ。

 とりあえず。なんとなくだけキュウの言ってることはわかる。いや、言葉は全然わからないんだけど。伝えたいことはわかるって感じだ。

 キュウは俺の右腕をツンツンとつつく。


「契約紋? そういえば、ここに飛ばされる直前光ってたような……そうか、つまりここは……クロエの世界なのか」

「キュー♪」


 正解だと言わんばかりに飛び回るキュウ。なんか見慣れてくると可愛いなこいつ。


「つまり、ここにクロエがいるんだな」

「キュ、キュー……キュッ!」

「あっちにいるのか?」

「キュ!」

「はは、すごいなお前。ありがとう」

「キュ~」


 照れてやがる。

 頭……頭でいいのか? どっちかっていうと体か。体を撫でてやったら嬉しそうにキュウは飛び回った。

 

「この先に……あいつがいる」


 キュウの示した方に目を向けると、僅かに右手の契約紋が反応する。

 うん、この先にいるってのは正しいみたいだ。この先に……クロエがいる。

 そして、クロエにいる方に向けて歩き出した次の瞬間だった。


「キュウ!」

「っ!」


 キュウが俺の前に躍り出て結界をはる。

 その直後に風が……いや違う、これは破壊の波動!


「こんなとこでも撒き散らしてんのかよ!」


 キュウが俺の前に張ってくれた結界のおかげでなんとか防げた。

 さっきまでと違う。明らかに俺のことを狙ってた。

 まるで俺のことを近づけまいとするみたいに。


「ここであれくらって倒れたらどうなるか……考えたくはないな。でも進しかねぇ。頼むぞキュウ」

「キュイッ!」


 任せろ! ってか?

 頼もしいなまったく。そんじゃ俺も進むとしましょうかね!

 

「ふっ!」


 キュウに結界を貼ってもらいながら俺は走った。

 時間をかけてる余裕なんてない。セフィも言ってたことだけど、たぶんキュウの結界は長くは持たない。

 こいつ自身が生まれたばっかってこともあるだろうし。何よりこの破壊の波動は伊達じゃない。

 こうして今も防いでくれてるキュウを褒めるべきなんだろう。


「キュウ頼むぞ! 持ちこたえてくれ!」

「キュ~……キュイッ!」


 キュウも相当苦しそうだ。でもわかる。確実にクロエに近づいてる。

 俺の右腕に刻まれた契約紋がそう教えてくれる。


「あぁあああああっっ!」


 走れ、走れ走れ走れ! あいつのとこまで!

 一瞬たりとも足を止めるな!

 

「キューーーーーッッ!!」

「キュウ!?」


 キュウの結界に罅が入る。

 やばい。もう限界が近いのか。

 後少しだってのに!


「キュ……キュイ!!」

「キュウ!? いったい何を——ッ!」


 キュウが俺に向けて突進してくる。

 前に向けて直進してた俺にそれが避けれるはずもなく、俺とキュウは正面からぶつかり……キュウの体が俺の中に溶けるようにして消えた。


「っぅ!」


 左眼が燃えるように熱い。

 言葉は無くてもなんとなくわかった。キュウはこれ以上無理だと判断して俺に残りの力を託してくれたんだ。


「任せろキュウ。やってやるさ!」


 破壊の波動を防げるのは後三回。その間にクロエにもとにたどり着く!

 飛んでくる波動全部を防ぐわけにはいかない。致命傷になりそうなものだけを選べ。


「ぐぅ!」


 破壊の波動に足を、腕を、頬を切り裂かれる。

 現実じゃないこの場所でも血が吹き出て、傷口は燃えるように熱くなる。でも、まだ動ける!


「っ! 見えた!」


 破壊の波動を撒き散らすその中心にクロエの姿が見えた。

ただ呆然と立ち尽くしている。まるで何も見えてないみたいに。

いや、違う……。


「泣いてる……」


 クロエは泣いていた。破壊の力を撒き散らすその中心で、クロエは無言で泣き叫んでいた。

 これは……この破壊の波動は、クロエの慟哭なんだ。上がらぬ声の代わりに、抑えきれない力があふれ出してる。


「うがぁっ!」


 近づけば近づくほどに力の勢いが増してく。

 

「使うぞ、キュウ! 『竜結界』!」


 正面から飛んできた破壊の波動を結界で防ぐ。これで後二回。

 中心に近づけば、クロエに近づけば近づくほど力は勢いを増し、それはもはや嵐と呼べるレベルだった。


「うぉおおおおおおおおっっ!!」


 止まるな、止まるなっ!!

 足が折れても。腕が千切れても! あいつの所までたどり着け!


「クロエッッ!!」


 『竜結界』で弾く。

 後一回。後少しなんだ! 持ちこたえてくれ!


「最後の……一回!!」


 キュウの与えてくれた『竜結界』を全て使いきる。

 でも、やっとだ。やっと……。


「やっと来たぞ、クロエ」

「…………」


 中心部。クロエのいる場所はさっきまでとは打って変わって凪のように穏やかで……静かだった。

 クロエはその瞳に何も映さないままに涙を流し続けている。


「クロエ……」

「あ……」


 俺は右手で、クロエとの絆が刻まれた手でそっとクロエの頬に触れる。


「レイ……ヴェル?」

「やっと俺のこと見やがったなこのバカ」

「どうして……ここ……私……っ!」


 クロエの顔がくしゃりと歪む。心の痛みに耐えかねるように、どうしようもない怒りに支配されまいとするかのように。


「私……私っっ!」

「落ち着けクロエ! 怒りに呑まれるな!」

「あぁ……あぁっっ!!」

「クロエ!!」


 俺は、クロエの体を抱きしめた。

 強く、強く抱きしめた。俺の温もりが確かにクロエに届くように。


「私……私っっ!」

「落ち着けクロエ! 怒りに呑まれるな!」

「あぁ……あぁっっ!!」

「クロエ!!」


 俺は、クロエの体を抱きしめた。

 強く、強く抱きしめた。俺の温もりが確かにクロエに届くように。


「ぁ……」

「俺は……生きてるだろ。生きて、ここにいる。お前の前にいる。傍にいる」

「レイヴェル……ごめん……ごめんなさい……私……」

「謝るな」

「でも私……レイヴェルのこと守れなくて……ラミィも、シエラも……私が、私が傍にいなかったから。私は……レイヴェルの魔剣なのに……」


 その瞳から流れ続ける涙は、後悔の涙だ。

 自分のせいで。自分の力が足りなかったからと。

 悔しさで流す涙だ。俺もよく知ってる。自分の無力さを嘆いたことなんて一回や二回じゃない。


「ごめんなさい……ごめんなさい……っ!!」


 クロエは……こんなに小さかっただろうか。

 俺がクロエと出会ってから、まだそんなに時間が経ったわけじゃない。だから、こいつの全てを知ってるなんてとてもじゃないけど言えない。

 でも……こいつの優しさは知ってるつもりだ。こいつは今も、その優しさのせいで苦しんでる。泣いてる。

 だったら、その涙を止めるのは……相棒である俺の役目だ。


「クロエ……お前は俺のなんだ?」

「え?」

「いつも言ってるじゃねーか」

「私は……レイヴェルの……でも、今の私、そんな資格……」

「資格なんて関係ない。お前言ったよな。『私がレイヴェルのことを選んだ』って。だったらその言葉、俺が今そっくりそのまま返してやるよ」


 言葉は楔だ。口にしたら最後、無かったことになんてできない。だからちゃんと伝わるように、まっすぐクロエの目を見据えて言う。


「俺はお前を選ぶぞクロエ。他の誰かじゃない、お前を。お前だけが俺の魔剣で……俺の、たった一人の相棒だ」

「あ……」

「クロエ、お前は化け物なんかじゃない。俺がお前を化け物になんかさせない」

「レイヴェル……うぅ……あぁあああああっ!」

「お、おい。だから泣くなって。お前に泣かれると……その、どうしていいかわかんなくなる」


 とめどなく涙を流し続けるクロエ。

 でもその涙の意味は、きっとさっきとは違う。そう感じた。


「戻ろうクロエ。そんでこんどこそケリをつけよう。俺達の手でな」

「うん……うんっ!」


 クロエが俺の体をギュッと強く抱きしめ返す。

 そして、俺達の体を白い光が包みこんだ。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!

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