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魔剣少女になりました!  作者: ジータ
第二章 竜人族の里編
66/350

第65話 セフィと竜の卵

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

〈レイヴェル視点〉


「う……」


 軽い倦怠感と共に目を覚ます。

 俺……どうなったんだ?

 ラミィとシエラを呪剣から守ろうとして……それで……。


「お目覚めですか?」

「っ!?」


 突然聞こえてきた知らない声に慌てて体を起こす。

 俺の目の前にいたのは女の人だった。俺より少し年上くらいの、綺麗な人。

 そんな状況でもないのに俺は思わず見惚れてしまっていた。

 見るたびに色が変わる極彩色の瞳。クロエとは真逆の純白の髪。

 どこか儚さを感じさせる雰囲気を纏っていた。

 何より特徴的だったのは、彼女の周囲に浮かぶ十の球体。

 白や黒や緑それに紫。全て色の違う球体はまるで意思を持ってるみたいに彼女の周囲をフワフワを浮いている。

 というか……俺のことを観察してる?

 球体に目があるわけじゃないけど、俺のことをジッと見てる気がする。


「あぁごめんなさい。驚かせてしまいましたね」

「いや、それよりもここは?」


 ぐるっと周囲を見渡す。

 何もない。真っ白な空間だ。

 俺と彼女以外には誰もいないし、何もない。

 どこまでも果てしなく続く白の世界。


「そうですね……なんと説明するべきでしょうか」

「もしかして俺、死んだのか?」


 ここが死後の世界で、彼女が神様的な存在だって言うなら納得できる部分もある。

 でももしそうなら……俺はまた、何も守れなかったんだな。

 どうしようもない無力感が胸に巣食う。

 強かったら、なんて仮定に意味はないってわかってても、そう考えずにはいられない。

 ラミィやシエラはどうなっただろうか。クロエは? もし俺が死んだのをクロエが知ったら……あいつはどう思うだろうか。


「あの……何か勘違いされているようですが、あなたはまだ死んでいませんよ?」

「え?」

「ですから、まだ死んでいません。もちろん死にかけの状態ではあるんですけど」

「死んでない? 俺、まだ生きてるのか?」

「えぇ。ギリギリで、むしろまだ死んでないのが不思議なくらいの状態で。もう血がドバドバと、ここからでも見ていて思わずクラっとしてしまいそうなくらい凄惨な光景でした」

「…………」

「あ、すみません。本人に直接言うことではありませんでしたね。なにせ人の子とこうして直接話すのはずいぶんと久しぶりで。それこそ何千年ぶりでしょうか」

「何千年って……あんた何者だよ」

「気になりますか? 聞いちゃいたいですか?」

「そ、そりゃまぁ……」


 いたずらっぽい笑みを浮かべてにじり寄って来る。なんていうか、俺が戸惑ってるの完全に楽しんでるよなこの人。


「なななんと、私は竜命木の本体なのでしたー!」

「……はい?」

「竜命木の本体なのでしたー!」

「いやえっと……どういうことだ?」

「言葉のままの意味ですよ。あなたが彼女達と共にやってきた時に目にした竜命木。その本対です。私は全ての竜命木と繋がりし存在。竜命木は私であり、私は竜命木なのです」


 やばいダメだ。あまりにも急なことに全然頭の理解が追い付かない。


「戸惑ってますね」

「いや、そりゃそうなるだろ……じゃなくて、なりますよ」


 もし彼女の言ってることが本当なら相当格の高い精霊とか、そういうレベルだ。

 俺なんかが気安く話せる存在じゃない。

 

「むぅ、そんな風にかしこまらないでください。私はフレンドリーなのが好きなんです。さっきまでの話し方でいいですよ」

「いやでも……」

「戻してくれないなら、助かる方法を教えてあげませんよ」

「助かる方法があるんですか!?」

「つーん……」

「あの……」

「つーん……」

「……助かる方法があるのか?」

「はい、もちろんです!」


 嬉しそうな表情で手を叩く彼女

 でも正直かなり胃が痛い。こんなのバレたら殺されるぞ俺。


「あ、ちなみに私の名前はセフィです。セフィって呼んでくださいね」

「セフィ様」

「セフィって呼んでくださいね」

「……セフィ様」

「セフィって呼んでくださいね」

「……セフィ」

「はいなんでしょう!」

「それでその、俺の助かる方法ってなんなんだ? 自分で言うのもなんだけど、呪剣に貫かれて助かるような状態じゃなかったと思うんだけど」

「そうですね。このままでは五分と持たずにあなたは死ぬでしょう。負った怪我と、そして……彼女の手によって」

「彼女?」

「……これを」


 セフィが軽く指を鳴らすと、外の光景が映し出される。

 倒れて血の海に沈む俺と、その傍にいるラミィ、同じように倒れてるシエラ。

 そして……。


『壊れろぉっっ!!』

『くははははっ! バカみてぇな威力じゃねぇかおい! 最高だなぁお前!』


 獣のように荒れ狂うクロエの姿だった。

 クロエは全身に数えきれないほどの傷を負いながら、それでも一切怯むことなくディエドと戦っていた。対するディエドも決して無傷ではなかった。

 無秩序に破壊を撒き散らすクロエの攻撃をいなしきることはできていないのか、ボロボロになりながら、それでも戦闘狂の笑みを浮かべて戦い続けている。

 血で血を洗う醜い戦い。

 今のクロエの姿は、俺の知るクロエじゃなかった。

 あれはまさに——。


「化け物」

「っ!」

「そう思いましたか? いえ、事実そうなのでしょう。今の彼女は理性を捨て去り、破壊を撒き散らす暴虐の存在と化している。あなたを守り切れなかった怒りが……彼女の理性を呑みこんでしまった。そして彼女は今もあなたの魔力を吸い取り、戦い……いいえ、暴れ続けている」

「俺の……せいで……っ、早く教えてくれ! どうすれば俺はもとの場所に戻れるんだ!」

「元の場所? いいえ、元の場所には戻しませんよ。あなたとラミィ、そしてシエラを私の力で結界の外に送ります。そのくらいのことはできるので。そうすればあなたもシエラも助かるでしょう。あの魔剣から受けた呪いも、彼女の破壊の波動を受けてすでに残っていない。すぐに処置をすれば十分に助かります」

「俺とラミィ達を結界の外に? いやまて、それじゃあクロエは!」

「破壊の権化を外に出すわけにはいきません。共倒れという結果が一番望ましいですが。すくなくとも、両者とも大きなダメージは負うでしょう。そうなれば対処のしようはいくらでもあります」

「……クロエを見捨てるっていうのか?」

「見捨てるのではありません。これは当然の選択です」

「っ! どこが当然の選択なんだ!」

「今の彼女に言葉は届かない。誰の言葉も……あなたの言葉ですら届かないでしょう。今の彼女は近づく者全てを破壊する。結界の外に出ればあなたからの魔力の供給は止めることができる。そうなればいずれ倒れます」

「届かないなんて、そんなの試してみないとわからないだろ!」

「では問いましょうレイヴェル・アークナー。あなたに何ができますか?」

「何がって……」

「瀕死の重傷を負って死にかけている。そもそもあなたの力量はあの場にいる誰よりも低い。万全の状態であったとしても、言葉が届く距離に到達する前に死ぬのが定めです」


 クロエから溢れ出る破壊の力はその衝撃だけで地面を破壊している。ラミィは必死に俺達の体を破壊から守ってくれてるけど、それだけで精一杯。

 じゃあ今の俺に何ができる? 答えれない。

 何度も痛感したことを、ここで改めて突きつけられる。

 俺には……レイヴェル・アークナーには、力が無い。


「最悪のことばかり想定しましたが、良い方に想像するならば。彼女はあの魔剣使いに勝てるかもしれない。そして力を使い果たせばやがて理性を取り戻すでしょう。何も今生の別れになるわけではありませんよ。それよりもこの場に残り続けてあなたが死ぬ可能性の方がよっぽど高い。ですから私は——」

「……あいつ、言ってたんだ」

「? 言ってた?」


 俺の脳裏を過る、クロエの言葉。


『私を……化け物にしないで』


 そうだ。あいつはそう言ってた。

 化け物にしないでって。化け物になりたくないって。

 そう言ってたのに!

 今のあいつがあんなことになったのは俺のせいだ。俺が弱かったからだ。

 だから俺には責任がある。あいつをこっちに連れ戻す責任が。


「あいつさ。魔剣のくせして妙に人間くさいっていうか。俺が会った時も王都で働いてたりしたしな。魔剣だぞ? その気になったらどんな生活だってできるだろうに、普通に、普通の人間として働いてた。あいつが何でそんなことしてたのかは知らないけど。でも……あいつは笑えるんだ。俺と一緒に。俺の隣で笑ってくれるんだ。たまに怒ったり、心配性だったり。あいつ見てると魔剣だってこと忘れそうになるんだよ。ただの普通の女の子なんじゃないかって、そう思う瞬間がある。俺は魔剣について詳しいわけじゃないから、他の魔剣のことなんてわからないけど、あいつのことは少しくらいならわかるつもりだ。あいつは化け物になっていい奴なんかじゃない」


 セフィの言う通り、もしかしたらクロエはディエド達を倒せるかもしれない。

 でもその先に待つのはなんだ? もしこのまま放っておいたら、あいつはきっとこっちに戻ってこれなくなる。

 きっと今までみたいに……笑えなくなる。


「俺はそんなの認めない。だから俺はあいつを止める」

「……あんな体でどうやって? できないと思いますけど」

「できるできないじゃない。やるんだ。俺はもう決めた」

「死にますよ?」

「俺は死なない。死んでやるもんか」

「何を根拠にそんなことが言えるんですか」

「根拠なんて必要ない。精神論。最後にものをいうのはそれだって、俺の尊敬する人達は教えてくれた」

「……話になりませんね」

「別に理解してもらおうなんておもってない。これは俺の我儘だ。だから結界の外に連れて行くのはラミィとシエラだけにしてくれ」

「覚悟は……あるんですね?」

「覚悟ならとっくの昔に決めた」

「やっぱり……はぁ、そう言いますよね、あなたは。わかりました」

「それじゃあ」

「ただし、一つだけ条件があります」

「条件?」

「この子を受け取ってください」


 セフィがそう言うと、セフィの周囲に浮かんでいた球体の内の一つが俺に近づいて来る。他の球体が一色だけなのに対し、その球体は黒や黄色、緑や赤に色を変化させながらフワフワと浮かんでいる。

 心なしかあったかい気もする。


「これは?」

「竜の卵です」

「竜の卵!?」

「はい。その子をあなたに託します」

「え、いや……なんでそんなことに」

「さぁ、なぜでしょうね。とにかく私はあなたを選びました。あなたがこの子に相応しいと。ですから託すのです。ちなみにこれは決定事項なので拒否権はありません」

「でも俺は人族で」

「関係ありませんよ。竜人族も人族も。決めるのは私です。そして私が相応しいと判断した。それだけで十分なのです」

「…………」

「その子はあなたの体に宿る。つまり、あなたが死ねばこの子も死ぬ」


 セフィは慈しむように球体を撫でる。嬉しそうに発光する球体にセフィは笑みを浮かべて答えた。


「さっきは意地悪なことを言ってしまってごめんなさい。あなたがクロエを助けるという決断をすることはわかっていました」

「それじゃあ……試したのか?」

「試したとは少し違いますね。あなたが助かる道を選ぶなら、それも受け入れましたから。そんなことはあり得ないとわかっていましたが。さぁ、貴女がレイヴェルの助けとなるのですよ」

「セフィ……」

「今のこの子でも、少しの間であればあの破壊の嵐からあなたの身を守ってくれるでしょう。でも長くはありません。チャンスは一度です」

「……あぁ」

「では……またあなたと会える日を楽しみにしています。その時は彼女も一緒に。約束です」

「わかった。約束する……ありがとうセフィ」


 セフィが指を鳴らす。それと同時に、俺の視界が白く染まり始める。

 きっと元の場所に戻るんだろう。


「待ってろクロエ。俺が絶対にお前を連れ戻す」


最新話まで追い付いたので、ここからはカクヨムと同じタイミングで投稿していくことになります。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!

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