第63話 悲壮な決意
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
ドヴェイルを倒した後、オレはリューエルさんと一緒に竜命木の結界に向けて走っていた。
「魔剣使いが!?」
「はい。里に向かってる途中に以前会ったことのある魔剣使いが現れて……」
「それじゃあ今ラミィとレイヴェル君はその魔剣使いと?」
「戦ってると思います」
「でも魔剣使いが相手じゃ、いくらあの子でも」
「まだ生きてます!」
リューエルさんが口にしようとする最悪の想像を大声で遮る。
オレとレイヴェルの繋がりはまだ切れてない。つまりレイヴェルが生きてるってことだ。
だからこそ一秒でも早くレイヴェル達の所にたどり着かないといけない。
「……そうね。ごめんなさい。つまりクロエちゃんは竜命木の結界を突破したいってわけね」
「はい、そうです。私だけじゃ難しいから」
実のところ、レイヴェルがいれば竜命木の結界を突破するのは難しいことじゃない。単純な話だ。オレの力で破壊すればいいんだから。
でもレイヴェルがいないとそうはいかない。魔力の供給が無いし。さっき戦ってたのも事前にレイヴェルから吸っておいた魔力を使っただけだ。
結構魔力使っちゃったからな。まだ多少残ってるけど。
「私の竜がいれば良かったんだけど……あの子は今前の里にいるし」
「それじゃあ」
「……方法がないわけじゃないわ。クロエちゃんにも協力してもらうことになるけど」
「それなら全然大丈夫です。できることならなんでもします」
事は一刻を争うんだ。できるできないなんて言ってる場合じゃない。
「わかったわ。止まってクロエちゃん、ここよ。ここが結界の境目」
「ここですか?」
「えぇ。一目見ただけじゃわからないけど」
オレの目に見えるのは普通の木々だけ。結界の境目だって言われてもまるでわからない。
「クロエちゃんとレイヴェル君は契約で繋がってるのよね?」
「はい。だから本当ならすぐにレイヴェルの傍に跳べるはずなんですけど。この結界の影響もあってか、なかなかうまくレイヴェルの気配が掴めなくて」
まるで靄がかかってるみたいに、レイヴェルの居場所がはっきり掴めない。
いるのはわかるのに、正確な位置が掴めないんだ。
「焦らないで。大丈夫だから。短い時間なら私が竜命木への道を開ける。そしたらたぶんレイヴェル君の位置も掴めるはずよ」
「掴んだら一気に跳べってことですね」
「えぇ。正直私もあなた達魔剣のことを正確に把握してるわけじゃないから確証は持てないけど。今はこれしか方法がないわ。準備はいい?」
「……はい。お願いします」
一発勝負だ。ここで失敗したらいよいよ絶望的になる。
いや、失敗した時のことは考えない。絶対に成功する。させる。
オレの返事を聞いてリューエルさんが地面に膝をつく。
「“神竜の末裔が一人、リューエル・アイスファルの名において願い奉る”」
リューエルさんの姿が淡く輝き始める。
「“汝への道を我が前に開き給え”」
リューエルさんの目の前の空間が揺らぎ、人が一人通れるほどの穴が開く。
「今よクロエちゃん、走って!」
「は、はいっ!」
リューエルさんに急かされて慌てて穴の中に飛び込む。
穴の中はシエラで飛んできた時と同じ、結界の中は霧でいっぱい。右も左も前も後ろもわからなくなりそうな状態だった。
入って来た穴はすでに閉じてる。
「問題は……こっからどこに進めばいいかわからないってことかな」
結界の中に入ったらすぐにレイヴェルの気配を掴めると思ったけど、そんなに甘くなかった。
でもさっきまでより強くレイヴェルの気配を感じる。だったらその気配を感じる先に向かえばいい。
「よし!」
道がわからなくても、レイヴェルのいる場所はわかる。
確実にレイヴェル達に近づいてる。そうわかるのに。
近づけば近づくほどに嫌な予感が膨れ上がる。
これ以上ないほど必死に走っても、オレの走る速度は上がらない。
今ほど自分の足の遅さを呪ったことはないかもしれない。
「あ……」
その時だった。
オレがレイヴェルにかけた守護結界が発動したのを感じたのは。
それはつまり、レイヴェルの命に危険が迫ってることを意味する。
かなり強い守護結界だ。でも、それはあくまで条件付きの強さ。条件を付けたからこそ可能だった結界の強さだ。
もしあいつらがその条件に気付いたら簡単に突破できてしまう。
「このままじゃ……」
レイヴェルの気配は近づいてる。後少し近づければレイヴェルのもとまで跳ぶことができる。
無我夢中、肺が破れそうになりながら必死に走る。
自分の体のことなんてどうでもよかった。
それよりも一秒でも、一瞬でも早く。
そして霧を抜けた先でオレが目にしたのは——。
「え……」
無数の剣に貫かれるレイヴェルの姿だった。
「いや……」
頭が真っ白になる。
「いやだ……」
目の前の光景を現実のものとして受け入れられない。
「レイヴェル!?」
完全に気が動転してるオレの視界の先で、ディエドが再び数えるのも馬鹿らしくなるくらいの量の剣を掲げる。
その切っ先は、倒れるレイヴェルとシエラ、そして剣を持って立ち上がったラミィに向けられてる。
「させない、そんなこと!」
この距離まで来たらレイヴェルの所まで飛べる。
レイヴェルはまだ死んだわけじゃない。生きてる。
だったらこんなところで呆けてる暇なんてない!
「苦しまずに死ねるんだから優しさだろ。まぁ、とにかく死んどけや——呪剣」
『バイバーイ♪』
「っ!」
剣がラミィ達に迫る。
オレはその剣とラミィ達の間に割って入った。
そして迫る剣を全て破壊の力で砕いた。
『——あっはぁ♪』
「前言撤回するぜぇ、まだ遊べそうだ」
不愉快な二つの声が聞こえる。
その声すらも、オレの怒りに火を注ぐ。
「ごめん……もう、大丈夫だから」
自分言い聞かせるようにラミィに言う。
「クロエ……」
「ラミィはレイヴェルとシエラを……私が、あいつを……」
「そんなの無茶よ、クロエ——っ!」
「ごめん……もう、抑えられそうにないんだ」
心の奥底から煮えたぎるような怒りが溢れる。
抑えようとしても抑えられない。
傷だらけのレイヴェルが、シエラが、その姿がオレの心を傷つけて……その傷口から溢れた血がさらに怒りを助長させる。
その怒りは誰に対する怒りだ?
決まってる。オレだ。
オレがレイヴェルと一緒にいたら。
オレがもっと早く駆けつけることができたら。
こんなことにはならなかった。
何が最強の魔剣だ。
誰のことも守れないで。
この怒りは誰にぶつければいい?
決まってる。
あいつらだ。
今も薄ら笑いを浮かべてこっちを見てる、魔剣使いとその魔剣。
ディエドとダーヴ。
あいつらを破壊する。
オレの力で。
許さない。絶対に。
あいつらに勝つために、あいつらを破壊するために。
オレは今も燃え盛るこの怒りに身を任せよう。
『今さら来たんだぁ、おっそいねぇ』
「うるさい。黙れ」
『おぉこわ』
「くははっ、いいじゃねぇか。やる気十分って感じだ。魔剣使いの方がおねんねしちまってるのは残念だがなぁ、まぁそれでもさっきよりは楽しめるだろ」
「全部全部……壊してやる」
ごめんレイヴェル……オレは、化け物になるよ。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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